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時代を切り開く「経営人材」を育成する

  • 八木 洋介氏(株式会社people first 代表取締役/株式会社ICMG 取締役/元 株式会社LIXILグループ 執行役副社長 人事総務担当)
  • 入山 章栄氏(早稲田大学ビジネススクール/早稲田大学大学院商学研究科 准教授)
東京特大会場 [B]2018.01.09 掲載
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ビジネス環境が急激に変化する中、世界で通用するリーダーの育成は、日本企業にとって喫緊の課題だ。しかし、実際に育成がうまく進んでいるケースは多くない。従来の育成のどこに見直すべき点があり、何をどう変えていけばいいのか。LIXILで執行役副社長・人事総務担当を務め、現在はpeople first代表取締役である八木洋介氏と、国内外の企業の最前線を知る気鋭の経営学者である入山章栄氏が、日本の企業が注目すべき人材育成のポイントを語り合った。

プロフィール
八木 洋介氏( 株式会社people first 代表取締役/株式会社ICMG 取締役/元 株式会社LIXILグループ 執行役副社長 人事総務担当)
八木 洋介 プロフィール写真

(やぎ ようすけ)1955年京都府生まれ。1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。主に人事などを担当した後、National Steelに出向し、CEOを補佐。1999年にGEに入社し、Healthcare Asia、Money Asia、GE Japanにおいて人事責任者などを歴任。2012年に株式会社LIXILグループ 執行役副社長 兼 株式会社LIXIL 取締役副社長 執行役員に就任。CHRO(最高人事責任者)を務め、同社の変革を実践。グローバル化、リーダーの育成、ダイバーシティの促進など、戦略的人事を推進した。2017年に独立し、現職。著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書、共著)がある。


入山 章栄氏( 早稲田大学ビジネススクール/早稲田大学大学院商学研究科 准教授)
入山 章栄 プロフィール写真

(いりやま あきえ)1996年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱総合研究所で主に国内外の自動車メーカーや政府機関相手の調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。Strategic Management Journalなど主要な国際的学術誌に多くの研究を発表している。2012年に刊行した『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)はビジネス書としては異例のベストセラーとなり、2015年末に刊行した3年ぶりの新刊『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)もベストセラーとなっている。


八木氏によるプレゼンテーション:
リーダーは育成するのでなく、競争を煽ることで生まれてくる

日本企業の一番の経営課題は、「CEOが務まる候補者を育てていない」「希少なスーパーリーダーが活用されていない」など、圧倒的なリーダーの少なさにあると八木氏は言う。

「日本のフォロワー(部下)の能力は世界一だと断言できるのに、米国やドイツに生産性で4割負けています。リーダーが圧倒的に少ないからです。ポジションがないのに、職能資格制度によって必要以上に管理職が増えてしまっている。管理職の数が増えると、真面目な彼らは真面目に仕事をして余計な仕事を増やし、真面目な部下は真面目に従って余計な仕事をしてしまう。結果として、生産性が悪化してしまうのです」

ここで入山氏が、カルビーの松本会長のエピソードを紹介した。松本氏は「あなたの仕事の最大の敵は、あなたの上司です」と従業員に伝えているという。これは能力的に十分ではない上司が、余計な仕事を部下に押し付ける可能性を考えての言葉である。続けて八木氏は、「上司に従うだけでなく、上司をライバル視する見方がリーダー育成には欠かせない」と語る。

「私はGEにいましたが、トップがジャック・ウェルチから交代する時に、『誰にやらせてもいい』という後任候補が3人いました。最初100人候補がいたのを24人、8人と絞っていって、3人にまで絞り込んだのですが、この人たちは『自分が後任をやるんだ』と互いをライバル視しながら競争していました。ところが日本企業の場合は『誰だったらできるか』と言いながら後任を選んでいる。日本企業も経営人材を育成するのではなく、気づきを与えて、自分で意識して競争させ、ポジションを取りに行かせることが大事です」

