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人事が知るべき「生産性向上」と「イノベーション」

  • 米倉 誠一郎氏(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授/一橋大学イノベーション研究センター 特任教授)
大阪基調講演 [OC]2018.01.17 掲載
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日本企業は海外と比較して、生産性の低さに加え、イノベーションにおいても課題を抱えている。法政大学大学院教授の米倉氏は、その原因に日本の教育投資の低さをあげる。個が見える教育がクリエイティブにつながり、それがイノベーションの源泉となるのだ。今人事が理解しておくべき日本の危機的状況について、米倉氏が熱く語った。

プロフィール
米倉 誠一郎氏( 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授/一橋大学イノベーション研究センター 特任教授)
米倉 誠一郎 プロフィール写真

(よねくら せいいちろう)1981年、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了後、ハーバード大学にてPh.D.(歴史学)を取得。1997 年〜2017年一橋大学イノベーション研究センター教授。1999年~2001年、2008年~2012年3月同センター長。2012年3月よりプレトリア大学ビジネススクール (GIBS) 日本研究センター所長を兼務。2017年4月より法政大学教授。現在、法政大学の他に、Japan-Somaliland Open University 学長も務め、2001年より『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼任している。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。著書は、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『脱カリスマ時代のリーダー論』(NTT出版)、『経営革命の構造』(岩波新書)、『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社)『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)など多数。


教育で列強に追いついた日本。しかし、今や自己肯定感も激減

米倉氏は、日本における改革の必要性から語り始めた。

「財務省は消費税を上げると日本の消費が増える、と言っていました。皆さんはいま高齢者世帯の貯蓄額が全国平均でどれくらいか、知っていますか。2000万円~3000万円の間と言われています。東京都に限ると、8000万円です。なぜ資産を使わず、こんなに持ち続けているのか。答えは簡単ですね。将来が不安だからです。マイナス金利を実施しても、不安は解消されません。財務省の理屈は、消費税を上げて、その資金で年金と社会保障にしっかり対応する。そうすれば、高齢者も安心してお金を使うようになる、ということでした。しかし、その目論見も『教育無償化』で消えてしまいました」

米倉氏は、「国としてドイツはプライマリーバランスがゼロ。しかし、日本はまったくそのレベルではない。これは痛みを伴う改革が必要」と語る。そこで必要になるのがイノベーションだ。

「社会主義は富の分配には優れていますが、富の創造には向いていません。富の創造に向いているのは資本主義のダイナミズムです。そのため、中国の鄧小平は1979年に一国二制度を採用しました。その根底にあるのは何か。イノベーションです。イノベーションが富をつくって、新たな再配分を加速していく。ですから、イノベーションを行った人と行わなかった人で富の差ができるのは当然のことです。それは企業も同様。ただし問題は、それによって格差が固定化していくことにあります。それを正せるのは、教育しかないと思います」

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日本はこれまで、まさに教育によって富を高めてきた国といえる。19世紀、世界の主力産業は綿工業だった。日本の綿工業は1890年で輸出が輸入を凌駕する。日本は20年足らずで世界の主力産業の国際競争力を身に付けた。すべては日本の人材がなしえたことだ。

「明治時代、人口に占める学生の比率も大幅に伸びました。1870年(明治3年)ごろは日本全体で4%を切る程度でしたが、1910年(明治43年)にイギリスを抜き、1930年(昭和5年)には米国に次いで2番目に学生の比率が高い国になっています」

明治政府は教育に十分な投資をしていた。しかし、それが花開くのは1950〜60年代で、それが日本をして世界第2位のGDPを達成させた。また、明治の諸政策は身分を有償撤廃し、サムライたちを企業家に変えていった秩禄処分をはじめとして、極めてイノベーティブだった。

「それに比べて、安倍政権が推進する教育無償化は、全然クリエイティブではないと思います。無償化ではなく、米国や英国でトライされている教育バウチャー制度のほうが面白い。これは子どもを持つ家庭にバウチャーという教育補助券を交付し、保護者や子どもは自由に学校を選択でき、学校は集まったバウチャー数に応じて行政から学校運営費を受け取る、というものです。『いい教育』を行う学校は、どんどん豊かになり、無策な学校は危機に直面します。こうして、21世紀に必要な教育体系が模索されるのです」

次に米倉氏は、「いい教育」とは何かについて語った。

「これから教育には、生きる力を育むことが大事だといわれます。『生きる力』とは『自分を好きになる力』だと思います。それを支えるのは自己肯定感です。自分には存在している価値がある、と思える力です。世界180ヵ国で行っている教育調査で、『自分に価値があると思うか』という質問をしたところ、日本は80位くらいでした。これは悲しい結果です。なぜかというと、日本の子供たちに押し付けられている価値観が極めて矮小化されているからです。人を測るにはいろいろな価値観があっていいし、その多様性が社会の成熟度や豊かさを決めます。日本の子供たちが自己肯定感を持てないのは、日本社会の価値基準が偏差値や学歴といった狭い範囲で押し付けられているからです。そんなことをもう一度、日本人はゼロから考えなおさないと、自己肯定感は生まれてきません」

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米倉氏は、GE出身でLIXILグループ副社長だった八木洋介氏と対談したときのことを語った。八木氏は、「このままでは、日本人はリーダーではなく、全員が部下にしかなれなくなる」と語っていたという。

「これまでGEの極東本社は日本人がトップでしたが、最近ではシンガポール人やインド人、香港人、パキスタン人となっています。日本人はグローバルにおいて、リーダーになれなくなっているのです」

ここで突然、米倉氏は「ここまでで何か質問は?」と会場にたずねた。そこでは誰も反応せず、しばらく間が空く。

「皆さん、すぐに手が上がりませんね。海外で『何か質問は?』と聞くと、すぐに大勢が手を挙げます。彼らは自然に手が上がってしまうほどに、積極的になる教育を受けている。まずは自分が存在する。自分が話す。そこでお互いに議論する。このような教育を受けるとどんな変化が起こるかというと、質問するために講義を聞くようになります。質問をしないで『わかった』というのと、『何か聞いてやろう』『ここで違う自分を見せてやろう』と思って聞くのでは、まったく効果が違ってきます。ここで大きく差が開くのです。これはもう訓練なんです。たくさん知識を暗記することはもういい。それよりも、自分で質問を考える。自分で他と違う論点を探しにいく。こんな教育をこれから本気でやっていかないといけません」

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米倉氏は、同じく日本企業は残念ながら、ものすごく自分たちのビジネス・ドメインを狭めていると語る。

「日本企業は優れた技術的裏付けから自分たちの事業領域を設定しています。例えば、日本の自動車企業や精密光学機器メーカーは自分たちの事業を『自動車製造』あるいは『カメラ製造』と捉えているような気がします。そうではなく、自分たちの事業は『輸送といったインフラ事業』あるいは『映像を通して豊かなライフスタイルを創造する事業』と捉え直すだけでも、21世紀に必要な大きなチャレンジが見えてくるはずです。

そのためには、企業ももっと違った基準での人の採り方をしないといけません。就職活動で学生は、みんな同じ格好をしています。僕は必ず学生に言うんです。『他と同じような色はやめたほうがいい。赤いスーツで行ったらどうだ』と。僕が採用担当なら、赤いスーツの学生を採りますよ。その格好で会社まで来たこと自体が、すごいじゃないですか。どうしてなのか、ぜひ議論したいと思います。これからは皆と同じ横並びではダメなんです。ここ20年、日本はほとんど成長していません。それはやはり、やり方が間違っているからです。ぜひ皆さんには、新しいやり方に取り組んでほしいと思います」

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