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激変する時代を乗り越える、グローバル人材戦略の“未来像”

<協賛:コーナーストーンオンデマンドジャパン株式会社>
  • 髙倉 千春氏(味の素株式会社 グローバル人事部 次長)
  • 有沢 正人氏(カゴメ株式会社 執行役員経営企画本部 人事部長)
  • 白木 三秀氏(早稲田大学 政治経済学術院 教授/トランスナショナルHRM研究所 所長)
2017.06.21 掲載
コーナーストーンオンデマンドジャパン株式会社講演写真

グローバル化が加速し、テクノロジーが進化する中、人事にはどのような課題が待ち構えているのか。また、これからのグローバル人材戦略はどうあるべきなのか。企業のグローバル展開に関する研究の第一人者である早稲田大学の白木三秀教授の司会のもと、歴史ある日本企業を短期間でグローバル企業に改革した、味の素の髙倉氏、カゴメの有沢氏がそれぞれの取り組みを紹介した上で、グローバル人材戦略の“未来像”について語りあった。

プロフィール
髙倉 千春氏( 味の素株式会社 グローバル人事部 次長)
髙倉 千春 プロフィール写真

(たかくら ちはる)1983年、農林水産省入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown 大学へ留学し、MBAを取得。1993年からはコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などにともなう組織構築、人材開発などに関するコンサルティングを担当。その後、人事に転じ、1999年ファイザー株式会社、2004年日本べクトン・ディキンソン株式会社、2006年ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年7月に味の素株式会社へ入社し、2016年4月から現職。味の素グローバル戦略推進に向けた、グローバル人事制度の構築と実施をリードしている。


有沢 正人氏( カゴメ株式会社 執行役員経営企画本部 人事部長)
有沢 正人 プロフィール写真

(ありさわ まさと)1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。 銀行派遣により米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年にHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のHOYAグループの人事を統括。全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。また委員会設置会社として指名委員会、報酬委員会の事務局長も兼任。グローバルサクセッションプランの導入等を通じて事業部の枠を超えたグローバルな人事制度を構築する。2009年にAIU保険会社に人事担当執行役員として入社。ニューヨークの本社とともに日本独自のジョブグレーディング制度や評価体系を構築する。2012年1月にカゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメ株式会社の人事面でのグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月より現職となり、国内だけでなく全世界のカゴメの人事最高責任者となる。


白木 三秀氏( 早稲田大学 政治経済学術院 教授/トランスナショナルHRM研究所 所長)
白木 三秀 プロフィール写真

(しらき みつひで)1951年滋賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国士舘大学政経学部助教授・教授などを経て、1999年より現職。現在、国際ビジネス研究学会会長を兼任。主な著作に、『国際人的資源管理の比較分析』(単著、有斐閣、2006年)、『グローバル・マネジャーの育成と評価』(編著、早稲田大学出版部、2014年)などがある。


海外売上比率と人材育成の相関性

最初に、本セッションの問題意識として、白木氏がリサーチ内容を紹介した。

「海外のローカル人材に経営資源を投入して育成していくことは、現地法人の採用力やモチベーション向上にも直結する重要なテーマです。『日本の本社が海外現地法人において、人材育成にどれくらい関与しているか』を調べたところ、海外売上高比率と強く相関していることがわかりました。今後、海外生産比率の高い企業では、どういう形でHRMシステムを適応して動かしてくかが、大変重要な課題になります。味の素、カゴメとも、ローカルの状況に合わせることが重要な食品を扱っています。つまり、グローバル展開を行いながら、ローカル適応も同時に実現させる、という難しい課題に向き合っているのです。本日は両社の事例を通じて、これからのグローバル人材戦略について考えていきましょう」

髙倉氏によるプレゼンテーション:
グローバル共通のプラットフォーム構築

まずは味の素の髙倉氏が、ここ3年で作ったというグローバルプラットフォームについて語った。

「味の素では、海外売上高比率が5割を超え、今まで通りローカルに任せたグローバルポリシーでは立ち行かないと考え、グローバルプラットフォームを作りました」

味の素は世界の食品業界において営業利益ベースでトップ30クラスに位置し、2020年までにトップ10入りを目指している。そのためには、人事制度のグローバル化戦略が欠かせない。しかし、3年前に外資系企業から入社した髙倉氏は、五つのことに驚いたという。