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日本企業の風土の問題は、人に差をつけないこと。みんなが公平、平等、横並びの風土では競争は生まれない。社員の課題は、自覚の欠如だ。キャリアは自ら取りにいこうとするべきであり、人事が本人のキャリアを決めることはやめ、競争を促進するように働きかける方が良い。八木氏は、育成プロセスの課題はサクセッション・プランとリーダーの育成が連携していないことだと語る。例えば、リーダー育成プログラムの中で優れた人材を見つけても、プロモートしていくことができていない、と課題を示す。

「サクセッション・プランを作って対象者の名前を挙げても、『どういうふうに差をつけていくのか』『どういうふうに鍛え上げていくのか』という点が弱い。時には社長が自ら徹底的に育て、それに対して個人が答える風土を作り上げていくことも大事です。しかし、日本企業の多くの社長はほとんどが突然変異型で、自分が勝手に育ったから『次も勝手に育つだろう』と考えてしまう。育てる感覚が薄いのです。本来は、意図的に突然変異型のリーダーを育てるような風土やプロセスを作っていかなくてはなりません」

人事部門の課題は、何よりも管理志向にある。制度や規律を重んじる風土では、自律した人材はなかなか出てこない。おかしなルールがあれば変えるべき、と八木氏は言う。また、公平志向が職能資格制度という形を通じて、管理職ポジションを必要以上につくり過ぎていることも課題としてあげた。

「あとは、それらをどう改善するかです。フレームワーク、役割と資質、大切なポジションの明確化などを決め、明確なサクセッション・プロセスを持って取り組む。そして、腕試しをさせ、真剣に個別レビューし、時間をかけて絞り込んでいく。対象は管理職やその手前の層に対してだけでは不十分です。全世代に対してきちんとリーダー育成を行うことが重要で、ポイントはやはり、気づきを与えることです」

入山氏によるプレゼンテーション:
部下に「腹落ち」させる力がリーダーには必要

次に入山氏が、いま一番重要だと考える経営学の考えを紹介した。

「現在、ビジネス環境は変化と不確実性が圧倒的に高い時代に入っています。競争が激しくなり、国内マーケットは縮小し、グローバルに戦わなくてはならない。人工知能、IoTの他にも新しい技術が生まれ、サイクルも短く速くなり、立ち止まっていたら会社はなくなってしまう。そのためにイノベーション、変革が必要ですが、それを実行できる経営人材はなかなか育てられないし、出てこない。この状況から抜け出すために一番重要と思うのが、センスメイキング理論です。これはいま、経営学の世界では非常に支持されている考え方です」

ここで入山氏は、センスメイキング理論の説明によく使われる逸話を語った。

「数十年前の話ですが、ハンガリーの軍隊の偵察部隊がアルプスの雪山で訓練していたところ、猛吹雪で遭難してしまいました。慌ててテントを立てたけれど、みんな中でガチガチ震えている。猛吹雪は止みそうになく、地図がないから帰るルートも分からない。このままでは死ぬしかないという状況で、ある隊員がポケットに手を入れたところ、地図を見つけた。隊長は意を決して部下全員を集め、『イチかバチかこの地図を頼りに下山しよう』と語りかけました。部下全員も賛同し、テントを飛び出して、雪山を降りていった。猛吹雪の中で地図はよく見えなかったけれど、風向きや山の傾斜を頼りに、何時間もかけてついに全員が下山した。ホッとした隊長があらためて地図を見て、ゾッとしたそうです。それは遭難したアルプスの地図ではなく、ピレネー山脈の地図だったのです」

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この理論でもっともやってはいけないことは、正確な分析に基づいた将来予測だ。正確な分析も大事だが、圧倒的に不確実性が高く、変化が激しい世界で必要なのは納得性だからだ。平たく言うと「腹落ち」と変換できる。先ほどの逸話では、隊長がピレネーの地図をアルプスの地図と勘違いしたが、そのおかげで「地図があるから助かるかもしれない」と全員に下山を腹落ちさせることができた。「その地図は本当に大丈夫なのか」と隊員たちが納得しなかったら、下山に成功しなかったと考えられる。

