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人事課題の解決を支援する「360度フィードバック」~事例を通じた具体的な工夫~

  • 藤原 誠司氏(株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
東京特別講演 [F-2]2017.12.26 掲載
株式会社SDIコンサルティング講演写真

上司・部下・同僚が多面的に対象者を観察・評価する、360度フィードバック。その歴史は長いが、最近、新たな形で活用するケースが見られる。従来の人材育成に加えて、風通しの良い組織づくり、上司部下間の対話強化、働き方改革支援など、さまざまな人事課題や組織課題の解決を目的にした導入が増えているのだ。では、どのように工夫すれば、その効果を高めることができるのか。SDIコンサルティング代表取締役・藤原誠司氏が、長年の経験から得た具体的な事例を元に語った。

プロフィール
藤原 誠司氏( 株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
藤原 誠司 プロフィール写真

(ふじわら せいじ)1989年リクルート入社。その後、HRR(現:リクルートマネジメントソリューションズ)にて360度フィードバックの拡販リーダー、コンサルタントとして様々な人事課題解決を推進。07年に360度フィードバックに専門特化したSDIコンサルティングを設立。大手企業中心に年間12,000名以上の対象者にサービス提供。


日本企業における活用目的の推移

年間12,000名以上に360度フィードバックを提供しているという、SDIコンサルティング。360度フィードバックに専門特化した人材開発・組織開発のサービスを提供しているが、その最大の特徴は個々の顧客課題に合わせた設問設計やフィードバック研修などのカスタマイズだ。会社設立は2007年だが、藤原氏は約25年もの間、360度フィードバックを提供してきた経歴の持ち主だ。

「360度フィードバックとは、上司・同僚・部下が対象者の職場での行動を観察し、それを整理して本人に伝える(アドバイスする)仕組みです。一般的には、『360度評価』『多面評価』と呼ばれることが多いですが、十分な能力を有していない部下が上司である管理職の能力を評価するのは難しいことです。注意すべきは『評価』という言葉です。対象者の職務能力を『評価(高い・低いと判断)』するのではなく、職場での行動が『周囲からどのように見えているか』『どのように伝わっているのか』を回答するものであると考えています。それを本人にフィードバックすることで、対象者は『自分が思っているのと違った形で伝わっている』と気づき、行動を改善するようになる。これが基本的な考え方です。このことから、『360度評価』ではなく『360度フィードバック』と表現した方が、本来の良さが伝わると考えています。」

日本における360度フィードバックの歴史は1970年代にさかのぼる。まずIHIや神戸製鋼などのグローバル進出企業で導入され始め、1990年代には野村證券、ソニーといったアグレッシブな企業、2000年代には大手企業を中心に広く導入されていった。そして、リーマンショック後の2010年頃になると、管理職の強化だけではなく、良い組織づくりのための手法としても注目され、ビジネス誌での特集が相次いだ。ここ数年はHR テクノロジーの進化によって、中小企業での導入も進んでいる。

「当初の活用目的は、管理職のリーダーシップ強化でした。2010年頃になると組織力強化の手段としてクローズアップされましたが、最近は具体的な人事課題テーマ(○○に360度フィードバックが使えませんか?)への対応が非常に増えています」

主な活用目的は「人材育成」だ。ほとんどの企業が職場での行動に気づきを与えること、また、行動改善するための意識変革やきっかけ作りを目的として活用している。さらに、次の三つの目的を併せて活用する場合がある。

「一つ目は『現状把握』。人事部として組織や管理職それぞれの現状を把握し、現場で生じている課題を発見するためです。従業員意識調査を行っても本社人事部では捉えきれない現場の状況を確認するために、活用されています。二つ目は『組織づくり』。組織風土の改善や活性化、企業価値観(Way、Value)の浸透です。三つ目は『人事評価』。昇進昇格や異動配置の際の参考情報、処遇への反映です」

最近は、具体的な人事課題への対応、例えば「風通しの良い組織風土をつくりたい」「チャレンジする組織をつくっていきたい」「1on1を導入して定着させたい」「働き方改革を推進したい」「研修や人事施策の効果を浸透させ測定したい」といった相談を持ちかけられることが多くなっているという。

講演写真

ニーズが多い「風土改革」のための活用事例

ここで藤原氏は、活用事例として『風土改革』を取り上げた。

「風通しの良い組織をつくりたいという相談が多いのですが、その理由は二つあります。一つは、上意下達の風土を改善したいという理由。言われたことをやるだけではなく自ら考え行動する、ボトムアップ的な意見をたくさん吸い上げることができる風土をつくっていきたいと要望されているのです。もう一つは、萎縮した雰囲気をなくしたいという理由。メンタル不調者を出してしまうような、ネガティブな雰囲気を改善したいという要望です」

このようなニーズに対してはまず、「いま具体的にどんな状態なのか」を把握した上で、「今後はどんな状態を目指すのか」を考えるところから始める。顧客と意見交換しながら、何が必要なのかといった仮説を設定。例えば組織内の対話が進むためのキーがどこにあるか。そのために組織状態をわかりやすく表現するなど、課題を構造化して捉えることが重要。課長の役割がキーであるという仮説を設定したら、課長が取るべき行動は何かについて議論を進める。

