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「ダイバーシティ&インクルージョン」をどのように推進すればいいのか?

  • 臼田 美樹氏(P&Gジャパン株式会社 ヒューマンリソーシス アソシエイトディレクター)
  • 志水 静香氏(ギャップジャパン株式会社 人事部 シニア・ディレクター)
  • 白岩 徹氏(KDDI株式会社 理事 コーポレート統括本部 総務・人事本部 副本部長)
  • 矢島 洋子氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 共生社会室室長 主席研究員)
2017.07.03 掲載
講演写真

近年、「ダイバーシティ&インクルージョン」(多様性の受容と活用、D&I)の必要性に対する認識が広く浸透してきた。しかし、具体的にD&Iの施策を実行できている企業はまだまだ少ないのが現状だ。本セッションでは、D&Iに早くから取り組んでいる3社の人事がパネリストとして登壇。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島氏による司会の下、D&Iをどのように推進すればいいのかについて意見が交わされた。

プロフィール
臼田 美樹氏( P&Gジャパン株式会社 ヒューマンリソーシス アソシエイトディレクター)
臼田 美樹 プロフィール写真

(うすだ みき)1991年にP&Gジャパン入社、生産統括本部に配属。97年にシンガポールに異動し、生産統括本部のグローバルプロジェクトにアジア代表メンバーとして参加。その後、2002年よりヒューマンリソーシスに部門異動。シニアマネージャーとして、幅広い事業部の人事を手がけ、2011年より現職。現在はアソシエイトディレクターとして、営業統括部門・ブランド部門の人事を担当。2016年に発足したP&Gダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクトの主要メンバーとして、社外でも講演・研修を多数行っている。


志水 静香氏( ギャップジャパン株式会社 人事部 シニア・ディレクター)
志水 静香 プロフィール写真

(しみず しずか)大学卒業後、日系ソフトウェア・サービス会社に入社。入社とともに米国オハイオ州シンシナティ市に勤務。その後、複数の外資系IT企業を経て、1995年に米系自動車メーカーに転職。人事部にて職務評価、報酬制度設計などの主要プロジェクト業務に従事。1999年ギャップジャパンに転じ、採用、研修、報酬管理などをはじめとする人事全般の管理業務をプロジェクトリーダーとして牽引するとともに人事制度基盤を確立。2013年よりGap本社および店舗部門人事を統括。2013年3月、法政大学大学院 政策創造研究科雇用政策専攻。修士課程修了時に最優秀論文賞を受賞。非正規社員の能力開発、キャリア展開など非正規社員を中心とする雇用政策を研究中。


白岩 徹氏( KDDI株式会社 理事 コーポレート統括本部 総務・人事本部 副本部長)
白岩 徹 プロフィール写真

(しろいわ とおる)1991年に第二電電株式会社(DDI,現KDDI)に入社。支社、支店での直販営業、代理店営業、本社営業企画部、営業推進部、カスタマーサービス企画部長など営業/CS部門の経験を経て、2013年人事部長。2016年4月から現職。


矢島 洋子氏( 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 共生社会室室長 主席研究員)
矢島 洋子 プロフィール写真

(やじま ようこ)1989年 株式会社三和総合研究所(現MURC)入社。2004年~2007年 内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官。少子高齢化対策、男女共同参画の視点から、ワーク・ライフ・バランス関連の調査・研究・コンサルティングに取り組んでいる。内閣府「休み方ワーキンググループ」委員、文部科学省「女性の学びの促進に関する有識者会議」委員等を務める。中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。著作に、『ダイバーシティ経営と人材活用:多様な働き方を支援する企業の取組み』(共著、東京大学出版会)、『国際比較の視点から 日本のワーク・ライフ・バランスを考える』(共著、ミネルヴァ書房)、『介護離職から社員を守る』(共著、労働調査会)など。


臼田氏によるプレゼンテーション:多様性の受容と活用

はじめに、P&Gジャパンの臼田氏が登壇した。P&Gは世界約70ヵ国に10万5000人の従業員を抱える企業であり、D&Iに25年前から取り組んでいる。

「日本法人は現在、課長級以上に占める女性の比率が32%、社員の国籍数は19ヵ国です。私たちは、内面的なものなど目に見えないものも含めて、各々がもたらす違いを『ダイバーシティ』と考えます。組織に多様な人材をそろえるだけではなく、それによって得られた多様な違いを互いに理解し、認め、受け入れ、それをビジネスに活かしいく。それが『インクルージョン』です。それによって全員が最大限の力を発揮できる組織になれると考えます。そして、このことはビジネスを伸ばす経営戦略と捉えています」

