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「経験学習」と「サーバントリーダーシップ」で持続的に成長する組織をつくる

  • 真田 茂人氏(株式会社レアリゼ 代表取締役社長/NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会 理事長)
  • 松尾 睦氏(北海道大学大学院経済学研究科 教授)
東京大会場 [K-5]2017.12.26 掲載
株式会社レアリゼ講演写真

部下に「経験学習」を促せるリーダーは、部下が経験からよりよく学べる場をつくり、学びを支援する活動を行う。その一連の行動は、部下に奉仕しつつ導く「サーバントリーダー」と重なる部分が多い。サポートする上司がサーバント(奉仕)的であるほど、部下は挑戦する姿勢が保て、振り返りから成長をすることができるのだ。レアリゼの真田氏、北海道大学大学院教授の松尾氏が、経験学習とサーバントリーダーシップの関係性について解説した。

プロフィール
真田 茂人氏( 株式会社レアリゼ 代表取締役社長/NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会 理事長)
真田 茂人 プロフィール写真

(さなだ しげと)株式会社リクルート、外資系金融会社、人材サービス会社設立を経て、株式会社レアリゼ設立。個人の意識変革を起点とした組織開発を強みとし日本を代表する企業、官公庁など幅広い分野で多数の研修導入、講演実績がある。また、サーバントリーダーシップの普及を通じ、グローバルに通用するリーダーの育成に取り組んでいる。


松尾 睦氏( 北海道大学大学院経済学研究科 教授)
松尾 睦 プロフィール写真

(まつお まこと)88年小樽商科大学商学部卒業、ランカスター大学経営大学院博士課程修了(Ph.D)。岡山商科大学、小樽商科大学、神戸大学を経て、2013年より現職。主な著書は『経験からの学習――プロフェッショナルへの成長プロセス』(同文舘出版)『経験学習入門』(ダイヤモンド社)など。


真田氏によるプレゼンテーション:奉仕から人を導くサーバントリーダーシップ

「人と組織と社会を幸せにする」をミッションに、サーバントリーダーシップを軸とした人材コンサルティング事業を展開する、レアリゼ。その代表である真田氏はまず、サーバントリーダーシップの有効性について語った。リーダーシップが発生するには、部下が「ついて行きたい」と思ってくれなければならない。では、どういうときについて行きたいと思うのか。真田氏は、サーバントリーダーシップが有効に作用すると語る。

「管理職が行使する力には二つの種類があります。一つは権限で、ルールや制度を使って行う『マネジメント』。もう一つは属人性で、人の心に働きかける『リーダーシップ』。変化の激しい現代においては、リーダーシップの力が問われます。そこで有効になるのが、相手に奉仕することで、相手が『ついて行きたい」と思うサーバントリーダーシップです」

サーバントリーダーとはメンバーに君臨するリーダーではなく、メンバーを下から支えていくリーダーだ。サーバントリーダーを提唱したロバート・K・グリーンリーフ氏は、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後導くものである」と実践哲学を述べている。

「では、何にサーバント(奉仕)するのか。実務ではメンバーに対してだけでなく、同時に仕事のミッションやビジョンにも奉仕しなければなりません」

講演写真

サーバントリーダーシップは一つの哲学であり、「こうすればいい」というマニュアルがない。しかし、その特徴には「傾聴」「共感」「癒し」「気づき」「納得」「執事役」「人々の成長に関わる」「コミュニティづくり」「概念化」「先見力、予見力」といったものがあげられる。真田氏は、近年、欧米やアジア、日本でもサーバントリーダーシップの需要が高まっていると語る。そこには諸外国と日本に共通する悩みがある。

「理由の一つ目は、正解のない成熟社会になってきていること。従業員には仕事に対して受け身になるのではなく、自律的、主体的な働き方が求められています。二つ目は価値観の変化です。最近は仕事の働きがいが重視され、会社の論理や都合でなく個人の尊重や社会性が叫ばれるようになっています。それで今までのリーダーシップスタイルでは通用しなくなり、新しい形としてサーバントリーダーシップが求められているのです」

今、サーバントリーダーシップが現場で求められる背景について、真田氏はOSとアプリケーションの関係を例に解説した。

「人事で用いるさまざまな手法をアプリケーションとすれば、サーバントリーダーシップは人間観や世界観、価値観、哲学といったOSです。人事手法がうまくいかなくなっているとしたら、OSが古くなっているのかもしれません」

