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社員の仕事の質と働きがいを高め、企業の業績を向上させる
「働き方改革」の要諦とは

  • 河辺 恵理氏(SCSK株式会社 執行役員 流通システム事業部門 事業推進グループ長/人事グループ 副グループ長)
  • 山田 理氏(サイボウズ株式会社 取締役副社長 兼 CYBOZU CORPORATION(サイボウズUS)CEO)
  • 守島 基博氏(一橋大学大学院 商学研究科 教授)
2016.06.28 掲載
講演写真

近年、多くの企業でさまざまな働き方の改革が行われている。これは評価、育成、モチベーションなど人事の改革にもつながっているが、それを成功させるのは容易ではない。そこで、働き方改革を推し進めて成果を収めているSCSKの河辺恵理氏、サイボウズの山田理氏を迎え、一橋大学大学院の守島基博氏のファシリテーションにより、両社の取り組み事例を元に議論が行われた。

プロフィール
河辺 恵理氏( SCSK株式会社 執行役員 流通システム事業部門 事業推進グループ長/人事グループ 副グループ長)
河辺 恵理 プロフィール写真

(かわなべ えり)1986年、住商コンピューターサービス株式会社(現SCSK株式会社)入社。流通業界、金融業界を中心とした大企業向けのシステム開発、営業、プロジェクトマネージャー、海外パッケージソフトの日本導入などを担当。ライン職を歴任。2006年4月より社内「女性活躍プロジェクト」へリーダーとして参画。2013年4月より人事グループ 人材開発部長として全社の人材育成を担当。2014年4月より同社初の女性執行役員として人事グループ 副グループ長就任、現職。同社の目指す「働きやすい やりがいのある会社」づくりを担当する。ダイバーシティ・女性活躍、ワークライフバランス、人材開発・キャリア支援、健康経営などのさまざまな施策を推進。


山田 理氏( サイボウズ株式会社 取締役副社長 兼 CYBOZU CORPORATION(サイボウズUS)CEO)
山田 理 プロフィール写真

(やまだ おさむ)1992年3月大阪外国語大学卒業後、日本興業銀行(現:みずほ銀行)入行。市場部門と法人営業部門を経験した後、2000年1月にサイボウズ入社、財務責任者として同社IPOの実務を全面的に行う。その後、事業部長の任に就くが、人事部門の責任者として一貫して同社の人材採用戦略、人事制度・教育研修制度の構築を手掛ける。2007年4月に取締役副社長に就任。2014年9月より、米国での事業拡大に機動的に対応するため、US事業本部を新設、US事業本部長に就任。同時に米国に赴任、現在に至る。


守島 基博氏( 一橋大学大学院 商学研究科 教授)
守島 基博 プロフィール写真

(もりしま もとひろ)人材論・人材マネジメント論専攻。1980年慶応義塾大学文学部卒業、同大学院社会研究科社会学専攻修士課程修了。86年米国イリノイ大学産業労使関係研 究所博士課程修了。組織行動論・人的資源論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授を経て、2001年より現職。主な著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『21世紀の“戦略型”人事部』『人事と法の対話』などがある。


河辺氏によるプレゼンテーション:
残業と有休から派生させた、SCSKの「スマチャレ」

働き方改革は、社員に活躍してもらうプロセスに対して、どう関わり、どのように取り組んでいけば良いのかが重要になる。最初にSCSKの河辺氏がポイントを語った。

「私どもはグローバルITサービス企業でして、社員はグループ全体で1万2000人、単体では約7500人、うちIT専門人材は約5900人です。2011年に旧住商情報システムと旧CSKの合併により誕生しました。これを機に、経営理念を『夢ある未来を、共に創る』と改めました。人が財産であり、社員全員の成長が企業の成長につながると考えています。合併の翌年から、トップの強い思いを受けて4年間にわたり働き方改革に取り組んできましたが、発端はIT業界を巡る課題にありました。IT業界では長時間労働が当たり前という感覚が染み付いており、システムは24時間365日稼働しているため休みづらく帰りづらいという状況、仕事の一人抱えという特徴もありました。数々の施策を行ってきましたが、最も成果が上がったのがスマートワークチャレンジ20(以下、スマチャレ)で、有休取得日数20日(100%消化)、平均残業月20時間以下を目標に掲げました。3年間進めた結果、2013年度以降有休取得が95%以上、月平均残業は昨年度18時間となりました」

