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普通の人がリーダーになる! “脱カリスマ時代”のリーダーシップとは

  • 米倉 誠一郎氏(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授/一橋大学イノベーション研究センター 特任教授)
  • 中竹 竜二氏((公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/元 U20日本代表ヘッドコーチ/株式会社TEAM BOX 代表取締役)
2017.07.07 掲載
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日本の高度成長期、カリスマと呼ばれる経営者たちは企業をけん引し、大企業へと成長させた。しかし、カリスマのいない現代において、人事はいかに「普通の人」を有能なリーダーに育てるかという難問を突き付けられている。本セッションでは、「普通の人がリーダーになる時代だ」といち早く提言した法政大学・米倉氏と、「日本一オーラのない監督」と言われながら、早大ラグビー部を大学選手権連覇に導いた中竹氏が登壇。脱カリスマ時代におけるリーダーのあり方と、その育成方法について語り合った。

プロフィール
米倉 誠一郎氏( 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授/一橋大学イノベーション研究センター 特任教授)
米倉 誠一郎 プロフィール写真

(よねくら せいいちろう)1981年、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了後、ハーバード大学にてPh.D.(歴史学)を取得。1997 年〜2017年一橋大学イノベーション研究センター教授。1999年~2001年、2008年~2012年3月同センター長。2012年3月よりプレトリア大学ビジネススクール (GIBS) 日本研究センター所長を兼務。2017年4月より法政大学教授。現在、法政大学の他に、Japan-Somaliland Open University 学長も務め、2001年より『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼任している。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。著書は、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『脱カリスマ時代のリーダー論』(NTT出版)、『経営革命の構造』(岩波新書)、『2枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社)など多数。


中竹 竜二氏( (公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/元 U20日本代表ヘッドコーチ/株式会社TEAM BOX 代表取締役)
中竹 竜二 プロフィール写真

(なかたけ りゅうじ)1973年、福岡県生まれ。早稲田大学入学後ラグビー蹴球部に入部。4年次には主将を務め全国大学選手権準優勝。卒業後渡英し、レスタ―大学大学院社会学部修了。01年株式会社三菱総合研究所入社。06年早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、07年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。10 年4月より日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。12年度はラグビーU20日本代表監督を兼任。日本における「フォロワーシップ論」の提唱者のひとりとして、次世代リーダーの育成・教育や組織力強化、成人向けの学びの環境づくりに貢献。企業コンサルタントとしても活躍中。主な著書に『自分で動ける部下の育て方—期待マネジメント入門』(ディスカヴァー新書)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)など。


米倉氏によるプレゼンテーション:脱カリスマ時代のリーダー論

米倉氏は、新たなリーダーが出現することへの期待から話し始めた。

「小さな力でも、それが集まれば総和以上の力を出せる。最近は『創発』がキーワードです。すごいリーダーが出てきて、皆をまとめてくれるといいのですが、それはなかなか難しい。だから、誰もがリーダーにならないといけないし、普通の人も、いつだってリーダーになれるように準備をしなければいけない。しかし、それを実現するのはなかなか難しいですね」

では、リーダーには何が求められるのか。米倉氏はその一つとして「ぶれない軸」をあげる。決断を迫られるのは、「白か黒か」という状況よりも、むしろ、グレーな状況の方が多い。そのとき頼りになるのが「ぶれない軸」だ。そして二つ目は「評価基準」。自分の中にロールモデルを持つことも大事だ。

「ドラッカーがいいことを言っています。生まれながらのリーダーはいない。何がしたいかではなく、何をしなければならないのかを考えることで、自分の本当の仕事は何かが見えてきます」

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次に米倉氏は、リーダーシップを発揮する際に重要なことについて解説した。一つ目は「ビジョン構築力」だ。

「リーダーは、達成すべき目標を明確化しなければなりません。目に見えるような未来を描き、語りたくなるようなワクワクする方向性を示す。そして数値にできないような目標、夢の共有を行う。また、自分がどう思うのかではなく、皆はどう思うのかを、それぞれに考えさせることも重要です」