松尾氏によるプレゼンテーション:経験学習をサポートするサーバントリーダー

松尾氏は、メンバーが自身の経験から学ぶことを支援する人が、サーバントリーダーだという。

「経験学習は『具体的経験(何かを経験する)→内省(振り返る)→持論化(教訓を引き出す)→新しい状況への応用(次に生かす)』が一つのサイクルとなっています。しかし実際に行う時は、『内省』と『持論化』のステップを省略しがちです。サーバントリーダーは、この『内省』と『持論化』を促し、メンバーが経験から学ぶことをサポートできる人であるといえるでしょう」

経験学習サイクルを適切に回すためには、経験から学ぶ力が必要になる。具体的には、「ストレッチ(挑戦する力)」「リフレクション(振り返る力)」「エンジョイメント(楽しむ力)」が欠かせない。ストレッチとは、頑張れば届きそうと思える目標を設定する力であり、リフレクションは経験を適切に振り返る力。エンジョイメントは仕事のやりがいや意義を見つける力だ。そして、これらの力を身に付ける原動力が「思い&つながり」である。

「思いとは『こうなりたい』という信念やビジョンであり、それが軸になってよい振り返りができるようになります。つながりとは良き他者との関係性であり、それにより自分の背中を押してもらえたり、いいアドバイスがもらえたりします。上司がやるべきなのはこれら五つの力を引き上げていくことであり、その力を鍛える場をつくり、行動を支援することがサーバントリーダーの役割ではないでしょうか」

次に松尾氏は、上司のサーバントリーダーシップを評価する七つのチェック項目(リンデンらの研究成果)を紹介し、実際に評価してみてほしいと参加者に語りかけた。

<部下ファースト>
□上司は、私のキャリア開発を第一に考えてくれる
□上司は、自分の関心よりも私の関心を優先してくれる

<自律的な問題解決支援>
□上司は、仕事上で問題ないかどうか聞いてくれる
□個人的な問題が生じたとき、上司からの支援を得ることができる
□上司は、難しい状況に置いて、私が最善だと思う方法で対処する自由を与えてくれる

<コミュニティ&倫理重視>
□上司は、地域社会に貢献することの重要性を強調している
□上司は、成功するために、倫理的原則を曲げることはしない

「四つ以上チェックが入れば、サーバントリーダーの特性を持っていると思います。私はこの測定尺度を使って医療組織で調査を行いました。課長のサーバントリーダーシップが職場メンバーに与える影響について分析したところ、サーバントリーダーがいる職場ほど『エンジョイメント(仕事への集中・熱中度)』が高い、つまり部下がやりがいを見出し、イキイキしている、ということです。また、サーバントリーダーがいる職場ほど、部下が学習や成長意欲(思い)を持ち、よく業務を振り返る(リフレクションする)傾向にありました」

講演写真

次に松尾氏はサーバントリーダーシップについて、いくつかの事例を示した。一つ目の事例は、病院の看護部だ。職員37人中、6人が時短、1人がパートという病棟で、スタッフが自主的に「多様な雇用形態であっても働きやすい職場づくり」という目標を立てたが、一部には不平・不満があった。

そこでこの病棟の管理職は、互いの状況を理解しあうため、各スタッフの一日のスケジュールを語り合った。子どもがいる人、独身の人、親を介護している人など、さまざまな生活スタイルを持つスタッフ同士で、朝から寝るまでの一日を共有したのである。このセッションによって、それぞれが背負っているものの違い、仕事場ではわからなかったスタッフの状況がわかり、相手の立場を理解しながら、柔軟に働けるように仕事のあり方を前向きに改善するようになったという。

「個々の情報を共有したことで職場の空気が変わり、皆が一生懸命仕事に取り組むようになりました。これは全人格的にメンバー同士が理解し合う場を作り、自発的な問題解決を促しているという意味で、サーバントリーダーシップを発揮した事例といえます」

二つ目の事例はメーカーの技術部。この部署では毎週1時間半程度、「いいねレビュー」を行っている。毎回2人ずつ、仕事と直結しなくても「こんなことをやりたいです」「こんなことを考えました」というテーマで話してもらい、それに対して皆が「いいね(ふつう)」「面白いね(革新的、新しい」「なるほど(論理的)」とコメントする。