「リーダーが、たとえ確かな将来のことは分からないとしても『これからの社会はこうなるはずだ』と、主観でもいいから語ること。さらに『このリソースをこう使い、こんな価値を出そう。面白いでしょう。だから一緒にやろう』と言って、部下や従業員、取引先や投資先など、みんなを納得させて前に進んでいく。腹落ちさることが何より重要、というのがセンスメイキング理論の考え方です。しかし、日本企業ではなかなかできていません。

一方、欧米の外資系企業は、仕組みとして腹落ちさせることができています。まず、長期ビジョンをはっきり共有できている。例えば、デュポンには100年委員会がある。シーメンスにはメガトレンドがあり、30年先、40年先の社会がどうなるかについて、経営陣が腹落ちするまで議論している。細かいことに異論はあっても、将来の方向性の認識だけは全員揃っていることで、いろいろな手が打てるわけです。日本ではここ3、4年で急に取り組み始めたIoT化も、シーメンスは既に20年前からが取り組んでいる。つまり、この時代におけるリーダーの重要な仕事は、長期ビジョンを描き、この先のビジョン、軸、方向性を示し、全員に腹落ちさせて一緒に巻き込み、前に進むことなのです」

リーダーが語る会社のビジョンと、従業員一人ひとりのビジョンのマッチングも重要だ。「そもそも自分の会社は何のためにあるのか」「世の中は中長期的にどういう方向にいくと思うか」といった経営陣のビジョンが、従業員一人ひとりの「そもそも自分は何をしたいと思っているのか」というビジョンとマッチングしていること。そこには、フォロワーに腹落ちさせて巻き込めるリーダーが存在している。このような状況が望ましいと、入山氏は語った。

まずは人事自身が腹落ちしていることが大事

続いて、入山氏から八木氏へ質問が投げかけられた。

入山:八木さんが今取り組まれているのは「人事の方々が何事も複雑に考えすぎるので、まずそれを取り払う」とのことですが、具体的にうかがえますか。

八木:私はいつも「社員は普通の人。普通の人が分からないことを人事がやってどうするのか」と言っています。例えば、ある制度を説明した時に、社員にしっかりと腹落ちしているか、ということです。腹落ちのためには、ハートを込めてストーリーで語ることが大事です。「ルールで固める、普通の人が理解しづらいことをする」「内規だらけにして秘密主義になる」といったことをやっているようでは、人の活力は期待できません。

入山:逆に言うと、そもそも人事の皆さんが「ウチの会社はどういう会社で、どういう人を育てたいのか」という点で腹落ちしていない、とも言えるのではないでしょうか。

八木:その可能性は高いですね。だから、自分たちが納得できるビジョンやゴールをしっかりとつくって実現しましょう、ということです。制度に関しては、環境にあっていないと感じたら最初は例外をつくることから始めて、「何が正しいのか」を考えながら、変えていってほしい。

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最後に、受講者からの質問を受け付けた。最初の質問は「残業規制が進む風潮をどう思うか」。

入山:問題は、無駄な残業が多いこと。優秀なリーダーが的確に仕事をアサインすれば、無駄な残業はなくなると思います。残業はリーダーシップの問題でもあります。

次の質問は「人事が発揮すべきリーダーシップとは何か」。

入山:そのポイントは三つあると思います。「経営の戦略を理解し、そのための人を選んで育成する」「その上でビジョンを腹落ちできるように語る」「個々の仕事の、会社での位置付けを図式化して見せる」の三つです。

八木:そこに一つだけ加えると「現場の課題とビジョンを、ストーリーでつないであげる」ですね。現場の悩みと会社の方向をつないでいって、社員を納得させる。それをいろんなレベルで行って、一人ひとりの社員の悩みを解決してあげることが重要だと思います。

最後の質問は「スペシャリスト志向が強く、リーダーなりたがらない人が多い環境はどう解決すべきか」。

八木:スペシャリストばかりの会社では、競争に負けてしまいます。会社を強くするためにはダイナミックで視野が広い圧倒的な実力を持ったリーダーが必要です。勝つために誰が何をしなければいけないのか、まずは徹底的にディスカッションし、一人ひとりに当事者意識を持たせるようにしてください。会社を変革し、勝ちに導くのはリーダーです。

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