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【戦略人事が語る】加熱する人材獲得競争下で人事が考えるべき採用戦略

  • 篠塚 寛訓氏(アマゾンジャパン株式会社 人事部 Talent Acquisition Manager)
  • 小野 真吾氏(三井化学株式会社 人事部 戦略企画グループリーダー 兼 ヘルスケア事業領域 シニアビジネス・パートナー)
  • 多田 洋祐氏(株式会社ビズリーチ 取締役 キャリアカンパニー カンパニー長)
2016.06.21 掲載
株式会社ビズリーチ講演写真

将来の労働人口の減少や求人倍率の上昇で、今後は人材獲得の競争激化が進むことが予想されている。既存の採用手法に頼り切っていては、人材の高度化、多様化に対応できない。いかに能動的に新たな採用手法を取り入れていけばいいのか。積極的に採用手法を広げる、アマゾンジャパン、三井化学の人事キーマンに、ビズリーチの多田氏が話を聞いた。

プロフィール
篠塚 寛訓氏( アマゾンジャパン株式会社 人事部 Talent Acquisition Manager)
篠塚 寛訓 プロフィール写真

(しのづか ひろのり)New York Universityを卒業後、メーカーにて海外営業と財務関連業務を経験。Temple UniversityにてMBAを取得。在学中に人材、人事業務に興味を持ち、(株)毎日コミュニケーションズの人材紹介部門立上げに参画。(株)日経HRでの勤務を経て、アマゾンジャパン(株)に入社。キャンパスチームのマネージャーを経験した後、採用全般の統括責任者となる。


小野 真吾氏( 三井化学株式会社 人事部 戦略企画グループリーダー 兼 ヘルスケア事業領域 シニアビジネス・パートナー)
小野 真吾 プロフィール写真

(おの しんご)2000年、三井化学株式会社に入社。海外営業、マーケティング、プロダクトマネジャー(事業戦略、投資、生産・品質管理等)を経験。人事部にて組合対応、制度改定、採用責任者、グローバル人事、HRBP(M&A責任者、組織開発等)を経て、現職ではグループおよびグローバルの人事戦略策定、タレントマネジメントの立案・推進に従事。


多田 洋祐氏( 株式会社ビズリーチ 取締役 キャリアカンパニー カンパニー長)
多田 洋祐 プロフィール写真

(ただ ようすけ)2012年、人事部長として株式会社ビズリーチ入社。「ダイレクト・リクルーティング」を実践し、入社時に従業員30人だった組織を4年で500人に拡大させ、それに伴い月商も10倍に成長。現在はキャリア事業のトップとして事業全体を統括し、日本での「ダイレクト・リクルーティング」の本格的な普及に努める。


「HR×テクノロジー」で広がる採用戦略

まず、モデレーター役のビズリーチ・多田氏が登壇。本日のテーマである「採用戦略」について語った。ビズリーチは、人材データベースを中心とした採用系サービスを提供している。企業は直接、人材データベースを検索し、そこからスカウトできる。多田氏はそれらのサービスの中で、レコメンド型人材サービスである「キャリアトレック」の管理職、専門職系の人材データベース、また20代のデータベースをメイン商材として企業の採用を支援している。

講演写真

多田氏は、「50」と「20」という二つの数字を参加者に示した。「この数字は、企業が採用に力を入れなければならない理由を示しています。50は人の労働寿命50年です。以前は30年ほどでしたが、この先75歳まで50年近く働かなくてはいけません。次の20は企業の平均寿命20年です。人は長く働くために多様な働き方をしなければならず、企業は変わり続けなければ生き残れない。そのキーとなるのが人材採用です」

この先、リクルーティングの未来はどうなっていくのか。多田氏はキーワードとして「HR×テクノロジー」を挙げる。「テクノロジーの進化でマッチングが進化し、リクルーティングはマーケティングの世界に近づいていく。米国のHRイベントでは、さまざまな採用マーケティングツールが登場しています。採用プロセスを管理したり、応募者の質、コスト、量を把握したり。中にはリクルーター別に採用数などが可視化される管理ツールや、採用者の入社後の生産性改善や満足度向上を図るツールもあります。HR×テクノロジーがさまざまなことを可能にしています」

