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企業を成長させるキャリア支援のあり方
――「キャリア自律」と「組織活性化」を実現する

  • 本間 浩輔氏(ヤフー株式会社 上級執行役員 コーポレート統括本部長)
  • 中澤 二朗氏(新日鉄住金ソリューションズ株式会社 人事部専門部長/高知大学 客員教授)
  • 花田 光世氏(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事/慶應義塾大学キャリアリソースラボ/慶應義塾大学名誉教授)
2016.06.29 掲載
講演写真

改正された職業能力開発促進法が4月1日に施行され、キャリア開発、キャリア向上が労働者にとっての責任となると同時に、事業主もその援助を行うことが追加された。個々人のキャリア自律を支援していくために人事は何をすればいいのか。キャリア論に詳しいヤフーの本間浩輔氏、新日鉄住金ソリューションズの中澤二朗氏の両氏を迎え、キャリア自律研究の第一人者である慶應義塾大学の花田光世氏を司会に議論が進められた。

プロフィール
本間 浩輔氏( ヤフー株式会社 上級執行役員 コーポレート統括本部長)
本間 浩輔 プロフィール写真

(ほんま こうすけ)1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになる株式会社スポー ツ・ナビ ゲーション(サイト名:スポーツ・ナビ、現ワイズ・スポーツ)の創業に参画する。2002年同社が傘下入りした後は、ヤフー・スポーツのプロデューサー、 ピープル・デベロップメント本部長などを経て、2014年より現職。


中澤 二朗氏( 新日鉄住金ソリューションズ株式会社 人事部専門部長/高知大学 客員教授)
中澤 二朗 プロフィール写真

(なかざわ じろう)1975年、新日本製鐵株式会社(現、新日鐵住金)入社。鉄鋼輸出、生産管理、労働部門等を歴任。1988年、IT事業の人事部門に異動。2001年、新日鉄ソリューションズ株式会社(現、新日鉄住金ソリューションズ)の発足に伴い初代人事部長。現在、同社人事部専門部長。2011年からは高知大学客員教授を兼職。厚労省2013年度「高度外国人材の日本企業就業促進に向けた普及・啓発事業」有識者検討会、山口大外部評価委員、企業活力研究所人材育成委員会等の委員も務める。著書に『「働くこと」を企業と大人にたずねたい』(東洋経済新報社)、『働く。なぜ?』(講談社現代新書)、『日本人事』(共著、労務行政)がある。


花田 光世氏( 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事/慶應義塾大学キャリアリソースラボ/慶應義塾大学名誉教授)
花田 光世 プロフィール写真

(はなだ みつよ)南カリフォルニア大学Ph.D.-Distinction(組織社会学)。企業組織、とりわけ人事・教育・キャリア問題研究の第一人者。産業・組織心理学会理事、人材育成学会副会長をはじめとする公的な活動に加えて、民間企業の社外取締役、報酬委員会などの活動にも従事。経済産業省、厚生労働省の人材開発・キャリアの領域の研究会などに座長・委員として幅広く従事。「人事制度における競争原理の実態」で、第一回組織学会論文賞を受賞。主な著書に『働く居場所の作り方』(日本経済新聞出版社)『新ヒューマンキャピタル経営』(日経BP社)、主な論文に「人事制度における競争原理の実態」(組織科学)、「グローバル戦略を支える人事システムの展開法(上・下)」「コア人材の機能と条件」(以上「ダイヤモンド ハーバード・ビジネス」)などがある。American Sociological Review,Administrative Science Quarterlyといった海外の学術誌や国内の学会誌、人事分野の専門誌などに300本を越す論文があり、最近は、キャリア自律の推進、キャリアアドバイザーの育成などの活動に精力的に取り組んでいる。


花田氏によるプレゼンテーション:
ダイナミックプロセス型キャリアの展開

職業能力開発促進法の改正では、事業主に対しても、労働者の職業能力の開発および向上を支援するための、キャリアコンサルティング機会の確保とその他の援助を行う責任が生じた。まずは、キャリアとは一体何なのか。花田氏が見解を語った。

