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「P&G式リーダーシップ」 控え目女性社員が開花する! 3つの戦略×5つの行動指針

  • 杉浦 里多氏(株式会社ディリス 代表取締役社長/WisH株式会社 プロフェッショナルパートナー)
2017.06.21 掲載
WisH株式会社/リ・カレント株式会社講演写真

女性活躍推進に取り組む企業は多い。しかし、リーダーシップという言葉に戸惑い、能力を発揮することに積極的になれない、控え目な女性社員も少なくない。そういった女性の力を引き出し、リーダーシップ力を伸ばしてもらうためには、いくつかのポイントがある。女性活躍推進を軸として研修、講演などを幅広く行っているWisH株式会社のプロフェッショナルパートナーであり、株式会社ディリスの代表取締役社長である杉浦里多氏が、P&Gで身につけた女性活躍のための戦略と行動指針を紹介した。

プロフィール
杉浦 里多氏( 株式会社ディリス 代表取締役社長/WisH株式会社 プロフェッショナルパートナー)
杉浦 里多 プロフィール写真

(すぎうら りた)上智大学卒。銀行系リース会社にて法人営業を経て、LVMHグループにて宣伝広報に従事。P&Gジャパンにて、インフルエンサーマーケティングマネージャーとして多くのブランドのコミュニケーション戦略や、新規組織の確立にも寄与。シニアスーパーバイザーとして各部署に社内コンサルティングや教育的関与等を行う。


「働きやすさ」と「活躍しやすさ」は違う

WisHはダイバーシティ、女性活躍推進といったテーマを軸に、多くの企業に対してコンサルティングや研修を提供している。主に女性のリーダー育成をテーマに講師として登壇している杉浦里多氏は、外資系をはじめ、さまざまな企業での宣伝広報などの経験を持つ。リーダー輩出企業、女性活躍企業として知られているP&Gに中途入社した当時の発見から、杉浦氏は語り始めた。

「私はファッションブランドに長く勤めていたので、センスや本社の意向を重視する風潮に慣れていました。ところがP&Gに入社すると、そのやり方では誰も納得してくれないことに気付いたのです。ではどうしたらいいのかと考え、身に付けたのが戦略思考力、コミュニケーション力、そして今日のテーマであるリーダーシップ力です。これらの力は、仕事で成果を出すことに役立つのはもちろん、プライベートでも活かせることに気付きました」

働きやすさを実現している企業は多いが、なぜ思うように女性が活躍できていないのか。杉浦氏は「働きやすさ」と「活躍しやすさ」は違うと言う。「働きやすさ」を整えても活躍できるとは限らず、もっと「活躍しやすさ」を考えるべきだというのだ。

「そのためにはまず、甘やかしすぎないことです。女性に気を遣い過ぎているケースが多いように感じます。研修の際に聞いてみても『もっと仕事をしたいです』『上司が気遣って仕事をセーブされます』という声があります。女性といってもそれぞれ状況は違いますから、まずは本人がどう思っているのか、上司の方は対話の中から聞き出さなければなりません」

育休などの制度の導入や奨励も大事だが、復帰した時にどう活躍できるのか、どんなキャリアを描けるか、どう会社に貢献できるのか、と考えられるような環境整備が大切だと杉浦氏は語る。そのためには、平等な制度よりも公平な評価にこそ気を遣わなければならない。

「P&Gでは出産後に、短時間勤務とフルタイム勤務の選択肢がありました。短時間勤務の場合は求められる成果レベルも低く設定されるので、当然昇進も遅れることになります。フルタイム勤務であれば、そうなりません。公平に選択ができ、公平に評価されるのです。また、女性たちにロールモデルになるよう促すことも重要です。研修の際に、ロールモデルを挙げて下さいと語りかけても、残念ながらなかなか反応がありません。そのため、後に続く女性のためにも、『自分がロールモデルになる方法を考えてください』と伝えています」

講演写真

女性のリーダーシップを強化、活躍するための三つの提案

ここで杉浦氏は女性活躍のための戦略を三つ提案した。一つ目は「女性のリーダーシップ強化」だ。「私にもできるんだ」と自信をつけさせ、「もっと活躍したい」という意識を醸成し、行動を変えていく。そのために重要なのは、スキルよりもマインドチェンジだ。女性はスキルを身に付ける際に「それをやるのも、どうなのか」「なんだかイヤだな」などと考えがちなため、それをうまく取り去るための意識・行動変革を教育や研修で行うことがポイントになる。

「心の壁は、講座を一日受けるだけでも変化します。例えば、受講前の意識レベルが5点満点中で3以下が多数を占め、1が約80%もあった会社でも、研修後にほとんどの人の意識レベルが上昇しました。前向きなコメントも出ました。肝となるのは、自信とビジネスマインドです。自分の仕事はビジネスの成果、組織の成長につながっているという意識・思考、そして本人に主体性を持たせることが重要です」

杉浦氏の研修プログラムでは「“らしさ”を活かすリーダーシップ力」を必須として講座を開いている。自己紹介からたっぷり時間を取って自己開示できるようにし、最後にはワークを一緒に行ったグループの中で褒め合う時間を設けて自信を付けてもらい、心の壁を取り払う。