多田氏は「今後、人材獲得の競争激化が進む」と語る。そのとき企業が取るべき行動は一つしかない。能動的な採用活動だ。「私たちはダイレクト・リクルーティングを提唱していますが、これも能動的な採用活動の一つです。今日は、能動的にあらゆる採用手法を積極的に使おうとされている、アマゾンジャパン様と三井化学様にお越しいただきました」

アマゾンジャパンによるプレゼンテーション:
チャレンジに対応する採用

講演写真

次にアマゾンジャパンの篠塚氏が登壇。篠塚氏は昨年から、採用全般の責任者のポジションにある。最初に同社の六つの採用指針について紹介した。「一つ目は、数よりも質を優先させることです。数合わせの採用はしません。二つ目は、応募者もお客様だと自覚すること。不合格でも納得感をもってもらえるように配慮しています。三つ目は、ビジネスパートナーシップ。常にビジネス側に対し、情報をきちんと提供できるパートナーでありたい。四つ目は、よりよく早く安く採用する技術を向上させる。五つ目は、常に新しい採用手法を考える。当社では昨年うまくいった手法を、次の年もそのまま使うことはありません。六つ目は、グローバルに通用する手法を考えることです」

次に篠塚氏は四つの採用課題について語った。一つ目はビジネスの急成長に伴う大量採用、そして二つ目は人材の多様化だ。「年間700人~1000人を採用しますが、リクルーターは増えておらず、いかに効率的に採用するかを考えています。急にビジネス側から『新チームに20人採用してほしい』と言われたときにどう対応するか。多様化では最近、『地方で方言の研究をしている人が欲しい』というオーダーがありました。このような依頼に応えることに常にチャレンジしています」

三つ目に挙げたのは、エンプロイヤーブランディングだ。アマゾンは買い物サイトの認知はあるが、働く場としての認知はまだ足りない。そこをいかにブランディングするか。最後の四つ目は、リーダーシップ理念に基づいた採用だ。「アマゾンには14項目のリーダーシップ理念があります。『お客さまを一番に大切にする考えを持っているか』『物事を深堀する力を持っているか』『意見を相手にきちんと伝えられるか』といったものです。この理念に合わないと不採用となることもあります。リクルーターとしては複雑ですが、会社のカルチャーを浸透させるためには大切なことです」

篠塚氏は最後に、自身の今年のチャレンジとして、採用時におけるアセスメントの簡素化を挙げた。「採用数が増えるほど面接も増える。リソースが取られていきます。それをどう簡素化できるか。米国ではエンジニアに限り、3時間半ほどのテストのみで一度も面接しない採用を行っています。そういう手法をいかに日本に持ち込むのかも、私にとっての課題です」

三井化学によるプレゼンテーション:
現状を打破する採用

講演写真

続いて、三井化学の小野氏が登壇した。小野氏は三井化学グループ全般の人事制度企画や、タレントマネジメントを担当する。小野氏は最近の採用動向について語った。「三井化学は過去、新卒至上主義でした。入った人もあまり辞めない。しかし昨今は、新事業を立ち上げる必要から、採用手法が見直されています。キャリア採用を近年強化し、30代、40代の採用がボリュームゾーンです。また、2013年度より意図的に50代、60代の方を採用するなど幅広い採用も行っています」

三井化学では、ヘルスケア事業とモビリティ(自動車関連)事業が成長領域であり、キャリア採用はその研究開発が多数を占める。5年間の平均で60%程度がこの領域だ。他は海外経験で外国人や駐在経験のある人のキャリア採用も半数ある。「HRビジネスパートナーという制度を取っていますので、こちら側から仕掛けて、採用してはどうですか、ということも行っています」

三井化学はさまざまな採用手法を取っている。上から人材紹介、広告媒体、リフェロー(社員の紹介)、インターンを通じた採用やHPからの応募などだ。「最近はリフェローを増やしています。特にヘルスケア領域で候補者への直接コンタクトを増やしており、5年平均で50%程度はリフェローです。他では雑誌で紹介され気になった方に直接コンタクトを取り、採用に結びつけるといったダイレクトコンタクトも行っています」