講演写真

この施策の大きなポイントは、削減された残業手当を100%原資とした特別ボーナスである。各部門全員の平均値が目標を達成したら部門全員に付与されるという、上長はじめ全員がプレッシャーを感じる仕組みになっている。仕掛けとして、トップから毎週全社員に向けての本気のメッセージ発信、残業時間に応じた勤怠の月次認証ルールの変更も行われた。

「成果につながったポイントは3点です。一つ目は、トップによる強い旗振りがずっとあったこと。二つ目は、組織的な取り組みでありながら全社員が対象者であったこと。三つ目は、残業削減だけでなく有給休暇をセットにしたこと。これによって、業務の共有化による相互バックアップ体制への転換が見られました。課題だった一人抱えの仕事も、この転換によって改善されたのです」

スマチャレによって派生した成果は、現場の上長のリーダーシップの発揮、組織の上司・部下間でのコミュニケーションの活性化、チームや組織で業務を今まで以上に考えて取り組むようになった姿勢といった、業務力の向上だ。これらは業務効率力・組織力・意識の向上であり、全社の組織開発につながるものだと言える。さらには、メンタル不調による休職者が減少し、有休が増えて残業が減ったのにもかかわらず、売上営業利益が増加したという実態が数字として明確に表れた。

「スマチャレの他にいくつもの施策を推進した結果、やはりワークライフバランスが全ての取り組みの中心になるということが分かりました。なぜなら、スマチャレの成果によって、他の施策への社員の反応がポジティブに変わってきたたからです。社員意識調査においても、『経営理念に対して理解をしている』『今後も働き続けたいと思う』という人が90%近くになっています。ただし、他の指標にはまだ課題がありますから、SCSK i -Universityの創設、SCSKラーニングパークの開設など育成に投資していくことによって、社員の継続的な成長、キャリア意識の向上、コミュニケーションの活性化を推進していきたいと考えています」

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山田氏によるプレゼンテーション:
一人ひとりの個性や変化を重要視した、サイボウズ

次にサイボウズの山田氏が指揮を執ってきた改革を紹介した。

「ワークスタイル改革として取り組んできた内容をお話します。サイボウズは、グループウェアを一貫して開発・販売・運用している会社で、拠点は東京、大阪、松山、名古屋、福岡、仙台、札幌、上海、深圳、ホーチミン、サンフランシスコと増えてきました。連結で550人位、平均年齢約34歳の若い会社です。スローガンは、チームあるところサイボウズあり。チームワークあふれる社会を作る、チームワークあふれる会社を作る、を理想に掲げています」

ワークスタイル改革のきっかけは二つあるという。一つは、一時期28%に及んだ離職率。もう一つは、2回連続の業績の下方修正。「もっと自分たちがやりたい事業をやる中で、みんな一緒にもっと幸せになろう」との思いで現社長と二人三脚で着手した。主な取り組みは20ほどある。

「注目されているのが『働き方の選択』で、これは九つの働き方から社員が自由に選択できる制度です。遊びたい人は遊び、ワークを重視したい人は重視するという、個人の好みや価値観を尊重し合い、協力し合おうというものです。育児休暇6年はおそらく日本で一番の長さです。育児に6年休んでいいのなら、自分を育てるために休んでもいいはずと、自分を成長させるために退職して6年間は復帰可能な『育自分休暇』も作りました」

これらの成果として、28%だった離職率は5%を切り、4%位になってきている。産育休後の復帰率は100%になり、IT企業にしては珍しく女性率が4割を占めるようになった。業績も右肩上がりで成長している。

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「これら施策を策定する時のポイントは三つ。ツール、制度、企業風土です。ツールとは、リアルオフィスや情報共有ツール、ウェブ会議などで、制度は人事制度や評価制度などです。この二つは会社が決めたら導入できますが、これらの土台となる企業風土こそ重要です。そもそもチームは何を重要視してやるのか。例えば、売上利益を上げる、KPIを株価で測ることであれば、ワークライフバランスを取りながら成果を上げた人は評価されますが、ワークライフバランスだけでは評価されません。ですから、企業風土に沿った制度やツールが必要で、それがうまく循環すれば、社員の行動や満足度は変わると思います。そうでなければ変革はできません」