「一つ目は、将来の戦略に合った適所適財を実施する仕組みが不充分ということ。二つ目は、一つ目の仕組みづくりのためにはポジションの要件が必要ですが、どんな戦略から来てどんな職務要件と人財要件がいるのかが不明確だったこと。これら二つに対しては、職務要件と人財要件の明記、タレントマネジメントを実施。ポジションマネジメントとタレントマネジメントの両輪で、グローバルの人事制度の根幹を司ります。管理職1400ポジションの職務記述書、約200のグローバルのキーポジションの職務要件を作り、全員が見えるようにするためHRITに入れました。『やりたいポジションがあったら、これを見てください』『これに成長のヒントが書いてあります』というメッセージを込め、オープンにしたのです」

三つ目は、多様性の定義が必要な状況だったこと。女性や外国人視点ではなく、一人ひとりの個性や強さに着目するようにした。四つ目は、戦略実行のスピードの遅さ。決定者もわかるよう、ガバナンス上の決定プロセスを明確化した。五つ目は、変革を推進する上での味の素のDNAが不明確という点。これについては、人事施策に「らしさ」が反映されるべきだと髙倉氏は考えた。

講演写真

「次世代リーダーの要件の定義」は、2年前に役員全員に考えてもらったという。その中で着目すべきフレーズは「複雑な状況への対処」「あいまいな状況への対応」だ。今後、不確実な変化が起きる中で、それを処理できなければ、将来の味の素を担えないからだ。

「タレントマネジメントは、本社、各地域本部、海外法人が同じ形で人財会議を開き、Future Leadeship Competency、Sustainable Performanceの両軸で人財をポジショニングします。戦略を司る重要なグローバルキーポジションは共通ルール、また、基本ポリシーはグローバル共通としながら、ローカルの状況に即した運用にするため、各法人の運用裁量に依存する、という方針を決定しました」

ここで髙倉氏は、今考えるべき「人財マネジメント変革の課題」を六つ挙げた。一つ目は、将来の市場変化をふまえた人財要件変化への納得。二つ目は、単なる性別や国の違いではない“個”を尊重する多様性の受容。三つ目は、シンプルでクリアな統一ルールと現地への権限委譲。四つ目は、新しい価値創造(失敗も含めて)を称賛できる風土醸成。五つ目は、上下にとらわれず、自分でSpeak upし、Self-learningし続ける風土醸成。六つ目は、変革を進めるチーム作り(新人×変人×強人)で目標を達成すること。「売上を上げて勝っていくことにやりがいを持てなければ、グローバルの中では勝てません」と、髙倉氏はプレゼンテーションを締めくくった。

有沢氏によるプレゼンテーション:
グローバルへテイクオフにはインフラ作りから

続いて有沢氏が、グローバル化をこれから進める企業にフォーカスし、何を考えながら取り組めばいいのかについて語った。

「グローバル化には段階があり、それに応じた人事施策があります。第一段階は、現在のカゴメが該当します。海外各地域のトップの権限が強くてローカル主導、ローカル最適。それを、バラバラで行っている状況です。第二段階は、ローカルと事業分野の戦略が組み合わさり、双方のトップが両輪で意思決定できる状況です。第三段階は、現在の味の素がそうだと思いますが、かなりグローバル化が進んでいる状態。人事や財務や本社管理機能がグローバル本社的役割を果たし、事業の役目を超えて、ローカルと本社が一体となって動いています。第四段階は、海外各地域と本社の経営判断がローカルに適した判断を行ってバランスをとり、自律的に動いている状態です」

有沢氏がカゴメに入社して5年の間に、海外売上比率は3%から25%に上がったが、現在は、第二段階にテイクオフしている状況だという。

「私がカゴメに入ったとき、海外拠点は今の半分以下。そんな中、グローバル人材に取り組んだのですが、トップの意思決定という後押しなしには全く進みません。仕組みが整わないとグローバル化は進まない、という点も重要です。例えば、グローバルで統一した人事評価、人材調達・育成制度です」

そこで、中期計画の最初に「グローバル人事制度の導入」を置き、人事の重要性を示した。まずは、Pay for Performanceという「頑張った人が報われる」方針のもと、人事評価制度に取り組んだという。