「例えば、課長の取るべき行動としては次のようなものが挙げられます。『部下の発言に共感を示しながら最後まで聴く』『部下が発言したこと(行動)自体を褒める』『部下に頻度高く声をかける』。これらの行動を上司が行うことによって、部下が発言しやすい雰囲気がつくられていくのです」

こうして設計された設問に対してサーベイ回答していくわけだが、「360度フィードバックにおいては回答プロセスそのものにも大きな意味がある」と藤原氏は語る。設問に回答しながら「このような行動が求められているのだな」「この行動はどの程度できているだろうか」と自分自身の行動を振り返ることで、設問に込めた意味内容を意識し始める。それが結果的に組織全体に浸透し、具体的な取り組みにつながっていく。

また藤原氏は、フィードバック研修についても次のように語った。

「サーベイ結果を本人に返却するフィードバック研修には、工夫が必要です。結果を単に返却するだけでは、効果は限定的です。まずは『なんでこんなことをしないといけないんだ』というネガティブな感情をできるだけ軽減すること。また、結果報告書の正しい読み方、より深い解釈を支援することはもちろんですが、弊社が特に重視しているのが、研修後、職場に戻ってからの行動実践を支援するための情報や実践ノウハウの提供です」

360度フィードバックの結果が出たら、問題となっている行動や状況に気づくことができる。しかし、「どの行動をどのように改善すればよいのか」が自分では分からない人も意外と多い。そこで、すぐにでも取り組みたくなるような「行動改善のヒント」や、「具体的な考え方・やり方」を研修で伝えるようにしているという。例えば、優れた成果をあげている人に共通する行動特徴や、サーベイ結果の分析から導かれた実践方法など、多くの管理職にとって参考になる具体的方法の紹介である。

「フィードバック研修後、数ヵ月経ってから実施された職場アンケートをみると、『部下との会話の頻度が増えた』『部下の意見を積極的に聞くようになった』『話を最後まで聞くようになった』など、たくさんの効果が得られています。特に、コミュニケーションに関する行動が改善されたケースが多いようです。また、当初考えていなかった課題が発見されることもあります。この場合は、新たな設問による360度フィードバックを実施し、その課題に応じた結果返却の方法を検討します。状況に応じて、個別面談などを行うこともあります」

講演写真

「1on1」「働き方改革」のための活用事例

次に、『1on1』の活用事例へと話は進んだ。『1on1』とは、上司と部下が一対一で定期的に行うミーティングのこと。『メールで終わるような希薄なコミュニケーションではなく、対話を増やすことで上司と部下との関係性を強化したい』『部下の成長を支援したい』といった目的によって、この1年くらいで導入した企業が増えている。

「『風土改革』についてお話したのと同じように、まずはお客様と『1on1が定着するというのはどういうことなのか』『何があれば定着するのか』といった意見交換を行います。1on1実施の中で、『どういうことができればよいのか』『どんな頻度で行うことがよいのか』。また、『上司はそもそも1on1に前向きなのか』『部下育成に対する意識レベルがどうなのか』といった実施前の状態、そして実施後に『フォローとして何を行うべきなのか』などについて話し合います」

このように実施前、実施中、実施後、という三つの観点で1on1をトータルに考えながら、あるべき姿について議論する。そして、あるべき1on1の姿を実現するために具体的にどんな行動が必要なのか考えて設問設計を行い、その設問を用いてサーベイを実施する。アイデアレベルで思いついたことを設問にしてしまうのではなく、体系立てて設問設計していく点が重要だ。

「『働き方改革』というテーマには、残業時間、出産・子育て、親の介護、テレワーク、社員の健康など、さまざまな背景がありますが、それらの背景を理解しつつ、まずは『働き方改革』を支援する目的の明確化が重要です。例えば、『業務の効率化』と『イキイキと働けること』という二つの目的(観点)を設定したとします。前者は機能的・ハード的側面に関すること、後者は感情的・ソフト的側面に関することと言えるでしょう。その上で、二つの観点から上司が行うべき行動の仮説を設定しながら、設問設計を進めていくのです」

藤原氏は、活用事例にみる進め方の大事なポイントとして三点を述べた。「課題の現状や解決の状態をふまえながら設問設計をする」「課題自身の解決策も見えてくるように課題をわかりやすく構造化して考える」「サーベイ結果を渡して気付かせるだけではなく、行動改善を促す仕組みも講じる」ということだ。

最後に、自社の実施結果を世の中の一般的な結果と比較することの是非、評価者の選定方法、継続的に実施する場合の実施スパン、スムーズに導入するための社内説得方法、失敗事例など、講演前に寄せられた質問、そして会場からの質問に対する回答が行われた。

そして、360度フィードバックを導入検討されている企業、有効活用したいと見直しをされている企業の方々にとって役立つ情報サイト(1月末オープン予定)が紹介された。

「2018年1月末に『360度フィードバック(360度評価)知識集サイト』をオープン予定です。現在構築中ですが、導入手順や実施におけるポイントなど、これまで蓄積してきたたくさんのノウハウを掲載します。本日時間の関係で回答できなかったご質問(Q&A)、お伝えできなかった活用ノウハウ、そして活用事例なども紹介させていただく予定です。弊社のホームページ内(http://www.sdi-c.co.jp/)に開設しますので、よろしければご覧ください。360度フィードバックの有効活用に役立つことと思います」

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