ライフがあってワークがあることが理想、と山田氏は語る。基本的にライフを楽しく生きるために働くわけで、エンジョイしたいライフをそれぞれに持つ社員に対して選択肢を作っていくことが大事だと考えている。

「100人いたら100通りの人事制度があってもいいのではないでしょうか。ダイバーシティと言う前から、制度は既に多様化されています。その一人ひとりに向き合って、各人が幸せになるものを提供していくとなると、人事制度は変えるものではなく増やすものだと思います。公平よりも個性を重んじることが大切です。また、ライフワークバランスは一人の中でも変わっていくものです。この変化にいかに適応していけるのか、より自由に働いていける距離感を社員が持てる制度を目指していきたいと思っています」

ディスカッション:働き方改革の背景、マネージャーの取り組み

2社の改革内容をまとめた後、守島氏が、働き方改革が必要になってきた三つの背景について語った。

守島:一つ目は、働きがいや働きやすさという要素で企業を選ぶ人たちが、だんだん増えてきたことです。GPTWなどの指標を評価する動きもあります。二番目は、多様な人材が多様な主張をするようになってきたこと。それに対してどう対応していくのかが、重要になってきました。三つ目は、仕事を人生の一部分として捉えて、トータルな人生の充実を目指す人材が増えてきたこと。そういう現状の中でどう人材を活用していくのかが、人事にとっても重要な話になってきたと思います。それでは、河辺さんにお伺いしますが、人材の活用、活躍の場の提供はどのように行われているのでしょうか。

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河辺:人材情報の見える化として、専門性認定というスキル認定をして、職種、実務経験、業務経歴などをデータベースにストックしています。それを使いながら人材配置を検討しますが、一番重要なのは、育成されてレベルアップした人材が、必要とされる場所でキャリアを作っていくことです。それが評価されて、さらにやりがいにつながるような仕組みを整えています。

守島:次に山田さんにお伺いします。非常に素晴らしい取り組みだと思いますが、これで企業がバラバラになる不安はないでしょうか。企業としてのまとまりはどう作っていらっしゃるのか、お聞かせください。

山田:一体感は正直あまり気にしていません。なぜかと言うと、サイボウズという会社自体が「チームワークあふれる会社を作りたい」という人の集まりだと、経営者はずっと考えているからです。それを目指している人たちにとって必要な制度を、提供しているということです。一体感を出すためにやっているのでなく、チームワークあふれる会社のためにやっています。

守島:働き方改革を従業員に対して実行してもらうために、マネジャーに対してやっていることや伝えている考え方などはありますか。

河辺:スマチャレの経過をトップも参加する会議で報告したり、全社員に公表したりしていましたが、はじめはやらされ感があったと部長も課長も言っていました。ただ、丸1年でそこそこ成果が出て、2年目には「早く帰るのが当たり前」「休むのはいいじゃない」「家族が喜んでいる」と自然と社員の意識が変わっていました。しかも、これまでのように体がヘトヘトになっていないのに業績が上がり、はじめは懐疑心があった社員に納得感も出てモチベーションも高まっていきました。トップの旗振りの元、まず始めて継続することと、全体の状況を数字として見える形で伝えることは重要だと思います。

山田:マネジャーが一つひとつを見ていくしかないと思います。例えば、誰かが辞める、誰かが病気になった、それはどうしてかということを、社長も含めてシェアしながら課題を挙げて、一つひとつ積み上げていくようにする。そうすると、マネジャーの意識も会話も変わっていきます。一網打尽で制度ができたからといって、マネジャーの態度も全部がガラッと変わるわけではないと思います。

最後に、三人から一言ずつメッセージが発信された。

河辺:それぞれのマネジャーがしっかり旗を振って部下の背中を押し、チームのメンバーが活躍できる環境を作っていくことが重要だと感じています。引き続き、さまざまな施策を進めていきたいと思っています。

山田:個人、チームはどう幸せになっていくのだろうと思い描きながら、社員一人ひとりに対してとことん投資をして、その結果、成長して「サイボウズみたいにやってみたい」と言っていただけるよう、取り組みを続けていきたいと思っています。

守島:2社の共通点は、常識にとらわれないところだと思います。人事の中で覚えてしまった常識みたいなものをどうやって打破できるのか、ここがポイントだと感じました。今日はありがとうございました。

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