「役員評価制度もなく、海外CEOの報酬体系も、評価システムもバラバラ。そこで、財務、オペレーションなど、BSC視点を五つ作り、新しい評価制度や報酬制度を海外からスタートさせました。成功体験を積み重ねて共通化させたのです。それから、職務の大きさや重さの共通基準を作りました。このジョブ・グレードも、海外のほうが導入は先です」

講演写真

「グローバル人材の定義」に関しては、グローバル化の段階により異なる、と有沢氏は考えている。例えばトヨタと、中国にだけ工場を持つ企業とでは、人材育成の仕方がまったく違うため、定義は異なる。

「カゴメでは、ファンダメンタル(基礎的事項)なところから着手しました。あとはメリハリの利いた評価が大事です。少し強引に、相対評価に近い制度を作りました。評価と報酬と職務が一直線上に並ばないと、齟齬(そご)をきたしてしまいます。評価があいまいでは意味がありませんし、評価だけ統一しても運用できなければ問題です。インフラを作って、今は第二ステージ。どんなグローバル人材がいつまでにどれぐらい必要かという見極め、戦略分析をより詳細に行うためのグローバル人材の見える化、必要な時に必要な人材を配置できるスキルマップの作成を行っています」

ここで有沢氏は、人事制度改定のポイントを三点挙げた。

「まずは、Pay for Job。年功型から職務型等級制度への移行です。これによりグローバルとの互換性が高まります。次にPay for Performance。業績評価と報酬制度はリンクするということです。最後はPay for Differentiation。メリハリを付けた明確な処遇の実現です」

経験上、新制度は海外から導入するのがコツだという。

「『海外でできるのに、なぜ日本ではできないのか』となり、制度に対する抵抗感も和らぐからです」

ディスカッション:
ポスト・マン・インテグレーションとダイバーシティ環境

白木:お二人に共通しているのは、人事部長として前面に立って動かしていること。要するに、オーナーシップを発揮している、ということですね。ここでおたずねしたいのは、M&Aによって採用した人材をどう動機付けし、インテグレートしていくのか。多くの企業は買収しても元の経営のままのようですが、これは海外の基準からすれば、考えられないことです。

講演写真

髙倉:これまでM&Aした企業では、幹部ポジションに新たな人財を求めるケースが多くありました。その場合、現地で採用しなければなりませんが、大事にしていることがあります。まずは、味の素の企業風土や価値観に共感しているか、ということ。さまざまな仕事を一緒に乗り越えるためにも、この基軸が重要です。それから、どのように入社後、自己成長できる機会があるかを伝えています。

有沢:私の過去のM&Aの経験からすると、国内の合併の場合、人事制度は早く統一した方がいいと思います。海外の場合は、一国二制度を2年間取るようにしています。海外のCEOをリスペクトして、日本からは最小限の人数だけ送ります。海外の自律性を高め、カゴメのメンバーになったことを受け入れてもらうための期間を設けるのです。

白木:では、海外の人たちを受け入れて活躍してもらうために、ダイバーシティの環境をどう整えているのでしょうか。

髙倉:日本で200人、海外で100人のキーポジションや部長職の継承者をHRITに載せて、「この300人は自社のまさに資産です」「育てるのは各上司、幹部の大きな役割です」と社長に言ってもらっています。最終的には“人を求めてやまず、人を活かす”という自社のDNAに基づき、社員一人ひとりの特性を活かせる、組織風土の醸成を目指しています。

有沢:ダイバーシティについては日本の方が遅れているので、海外の人たちに「あなたたちの考えを取り入れたいんだ」というスタンスでいくといいと思います。日本に輸入するという形を取ると、海外と日本との融合もうまく進みます。

白木:現地法人の人材育成に手をつけていない企業にその理由をたずねた結果、エグゼクティブにしてもマネジメントにしても共通する回答は「対象者がいない」ということです。海外現地法人の抱える一番の問題は「いい人が来てくれないこと。来てくれてもいい人から辞めること」。この二つは関連しています。人材育成をしないと、ますます人材が枯渇する悪循環に陥ってしまいます。今日のお二人のお話は、グローバル人材戦略の未来像を示してくれたと思います。ありがとうございました。

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