しかし、ビジョンだけでは一歩踏み出せない。そこで、二つ目は「目標設定能力」だ。目標へのステップにおいて、具体的な指示や的確なコミュニケーションを行う。

「リーダーは意味なく否定するのではなく、まずほめること。その上で、明確な目標を提示します。また、どのようなステップで進むのかを、具体的に指示する。ここでの指示が具体的であればあるほど、評価基準も見えてきます。ステップが明確だと部下は『この人と働くと働きやすい』と思ってくれる。それこそが、リーダーシップです」

リーダーシップの重要な要素の三つ目は、制度・モチベーション設計能力だ。

「日本電産の会長である永守重信さんが、いいことを言っています。『日本人の能力・体格差などはあまり変わらない。しかし、モチベーションが100倍違うことはあるんだ』と。だから強い組織にとってモチベーションをどうつくるかが、制度設計では大事なのです」

米倉氏は、適材適所とインセンティブの設計が重要だと考えている。しかし、誰もがこの「材」を意外によく知らないという。

「皆さん、自分の上司、同僚、部下のことをどれくらい知っていますか。その人の家族の誕生日や家族構成、卒論のテーマ、得意・不得意分野を把握できているでしょうか。相手を知ることは大事なことです。その人にプライベートなひと言をかけるだけで、モチベーションが違ってくるからです」

米倉氏は「自ら模範を示し、それを積み重ねるといいリーダーが生まれる」と語る。「リーダーはどこかにいるのではない。組織の細部の一人ひとりがリーダーである」という言葉で、米倉氏はプレゼンテーションを締めくくった。

中竹氏によるプレゼンテーション:カリスマVS凡人で考えるリーダー像

中竹氏は自身を例に、カリスマではないリーダーについて述べた。中竹氏は早稲田大学ラグビー部で、3年生まで公式戦に一度も出場しないまま主将になった。大学選手権では準優勝。その後、社会人として働いているときに突然、早稲田大学ラグビー部の監督だった清宮克幸氏から後任に指名され、監督に就任した。

「監督にはなりましたが、部員は皆、私のことをを信頼していませんでした。就任初日には『日本一オーラのない監督』と言われ、部員は不安と不満が溜まってため息ばかり。私は怒らないので、選手も調子に乗るんですね。ある選手は目の前で『中竹、辞めろ』と言ってきました。この選手をコーチ陣は辞めさせようとしましたが、私は話をしてなだめ、メンバーとして一緒に頑張った。結果、4シーズンのうち2シーズンで優勝することができました」

中竹氏は自分を凡人だと言う。しかし、凡人でもリーダーシップを教えられる理由は、「カリスマとの差を知っているから」と語る。

「カリスマVS凡人。差はありますが、その差は近づけるものだと思っています。多くの人は『優れているか、優れていないか』でリーダーを語りますが、私はそもそも、そんなふうに意識していません。誰もが正しい答えを求めたがるし、それがあるように振る舞いがちですが、私の世界観ではそんな解は存在しない。ソクラテスも『人間は完璧ではないから、できないことをきちんと知ろう』と言っています」

4年間、中竹氏と共に日本代表を指導したエディ・ジョーンズ氏も「唯一正しい解はない」と語っていた。ジョーンズ氏は「どうやったら勝てますか」と聞くコーチに「そんなことを聞く時点でコーチ失格」と言っていたという。しかし、人は尊敬する人が現れると、その人に唯一の答えを聞こうとするものだ。

「これは人間の習性ですね。なぜなら、自分が楽だからです。企業でもトップダウンの組織は楽ですよね。それほど、考えることは大変なのです。しかし私は、リーダーとは『考えることを行う人』だと思っています。その人の能力が低かったとしても、人よりも考え続けることで対抗できるのです」

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リーダーは自分が動くより、その仕事を他に任せてでも時間をつくり、考えなければならない。唯一正しい解がない状況に立ち向かうことが、リーダーの役目だ。