同社がD&I推進に必要な三つの柱として掲げるのは、「多様性を尊重する企業文化」「多様な人材・働き方を支える制度」「多様性をビジネスに活かす社員のスキル」だ。

「一つ目の『多様性を尊重する企業文化』については、全ての層がD&Iの概念を理解することを重視しています。経営陣が経営戦略として掲げ、自らD&Iの概念を体現し、人事部門は、経営戦略の各部門への落とし込みを行い、知識・スキル習得の場を提供しています。そして社員一人ひとりが『D&Iは経営戦略=自分がやること』と理解し、個々の違いを『受け入れ・活用しあう』スキルを習得、実践している状況です。二つ目の『多様な人材・働き方を支える制度』については、『柔軟な働き方・制度=全員において成果が上がる働き方(生産性向上)のためのツール』と位置づけ、制度を整え、活用できるようにしています。三つ目の『多様性をビジネスに活かす社員のスキル』については、当社はD&Iの実践は、持って生まれた能力ではなく、学ぶことのできるスキルだと考えています。経営層向け、管理職向け、全社員向けなど、それぞれの階層や立場に合わせたトレーニングを用意し、全社員のインクルージョン・スキルを高めています。学んだことを実践ができているかどうかについては、社員満足度調査を行い、その結果を改善に活かしています」

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志水氏によるプレゼンテーション:あなたがあなたらしく働ける会社

次にギャップジャパンの志水氏が登壇。ギャップは世界90ヵ国で14万人の従業員を抱える企業だ。同社はエンゲージメントを高める人材戦略として、「Attract:優秀な人材をひきつける」「Develop:育成する」「Reward:報酬」の三つの柱を掲げ、活動している。D&Iについては、「ダイバーシティ=一人ひとりがユニークで異なること」「インクルージョン=多様な人材がお互いを認め合うこと」であると考え、経営戦略として取り組んでいる。

「私たちは、異なる考えや価値観、異なるスタイル、異なる知識を得て、より強い組織になり、競争力の強化を図りたいと考えています。そこで『YOU DO YOU:あなたがあなたらしく』をキーワードにこのテーマに取り組んでいます。

当社がD&Iにおいてポイントと考えることが四つあります。一つ目は『理念を支える文化・風土』。制度よりも風土が重要だと捉えています。二つ目は『ビジネス成果に結実』。D&Iに何のために取り組むのかをはっきりさせています。そして三つ目は『安心・安全な職場』です。人と異なる意見を自由に言える職場にすることを目指しています。四つ目は『人事が担う重要な役割』。D&Iはトップダウンでなく、人事と現場が一緒に取り組むものと考えています」

同社には、これらの理念を実現する制度と仕組みがいくつもある。たとえば、「ゼロ・ミーンズ・ゼロ」(一切の差別禁止)という方針があり、入社時に教育を受ける。「オープンドアポリシー」といって、何らかの懸念があったときには上司や人事にすぐ相談ができるポリシーがある。ほかにも「男女間での給与における差別禁止」「プロセスおよび達成した成果で評価」「エンゲージメントサーベイ(従業員意識調査)の実施」などを整えている。

そして、働き方においてもさまざまな制度を用意している。

「従業員が個々の価値観や自分のワークスタイルを反映させながら、成果を発揮し、キャリアの実現を促進する施策を今後も提供したいと考えています」

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白岩氏によるプレゼンテーション:多様な人財の活躍と働き方の両輪で推進

最後にKDDIの白岩氏が登壇した。KDDIは16の会社が合併・統合してできた会社。2013年には「KDDIフィロソフィ」を策定し、そこには「ダイバーシティが基本」を掲げている。

「私たちは、『多様な人財の活躍』と『働き方』の両輪で、D&Iを推進したいと考えています。『多様な人財』とは女性、障がい者、外国籍、LGBT、シニア。『多様な働き方』とは、労働生産性の向上、メリハリのある働き方、そして育児・介護との両立支援です。これらを両輪で進めています」

同社のD&Iへの取り組みは、2005年当時に行った「ジェンダーフリーの啓発開始」「在宅勤務トライアル」に始まる。2007年ごろに「社内横断女性活躍推進PJ設置」「ダイバーシティ推進室の設立」「特例子会社の設立」、2011年からは「役員補佐職の導入」「女性リーダー育成開始」「LGBT啓発開始」を行い、2016年からは「新女性ライン長プログラム開始」「障がい者職域拡大」に取り組む。

「女性活躍推進については、経営の意思決定の場に女性社員を増やし、役員補佐に女性も登用しました。女性ライン長登用プログラムでは、女性ライン長の増加に向けて、KPIを設けて進めています」

LGBTへの取り組みでは、LGBTの理解促進からアクションフェーズへと入り、理解促進のセミナー、eラーニングを実施。同社が提供するサービス「au家族割」に同性パートナーを適用し、採用募集要項の性別表記を廃止し、同性パートナーを「配偶者」とする社内規定も導入した。

そして現在は、インクルージョンへのステップアップを図っている。

「人を受け入れて活かすことによって持続的な効果を生み出し、成長戦略として確立させているところです。課題は、ミドルマネジメントの意識啓発。そのため、管理職向けeラーニングをスタートさせ、リーダー研修では啓発プログラムを実施しています」

