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一流プロサッカー選手から学ぶ「プロフェッショナルな個人と組織の創り方」

  • 加藤 明拓氏(株式会社フォワード 代表取締役)
  • 高橋 悠太氏(ジェフユナイテッド市原・千葉 ゼネラルマネージャー(GM))
東京大会場 [L-5]2017.12.26 掲載
株式会社フォワード講演写真

プロサッカークラブが持つ哲学は、その勝敗を左右すると同時に組織づくり、人材育成において重要な意味を持つ。個々のプロフェッショナルな力を束ねて、勝てる組織、成長する組織を目指す手法は、一般の企業活動においても参考になる点が多くある。スポーツコンサルティングを行うフォワード社代表の加藤氏、ジェフユナイテッド市原・千葉のゼネラルマネジャーである高橋氏が、プロフェッショナルな個人と組織の創り方について語り合った。

プロフィール
加藤 明拓氏( 株式会社フォワード 代表取締役)
加藤 明拓 プロフィール写真

(かとう あきひろ)株式会社リンクアンドモチベーションにて組織人事領域のコンサルティング業務に従事後、スポーツコンサルティング事業部の立ち上げ、ブランドマネジメント事業部長を経て、2013年に株式会社フォワードを設立。国内大手企業やプロスポーツチームを対象に、ブランド戦略策定~社内浸透、研修講師などに豊富な実績を持つ。


高橋 悠太氏( ジェフユナイテッド市原・千葉 ゼネラルマネージャー(GM))
高橋 悠太 プロフィール写真

(たかはし ゆうた)早稲田大学卒業後、楽天株式会社入社。西日本地区のエリアマネジャーを務める。その後、Jリーグ「ヴィッセル神戸」の常務取締役~チーム統括本部長(当時Jリーグ最年少GM)を経て、2015年にJリーグ「ジェフユナイテッド市原・千葉」のゼネラルマネジャーに就任。


「疑似的に競い合う環境」をつくるノウハウを活用する

フォワード社代表である加藤氏は以前、リンクアンドモチベーションでスポーツコンサルティング事業部を立ち上げ、ブランドマネジメント事業部長を経て独立。フォワードはブランドコンサルティングやスポーツコンサルティングの事業を通じ、大手企業や個人、ブランド、プロスポーツチームを支援。ブランド戦略策定から社内への浸透、研修講師などを請け負う。また、同社はカンボジアおよびナイジェリアのプロサッカークラブを買収、その経営も行っている。加藤氏は、プロサッカークラブと一般企業の比較から語り始めた。

「ともに顧客、従業員・選手がいて、その間で価値の交換を行う構図です。その基本構造に大きな違いはありません。組織図でみるとプロサッカークラブには社長の下に、チームを強くする強化部門とチームの価値を高め、収益化する事業部門があります。」

企業と従業員の場合、雇用契約だが、サッカーの現場は、クラブと選手の個別契約。単年或いは複数年といった契約の期限がある。その上、選手生命は一般のビジネスパーソンに比べて非常に短い。また、サッカーでは試合に出られるのは11人と制限がある。それだけに日々の結果や成果が厳しく問われる立場であり、常に結果を出さなければならない、という危機感を感じる環境にある

講演写真

では、このようなスポーツ組織のノウハウを企業ではどう活かしているのか。それは、社員が互いに競い合う疑似環境をつくる手法だ。JTはキャリア採用ということでエリートを選抜して育成し、更に入れ替え戦も行う。サイバーエージェントは社員が評価の下位5%に警告、イエローカード、レッドカードと3ステップに分けて、レッドカードになれば強制的に部署異動または退職勧奨となる。

「疑似的に競い合う環境をつくり、メンバーに危機感を持たせて内発的動機を高め、より高い成果を目指す。このようなプロサッカークラブの運営ノウハウは、企業でも十分に活用することができます」

「チームが持つ哲学」が人を育てる

次に、加藤氏と高橋氏によるディスカッションが行われた。高橋氏は、楽天でJリーグ「ヴィッセル神戸」常務取締役、チーム統括本部長を歴任し、2015年にJリーグ「ジェフユナイテッド市原・千葉」のゼネラルマネジャーに就任。セッションは加藤氏の「プロフェッショナルな組織、人とは何か」という問いから始まった。

高橋:プロで結果を出している人は、当事者意識が高く、自分が実現したい目標に対して時間軸が明確である、という特徴があります。「このときまでに何をする」ということをはっきりと意識していますね。

加藤:一般企業の人と比べると違いはありますか。

高橋:私が以前いた楽天もプロ意識が高い企業で、入社したときにはっきりと楽天の社員像が示されました。Jリーグでも選手向けの教育研修を行っていますが、そこでも「プロとしてどうあるべきか」といったプロ意識を持たせる教育が重視されています。サッカー選手はプロになった時点で、一つの夢を達成します。そこからプロとして伸びる選手とそうでない選手とは、最初の教育によって大きな差がでます。

加藤:中には途中で消えていく選手もいますが、意識面からみて、プロとして活躍できる選手とそうでない選手に違いはありますか。

高橋:プロで結果を残せる選手は、明確にメンタルで違いがあります。例えば日本代表選手の中で、ここ3年以内に公式戦で50%以上出場している岡崎慎司選手がいい例ですね。なぜ彼がそれほど起用されるのか。彼は自分の身体能力を客観視できる力が大変高く、自分が得意とするフィジカル部分にフォーカスし、トレーニングを行っています。自分を客観視できる能力があるのとないのでは、結果が大きく違います。