「P&Gでは、リーダーシップを『先頭に立つこと』と定義していません。新入社員からリーダーシップを発揮しろと言われ、査定項目はリーダーシップだけです。ではリーダーシップとは何かと言うと、影響力です。もっと言うなら、影響力を与える行動ができるかどうかというスキル。何に対しての影響かと言うと、ビジネスの成果、あるいは組織の成長です。『影響』を『貢献』と言い換えると、リーダーシップが身近に感じられるのではないでしょうか。その人が人や組織やビジネスのために貢献しているのであれば、リーダーシップを発揮していることになります。すると、『私にもできる』と思える。この気持ちがとても重要です」

また、「男性とは違う視点で女性が身につけるべきスキル習得のため」をテーマとした講座の一部が紹介された。

「例えば『パワーコミュニケーション』です。パワーという言葉には、人との関係づくりだけではなく、ビジネスに成果を出すための視点が込められています。そのための論理的な話し方や上手な形で主張することを身に付けることができます。もう一つ、『時間デザイン力』は、成果を出すために自分の貴重な時間をどこに投資するのかという考え方です。仕事の時間デザインだけではなく、女性の人生の長いライフステージを考えながら、その中にキャリアをどう組み込んでいくのかという視点も欠かせません。次に、女性が比較的苦手な傾向にあるのが『成果と評価をあげるコラボレーション』です。ここでは、戦略的にネットワーキングする、セルフプロモーションする、といった内容を必要性に応じてお伝えしています」

上司のダイバーシティマネジメント強化と場づくり

女性活躍のための戦略の二つ目は「上司のダイバーシティマネジメント強化」だ。女性が研修を受けて変わっても、職場に戻った時に上司の理解がなければ、やる気をなくしてしまう。従って、上司がダイバーシティの中で女性の必要性について考え、マネジメントしていくことが大事になる。P&Gでも女性活躍推進を全社で行う際には、上司のマネジメントが徹底されていたという。上司の理解こそが女性活躍推進の鍵になると言える。

「上司向けの講座である『“らしさ”を活かすリーダーシップ力』は、上司と女性の部下とがペアになって参加する、というものです。それぞれが持つべきリーダーシップ行動が相互で理解できるほか、リーダー像も共有できるようになります。日常的な対話が不足しがちなケースが多いため、お互いを改めて認め合える効果は大きいですね。次に『ダイバーシティマネジメント』では、多様な価値観を持つ人たちをどうマネジメントしていくかについて考えます。これからのリーダーシップは変革型だと言われますが、これは変化に対応し、人を見ながらマネジメントできるリーダーを目指すプログラムです。まずは人にある、それぞれの違いを実感することから始め、それを受容し、マネジメントするためのコミュニケーションアプローチがメインとなっています」

女性活躍のための戦略の最後は、「女性活躍の具体的な場づくり」だ。座学やOJTで学んだ後に実践する場を意識的に設け、そこで成功事例ができれば効果も高まることになる。

「女性ばかりを集めて何かをするのは、いいことばかりではありませんが、一度取り組んでみてもいいのではないかと思います。女性オンリーというチームもありますし、男女ミックスのプロジェクトを立ち上げて、その中でリーダーシップをとるのが女性ということもあります。あるいは、リーダーは男性で、その会自体を毎回進めるファシリテーター役を女性のリーダーにやってもらう方法もあります」

例えば、お客様の声を聞いたり、考えを汲み取って、商品サービスに反映することが得意である女性のよさを生かそうと、女性が中心となって新しいブランドを作る場を設けたメーカーがある。また、三つの異なる部署の連携を強化させるための方策や戦略をつくるチームを作り、そのファシリテーターに女性を指名して、チームのリーダーシップをとってもらったケースもある。

「女性が中心になって取り組んだという、自社愛を高めるための社員証徹底運動では、半年後に着用率がほぼ100%になったという話もありました」

最後に杉浦氏は、P&Gが設定している「5E」という五つのリーダーシップ行動指針を紹介した。一つ目は「Envision」だ。ビジョン(未来)を描くこと。ポジションが上になるにつれ強化していきたい力だ。二つ目は「Engage」で、コラボレーションすること。いかにビジネスに貢献できる協力体制を能動的に築いていけるかを踏まえることが重要になる。三つ目は「Energize」。やる気を引き出すことだ。個人的な引き出しだけでなく、周りの人たちの活性化も含んでいる。四つ目は「Enable」で、パフォーマンスをあげることだ。女性は後輩の育成や組織を育てることは得意分野と言われており、より意識したい点といえる。最後の五つ目は「Execute」。成果をあげる、実践をすること。PDCAはPから始まるが、GPDCAとし、まずゴール設定を明確にしてから回すと、成果に対する意識も高まる。

「女性がさらに活躍していくには、女性自身が変わることが大切です。もっと欲張っていいのです。そうすれば、仕事もプライベートも思いが実現できて相乗効果も生まれます。自分の人生をよりハッピーにしていくためにも、職場でぜひ、リーダーシップを発揮してください」

※本講演の内容は、杉浦氏がP&G在籍時の経験に基づくものであり、現在のP&Gの方針とは異なる可能性もありますので、ご了承ください。

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