「『戦法に絶対はない』という言葉があります。唯一正しい解がないのであれば、より正しい解を探し続けることはできるのではないか。そして、自分でこうと決めたらやり抜く。結果が出るまでは、批判されることはあると思います。私も早稲田大学ラグビー部の監督して結果が出るまでの2年間、批判されました」

しかし中竹氏は、批判をポジティブに受け止めると語る。それが批判した人物との関わりの始まりならば、それ以上関係が悪くなることはないからだ。これから関係がよくなると信じて、現状を打開する。リーダーと組織の関係においても、それは同様だ。

「リーダーが変われば組織も変わる、ということです。まず、リーダーから変わらなければいけない。カリスマでない凡人は、コツコツ頑張るしかないわけです。しかし、これは偉大な努力だと思います」

ディスカッション:凡人をカリスマに近づける手法とは

米倉:中竹さんは、コーチのコーチングも行われていますね。

中竹:コーチが成長しようと思えば、自分のことを振り返らなければなりません。でも、私が面談しても、チームと選手の課題しか言わないコーチが多いんです。「この1年で、あなたの何が成長したか」などと普段はほとんど聞かれないので、答えられないのです。しかし世界の優秀なコーチは、自分自身に相当向き合っています。自分で見えないところはちゃんと他者からフィードバックをもらい、自分で自分を成長させている。ポイントとなるのは、試合の勝ち負けではないんですね。オリンピックの優秀なコーチの特徴の一つは、勝利を強調しないところです。そして、自分に対して成長意欲があるという点。「自分のことが見えない」という大前提を、リーダーになる人がどれだけ理解できるかは大変重要です。私はこのコーチを育てていくノウハウを、ビジネス界でも活用できないかと考えています。

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米倉:人事部であれば、人を成長させる前に人事部がどれだけ成長したかを問わないといけない、ということですね。リーダーシップやコーチングの科学は、かなり進んでいます。スポーツの世界はもちろんですが、マネジメントの世界でも、今後は科学的思考が積極的に取り入れられていくでしょう。科学的なアプローチはカリスマには必要なくても、普通のリーダーには必要なことですね。

中竹:これまでは、コーチングやマネジメント、また人材育成の分野は、上に立つ人の経験値や人望、勘といったものにかなり頼ってきたと思います。しかし、それはもう限界に来ています。特に理論は再現性を持たせてくれるので、誰でも簡単にチャレンジができるでしょう。私は普段よく、「コーチもきちんと理論を学んで成長しましょう」とアドバイスしています。

コーチングの話で面白いのは、コーチをどのように選び、どう育成するかという評価シートの中身です。私は16項目で使っていますが、この項目の中でラグビーやサッカーなど、スポーツの専門的な項目は25%以下しかありません。昔は専門的な能力も多く評価されましたが、今では「マネジメントできるか」「きちんとコミュニケーションが取れるか」といったビジネスでも使えるような項目が使われています。私は、プロ野球チームのコーチの指導を4年担当しているのですが、ラグビー出身でそれができているのは、専門以外のところを期待されているからです。

米倉:実はこの間、企業株価の時価総額のトップテンを日米で比較しました。日本のトップはトヨタ自動車で20年前と同じですが、驚いたのは、NTT、NTTドコモ、JT、日本郵政、ゆうちょ銀行と、かつて公営だった企業がずらりと並んでいたこと。これに対して、米国は1位アップル、2位グーグル、3位マイクロソフト、そしてフェイスブックにアマゾンと、未来を引っ張っていく企業が並んでいる。これを見たときに、昔の遺産で食べているような日本はもう終わりだ、と思いました。今こそ、組織の隅々に一人ひとりがリーダーの自覚を持った人材を配置し、新しい産業を創っていかなければならない。そのためには、偶然に頼るようなカリスマリーダー待望論を廃して、社会や組織全体を底上げしてくれるようなリーダー育成法が必要なのだと思います。本日はありがとうございました。

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