一般的にキャリアには、個々のジョブ、職務、スキル、知識などを積み上げて獲得していく外的キャリアと、自己実現など念頭に置いた内的キャリアがありますが、私は「ダイナミックプロセス型キャリア」という視点で、日ごろからの前向きな活動を行い続ける連続性がキャリアだと捉えています。ここでのポイントは、日々の活動、成長、チャンス、貢献を通して自分の責任や自覚が拡大していく気持ちを持ち続けながら、キャリアを積んでいくということ。キャリアとは、過去・現在・将来にわたる継続的な気付きを通して多様な可能性の発揮を多様な局面で実践し続けるプロセスであり、ライフスタイルの構築だと考えます。

継続的というのはいつまでなのでしょうか。年金構造を例に考えると、完全定年制が65歳になる2025年は年金を支払う人と受ける人のバランスで見ると、1.9人で1人を担うことになり、構造の維持が困難な状態に入ります。そうすると、雇用が70〜75歳に延長される可能性が高まります。従って、その年齢まで見据えた長期的なキャリア自律の実践に本人も努力し、企業もその支援を行うことが求められるようになります。

100人いれば100のキャリア自律があります。それに一つの制度で対応することは不可能ですから、基本的な人事の枠組みを作った上で、一人ひとりに対して合理的な配慮と支援で運用していくことが好ましいと言えます。従来型の企業主導の教育やモチベーション管理では困難であり、人事の仕組みを変えざるを得ません。

講演写真

そうなると、組織の活性化についても、従来型の金太郎飴型の一体感や硬直的なMBOの運用をベースとしたタイプによる指標では不充分であり、新しい活性化指標を作っていかざるを得なくなります。お手本としては、ここ数年に米国で起こっている、一人ひとりの積極的なキャリア自律の実践をベースに個人の成長とその支援に軸足を置く「パフォーマンス評価」が参考になると思います。GEもセッションCを見直し、10%の者は組織を去れ、というアップオアアウトの概念も変えてきました。また、組織にとって必要なスキルを組織が徹底的に教育するトレーニングから、個人が持っている能力を組織が積極的に活用し積極的に開発していく「タレントデベロップメント」への流れも見逃せません。

ディスカッション:キャリア自律に際して現場の課題

花田:キャリア自律が法的に動き始めて組織として対応せざるを得なくなっていますが、組織は今どういう状況にありますか。

本間:正直なところ、法律のことは強く考えていない状況です。けれども、自社が生き残り勝つためには、結果的にキャリア自律を行わなければならないと考えています。ポイントは、四つあります。一つ目は社員の意識の問題。キャリア自律が言われて長くなりますが、やはり難しい。たとえば、Jリーガーのセカンドキャリアで難しいのは、選手は数年経てば必ず引退するわけですが、現役中は引退後のことなど考えてはいられません。サラリーマンも同じで、キャリア自律のために、一歩踏み出そう、動こうと思っても動けない面があると思います。

二つ目は、それを支援するための上長の支援力です。上長が正しい上長力を発揮できていません。全ての上長がキャリアアドバイザーになるのは現実的ではありませんが、キャリア自律を促すために上長がどういう支援を行うのか。例えば、プレイングマネージャーだと上長は部下のことを構っていられません。この傾向はますます強くなっていると思います。三つ目は制度に関すること。たとえば、FA制度を使って自分の希望で組織を動けるようにしてキャリア自律を支援すると、配置に偏りが生じてしまう可能性があります。たくさんの社員が任期のある部門に異動しようとするからです。このように適性配置とキャリア自律のバランスは容易ではありません。ヤフーでは「才能と情熱を解き放つ」「異動は最大の人材開発だ」と自発的な異動をスローガンに挙げていますが、現実問題として悩ましいところもあります。

四つ目は教育に関すること。キャリア自律の研修も難しいですが、このような研修をすればするほど社員は要求過多になるという副作用もあります。キャリア自律的なことを言うほど「何でここに異動させるのか」と説明しないといけないような反応が起こってしまう。このバランスをどう取るかが問題になっています。この四つをどう磨き込んでいくかが、今のヤフーの課題です。

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中澤:結論から言えば、「日本的雇用の仕組みを使い倒せ」です。この国は、仕事経験のない新卒者を進んで採る国です。後ろ向きの人も一人前にします。また、欧米のように、エリート・ノンエリートの区分があるわけではありません。しかも、OECDもうらやむ雇用パフォーマンスの優れた国であれば、キャリア議論の前に、まずはこのシステムを使い倒すことを考える必要があるように思います。