「この部署の管理職は、部下の関心を第一に考えて、部下のやりたいことを応援しているという点で、サーバントリーダーだといえるでしょう」

三つ目はメーカー人事部の課長の指導事例である。この課長は、部下が自分の力で泳ぎきることを重視し、70点くらいの成果であれば、その仕事を上司にあげているという。成果のクオリティーを90点にすると、結局マネジャーの介入が大きくなり、自分でやり切った感がなくなって、人は成長しなくなるからである。

「この課長は、実力的に劣る部下に対しては水泳のコースロープの幅を狭くして、寄り添いながら振り返りを促し、実力がついてきたら、コースロープの幅を広くして、徐々に任せる度合いを強くするという指導をしていました。サーバントリーダーは、部下が自分の力で泳ぎ切ることを支援する人です」

仕事の成果で90点を目指す人は、部下よりも上司のほうを向いて仕事をする傾向がある。指導する際にも、本人が自分で気付き、本人の口から出る言葉を大切にしなければならない。そのためには、問いを部下に投げて、本人に気付いてもらうことが重要になる。

「サーバントリーダーは普段から『あれってどうなっているの』などと部下に聞き、何が起こっているのかを把握します。部下との会話では、上司側から歩み寄らないと話してくれません。会話をもとに上司がうまく導き、自律を支援するのです」

松尾氏は「サーバントリーダーシップは、倫理観や社会貢献といった姿勢がそのベースになる」と語る。つまり、会社という狭い世界だけでなく、「人間として」「社会にとって」という広い視点を持ち、そのうえでメンバーの考え方や価値観を尊重し、自律的な問題解決を支援するのである。

「メンバーを全人格的に理解しようとするサーバントリーダーは、部下の思いを尊重します。メンバーにどうなりたいのかを聞き、振り返らせながら自分の力で泳ぎ切らせ、結果としてやりがいを見つけさせる。それが理想的なサーバントリーダーシップだといえるでしょう」

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Q&A:変われない管理職や部下をどうすればよいか

プレゼンテーションに続き、質疑応答が行われた。

質問1:振り返りができない部下を抱えるマネジャーに、どんなアドバイスを与えればよいか。

真田:その部下はおそらく、見ている視座が低いのでしょう。視座を上げてあげることが必要です。将来のビジョンを考えてもらうために、中長期的なことを話しながら振り返りをするとよいのではないでしょうか。

松尾:問題のある若手には、二つのタイプがあります。一つは主体性がなく受け身なタイプ。もう一つは「大丈夫」と言いながら他人の言うことを聞かない暴走タイプ。育て上手のマネジャーは、そういう若手に何らかの「期待」を抱くようにしています。全体的に期待できないとしても、部分的になら期待できるところもあります。その人が得意なことに着目し、水泳プールのコースロープを狭くするように、自分で動ける余地を残しつつ方向性を示す、というやり方です。また、「仕事の方法やアプローチを変えてみたらどうか」などと方法論に限定して指導すると、やる気になってくれるようです。そうした形で振り返りを促していると徐々に自分の力で振り返ることができるようになるようです。

質問2:管理職は研修をしてもなかなかマインドが変わらないが、どうすればよいか。

真田:アドバイスが説教に聞こえると、人はなかなか受け入れてくれません。しかし人は自分が発見したことは受け入れてくれるので、そのように仕向けるとよいと思います。私たちが研修でよく実施するのは、実務を体験する前に疑似体験をしてもらい、その中で発見してもらうという手法です。疑似体験による経験学習サイクルを回した後に、実務経験のサイクルを回すのです。

松尾:管理職研修で参加者にOJTマニュアルをつくってもらったところ、自分たちで作ったマニュアルなので活用するようになったという事例があります。具体的には、問題のある部下を想定し、なぜそうした行動をとるのか、どうしたら言うことを聞いてくれるかについて皆で議論したうえで、マニュアルを作成するのです。会社から押しつけられたOJTマニュアルは使わないけれども、自分たちでつくったマニュアルは、自分たちでコミットしアイデアを出したものですから「使える」と思えるようです。このように、研修の中に主体的にマニュアルを作るセッションを入れるという方法はあるかと思います。

最後に真田氏が、経験学習とサーバントリーダーシップにおける組み合わせの有効性について語った。

「松尾先生は著書で『人の成長には、能力的な成長と精神的な成長の2種類がある』と書かれています。精神的な成長とは、自己しか考えなかった人が利他まで考えられるようになること。これはまさに経験からの学びによって、サーバントリーダーになるということです。そういった成長がなければ人を動かすことはできません。このような関係にあるからこそ、経験学習とサーバントリーダーシップの組み合わせは大変有効なのです」

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