小野氏は、日ごろからカジュアル面談によって、候補者プールをつくることも行っていると語る。どんなときにどんな人と出会えるかわからないため、リクルーティング部隊もなるべく、自らに近いところからコンタクトを取ることを心がけている。「重要ポジション以外は、費用をかけずに効率的に採ることを心がけています。チャネルは限定せずに、さまざまなところに触手を広げています」

キャリア採用の課題としては、候補者にとってのブランディング強化がある。また外資系企業と人材の取り合いになることもあるため、条件面の多様性、柔軟性を強化している。「ミドルの採用は多いのですが、上層部での採用はあまり多くないため、例えば新規事業のリーダーにそのまま来てもらうなど、より良い人材を探索し獲得する力をつけたいと思っています。他ではダイバーシティの強化、効率的な採用が課題となっています」

潜在的な転職希望者に向けた採用戦略の必要性

ここから3名によるディスカッションが行われた。

講演写真

多田:採用チームの目標設定について、お聞かせいただけますか。

篠塚:当社の採用目標の設定は、以前は数のみでしたが、それでは不公平感があると今年の1月にポイント制度を導入しました。縦軸に採用者のジョブレベル、横軸に採用手法の難易度をポジショニングし、ポイントを決めています。私たちは空いたポジションを埋めるだけでなく、そこで採用ノウハウを蓄積したい。そこで外部に頼るばかりにならないよう、マーケットを意識して自ら動くことでポイントが増えるようにしています。

多田:紹介案件は多いと思いますが、なぜ内製化されるのでしょうか。

篠塚:ポイントは二つあります。一つ目はボリューム対応です。エージェントから紹介いただいく採用数は今後減るかというと、それはないと思います。しかし、そこに頼りすぎるのも危険。そこで、ダイレクト採用を広げたいと思っています。それにより、エージェントが見ない領域の人材も拾えるのではないか。新たな領域でよい人が見つかれば、その領域でエージェントに依頼することもできます。もう一つのポイントは、応募者と近い距離を保つこと。アマゾンに関してさまざまな記事が出ますが、エージェント経由ではなかなか本音が聞けません。生の声を聴くルートが必要と考えました。

小野:弊社では、リクルーターに「いつまでに何人」という指標化はしていません。採用もタレントマネジメントの入り口ですので、定期的に人材委員会でモニタリングしています。その中での充足度合いを見るということです。採用だけを切り出して、KPI化することはありません。

多田:あえて手法を広げている理由は何でしょうか。

小野:以前は人材紹介を利用していました。ビジネスのポートフォリオを大きく変えようと舵を切ったのが4、5年前。そうなると通常の採用手法では採りにくくなります。戦略に合わせて人材の素養を考えると、エージェントだけではかなり限定されてしまう。そこで、自分たちがマーケットをよく知るところならば積極的に出て人を探そう、業界動向を見て人員縮小傾向の場があればそこにアプローチしよう、としています。日本には潜在的な転職希望者が相当数いるというデータを聞き、どうすればそんな人と会えるかと考えるようになりました。

多田:上層部との軋轢はなかったですか。

小野:ポジションがないのにカジュアルに面談するのはどうかという声は確かにありました。そこで、どこにはまるかわからない、どういうマッチングがあるかわからないという観点をオープンにした上で行うのであれば、候補者にもこちらにも双方メリットとがあると考えて行っています。

多田:本日は大変価値のあるお話が聞けたと思います。どうもありがとうございました。

本講演企業

株式会社ビズリーチは、企業が能動的に採用活動を行う「ダイレクト・リクルーティング」を提唱し、プロフェッショナル人材のデータベースの提供を通じた採用支援を主力事業としています。プロフェッショナル人材採用の「ビズリーチ」、若手優秀層採用の「キャリアトレック」の採用支援事業のほか、日本最大級の求人検索エンジン「スタンバイ」、人工知能×ビッグデータの採用管理ツール「ハーモス」などのサービスがあります。

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