講演写真

加藤:私も同様の経験がありますが、買収したカンボジアチームの選手意識を変えることは実に大変でした。買収した時点ではどの選手もプロ意識が希薄で、チームの勝利に執着する気持ちも低かった。そこで選手の意識を変えるために三つのことを行いました。一つは彼らのサッカー選手としての定義を変えること。彼らはサッカーが好きで選手になった人たちですから、「君たちの仕事はサッカーではない。サッカーを通じてファンに夢や勇気を与えるのが仕事だよ」と常に言っていました。

二つ目は、厳しいようですが、私たちと考え方が異なる選手は入れ替えたこと。チーム文化の醸成を優先したのです。三つ目はホームタウンの移転です。これまでカンボジアリーグはプノンペンという大都市に全チームがあり、ファンもどこを応援すればいいか迷うような状況でした。そこで思い切って地方都市に移転し、地域と一体になる道を選んだのです。これらによって選手も変わりました。危機感をあおり、内発的アプローチを行うことはやはり重要です。ここでお聞きしたいのですが、プロフェッショナルな組織、人づくりで意識していることはありますか。

高橋:人を育成するうえでは、チームが持つ哲学といったものが大事だと思います。Jリーグは選手の流動性が高いので、その中でいかにクラブが持つ哲学を保てるのかはもっとも意識するところです。チームの哲学に合った監督を連れてくることにも尽力しています。

加藤:日本ではチームより監督を中心に考えるところがあって、監督を変えるたびにスタイルが変わるチームもありますね。どちらを尊重すべきなのでしょうか。

高橋:ジェフも監督が変わるたびにスタイルが変わり、結果としてチームの継続性や積み上げといった財産をつくれず、リセットをし続けた過去があります。やはり、大事にすべきはチームです。クラブが持つ理念やビジョン、哲学に合った人材を集め続けたほうが考えを継続でき、クラブが成功する可能性も高まるのではないでしょうか。人が変わるとコストも大きくかかりますから、ビジネスでも組織が目指すビジョンをいかに浸透させるかを考えて、チームづくりを行ったほうが効率がよいと思います。

加藤:企業でも、ビジョンをもとに組織づくりを行っているところは少ないと思いますね。しかし、これから日本も人材の流動性が高まっていきますから、企業はどのような軸で人をマネジメントしていくのかを考えなければいけない。今後、企業は理念、ビジョン、組織文化といったものでマネジメントしていく必要があると思いますね。

講演写真

「変わる環境」にいかに適応し続けるか

加藤:サッカークラブは選手のすべてを把握して採用を決めることはできませんから、チーム文化をつくるために苦心することもあると思います。クラブのビジョンや文化といったものの濃度を高めるために、何か行っていることはありますか。

高橋:それに関しては、監督の存在がすごく大きいですね。監督自身が、選手にビジョンや哲学を365日示せるかどうかが重要です。企業の場合、研修で社員にビジョンを伝えても、部署に戻って1ヵ月、2ヵ月もすると忘れていることが多い。しかし、サッカーは監督が現場で選手をまとめるので、コミュニケーションの中で厳しくビジョンを伝え続けます。そうしないと、選手はすぐに楽をしてしまうのです。ヨーロッパには選手に厳しさを求める監督が大勢いますが、それはその価値を分かっているから。その意味では、サッカーにおけるマネジメント層のリクルーティングは非常に重要です。

加藤:私たちも組織変革で、ビジョンを浸透させるプロジェクトをお手伝いしますが、大事なのはルーティン化です。また、もっとも大きな影響力を持つのは日々現場でメンバーに接するマネジャーです。行動から理念へとさかのぼってチェックし、個々にフィードバックできているかどうかは重要です。そしてもう一つ大事な点は、メンバーの成果に対する基準の違いを把握しておくこと。成果を出したいのは誰もが同じですが、成果に対する執着は、それぞれ違います。その点を把握したマネジメントができていることが大事ですね。

私たち二人の共通の先輩にジェフ千葉の羽生直剛選手がいます。現在38歳で、大変長く選手として活躍しています。どうしてそんなに長く活躍できるのかと本人に聞くと、「自分はすごく臆病」と言います。また、他の人よりも自分が優れている点があるとしたら、生き残るためにどう環境に適応するかを常に考えていることだと。ビジネスでも環境が変わるスピードが速くなっていますが、それにいかに適応するかを考えることが、プロフェッショナルとして必要ではないかと思います。

個々の特徴を活かす「ベースづくり」が重要

参加者:先ほど、世界で勝つにはしっかりとマネジメントを行って選手を厳しい環境に置かなければならない、とお聞きしました。今は個々の自主性や自由度を大事にする、という育成アプローチが減っているのでしょうか。

高橋:よりよい選手になるための管理は年々厳しくなっています。しかし、海外では選手の個性の部分については何も言わない監督も多い。個人が持つ特徴を活かすために、そのベースとしてやるべきことについては徹底してうるさく言いますが、個性の部分は「自分が得意な個性を出すようにするといい」と言うだけです。

企業においても、人材のベースとなる部分は徹底してやるといいと思います。サッカーの試合前のミーティングでも、日本と海外の監督で違いが出ます。日本の監督はミーティング時間が長く、選手一人ひとりに細かく指示を出しますが、海外の監督は選手にヒントは与えても、その先は個人任せです。選手に対する許容度に違いがあると思います。

加藤:ビジネスでも現場で対応することが増えていますから、受け身ではなく主体的に自分が判断できる人が増えないと、やりにくくなるように思います。本日はありがとうございました。

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