とはいえ、課題もあります。このシステムの無限定的な働かせ方が、今、問題になっているからです。そのため私たちは、次の点に留意する必要があります。一つ目は、日本的雇用システムについて、しっかり理解すること。二つ目は、どんな仕組みにも功罪あるので、それを峻別すること。三つ目は、その良い面を伸ばし、悪い面を防ぐこと。良い面はふれず、悪い面は放置するでは、たまったものではありません。仕組みを活かすために授かった権利は行使せず、無用な濫用ばかりしていては、周りはいい迷惑。目もあてられません。

ディスカッション:従業員のディマンディング、キャリア権の行使

花田:本間さんにお聞きします。キャリア自律が動き始めた時に「それによって業績はどの位伸びるのか」「もうかるのか」という質問が経営者から出てくる可能性が高いと思います。その質問に対する回答は、従来型と異なる活性化指標も検討すべきで、グーグルやマイクロソフトなどでは、相互支援、相互啓発、価値創造といった指標への動きが急速に展開されています。ヤフーにも、そんな指標はあるのでしょうか。

本間:そのような指標はありません。僕は「企業がキャリア自律を行うためには、もうけに直結する指標が必要である」というような問いには、あまり意味を感じていません。定量的に評価できるからやるとか、やらないとかいう議論も時にナンセンスだと思います。

念のために言うと、僕は、指標が不要だと言っているのではありません。たとえば、今の項目が完全ではないと思いながらもES(従業員満足)を使っていますが、組織ごとにESに近い指標を作ってそれを上長にフィードバックするだけで、十分な効果があります。

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花田:次は中澤さんに質問です。今後はもっと個人が、積極的に自分自身の自己動機づけと自己のキャリア開発をやっていかなければいけないと思います。しかし現実的には、個人は組織から与えられてきたことを念頭に置いて、自分で仕事の壁や限界を設定してしまいがちです。個人の当事者意識と自己責任を育ませることについて、どうお考えでしょうか。また、キャリア自律を支援する機会の提供を受ける権利を行使しなきゃダメですよ、というところまで従業員の面倒を見るのは負担になると思いますが、ご意見をお聞かせ下さい。

中澤:お答えする前に一つ。私は、人は変化に対応していれば、成長は自ずとついてくると思っています。それでもそうならないとしたら、その理由は二つ。欧米のノンエリートのようにそもそも期待されていないか、期待されていてもやる気がない場合です。では、質問への回答ですが、私は、キャリア権はありうると思っています。会社がいくら長期雇用を維持したいと思っても、本人にその気がなく、成長努力も、変化への対応努力もしなければ、その願いはかなえられないからです。それを、キャリア権というかどうかは別にして、会社と本人とは、そのように互いに補いあう関係にあれば、その一翼を担うキャリア権をとやかく言う必要はないように思います。

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花田:人数が減らされている今の人事の陣容で、きめの細かいキャリア自律に対応できるのでしょうか。あるいは新しい組織活性化を組み込むとしたら、どういう運用法や枠を作れば良いと思われますか。

中澤:私はできると思っています。人事は、人事部だけでやっているわけではありません。上司と職場と人事は一蓮托生。人事がしぼんでも、それが即、人事機能の低下に直結するわけではありません。そもそも職場を活かす力は、一義的には職場にあります。長期観察・長期育成の起点は職場に決まっているからです。よって、そこさえ押さえておけば、後は分担の見直しの話。負荷が増えることは間違いありませんが、一方でその陣容減に伴うメリットもあるので、一概に悪いと決めつける必要はなく、後は工夫いかんだと思います。

花田:本間さんにご質問したいのですが、ピアコーチングという仲間同士が見合う相互コーチングはキャリア自律に有効だと思います。ヤフーではそれが文化になっているそうですが、どのような内容でしょうか。

本間:ピアと言えるか分かりませんが、フィードバックの本数、太さ、言い方を重視してきました。評価にもそういうものを多く入れていますし、文化として育てることも相当意識しました。SNSの浸透によって短い言葉でのコミュニケーションが主流になってきているため、場合によってはネガティブなフィードバックを正しい言葉で正しく相手に伝えることに関しては苦労しました。傷つく内容がないかのチェックも行いましたが、問題になったことはほとんどありません。

花田:キャリア自律、それをベースとした新たな組織の活性化を、側面から支援するさまざまなメカニズムを工夫しなければいけない、という難しい局面に差し掛かっています。継続的なキャリア自律に関して能動的に対処できる力を作りこんでいくことが、事業主、人事の責任だと思います。今日はありがとうございました。

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