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ディスカッション:問題解決に本気になるための心構え

矢島:本当に企業が求めている「ダイバーシティ」は、異なる価値観や経験などの内面的な多様性だと思います。しかし今は、従業員や管理職の女性比率など、外形的な多様性を進めることを一つの指標にしている企業が多い。本当に目指したいところと、実際に行っている取り組みとが異なっている可能性があります。

「インクルージョン」について言うと、例えば「女性の活躍」を、「女性ならではの仕事や女性の特性を活かした成果」によって示そうとする動きが企業だけでなく国にもあります。一方で、外国人雇用については、外国人の特性を活かしたいと言いながら、日本人と同じことができることが前提とする企業も少なくありません。多様性を受け入れる、活かすとはどういうことなのでしょうか。

属性のカテゴリーによって、ダイバーシティに関する考え方は異なるのでしょうか。また、先ほど示した女性と外国人に関するインクルージョンに、共通の解はあるのでしょうか。それらの問題に対するお考えも含めて、各社が目指すD&Iはどこにポイントがあるのか、お話しいただけますか。

講演写真

臼田:当社におけるD&Iの意義は、やはりビジネスと組織、双方の成長につながるものである、ということです。それを経営戦略として推進しています。もし組織が男性ばかりでも、一人ひとりで個性が違いますから、その違いを活かし合っていける環境をつくりたい。それが私たちの実現したいことであり、この状態を最高のレベルで達成したいと考えています。

志水:「ダイバーシティ」というと男性と女性、日本人と外国人などと二極化してしまいがちですが、それは違うと考えています。私たちの会社では「全ての人は一人ひとり違う」という前提があります。そのため、特に特定の層をターゲットとした数値目標はありません。では何のためのダイバーシティかというと、個々に違いがあって、ユニークなアイデアが生まれることで、企業の優位性の確保、つまり競争力を維持するため。経営戦略的な取り組みだと考えています。

白岩:目標は多様性のある状態になることですが、まだそこまでは進んでいません。今は女性も外国人も、その後押しをする状況だと思っています。私は人事が率先して模範を示すことが大事だと考え、近年、外国人の女性を採用し、人事に配属しました。正直、まだ今のKDDIでは「今の社内の状況に合う人」を探しているところがあり、この点ではまだまだダイバーシティが実現できていないと感じます。早くこういった配慮をなくさなければなりません。

矢島:企業向け調査の結果を見ても、いま日本企業の多くは、社員の外形的な多様性を高めているところであり、それを価値観など内面的な多様性につなげる素地にしようとしている段階のように思います。そのような土壌をつくった上で、企業は個を個で見て適材適所で活かしていくという方向に向かうのかもしれません。では次に、そのような状態になれる風土、文化を醸成するために、どのようなことに注力されているのをお聞きしたいと思います。

白岩:私が人事部長時代に意識したのは、経営層との二人三脚です。経営層が発する言葉は重いので、これなしには施策を進められません。そこで、経営層に言葉を発信するよう、お願いしてきました。ただし、経営層の足並みがいつも揃っているわけではありません。そこで社内報の中に人事が経営層にインタビューする企画をつくり、強引にでも言葉を発信してもらうようにしました。言葉が届けば、少しずつ社内の文化は変わります。そのように黒子として立ち回ることも、人事の役目です。

志水:風土をつくるときに重要なのはやはり、企業のビジョンです。ビジネスの目的は、トップが言い続けるしかありません。しかし、企業のビジョンと一貫したD&I戦略、特に「なぜD&Iを推進する必要があるのか」について明確なメッセージがなければ、トップがいくら良いことを言っても「絵に描いた餅」で現場はシラケてしまう。ビジネスの成果につながらない、何らかのメリットがなければ現場は動いてくれません。そして、誰もが恐れずに自身の意見、特に異なる意見を言えなければならない。それができていない限りは、ダイバーシティなど意味がありません。個人の違いが尊重され、自由に意見が言える、安全で安心な環境をつくることが人事の役割だと思っています。

臼田:社員一人ひとりが、D&I を何のために行っているのかをしっかりと理解しなければいけません。またそれに加えて、インクルージョンのスキルを高めていく必要もあります。そこで人事からトレーニングを提供し、社員に参加してもらっています。ここでカギとなるのは管理職です。管理職は現場で多くの社員に関わるので、特に「個々の違いを活かそう」という気持ちを持ってもらうことが重要。管理職の人たちにいかにインクルージョンの必要を感じてもらうのか。そのために人事は何ができるのかを日々考えています。経営陣、人事、管理職、現場が一体になることで、そこに風土が生まれると思います。

矢島:私は「自社になぜD&Iが必要か」ということを、企業のトップや人事の方々が、自分の言葉として話さない企業がまだまだ多いと感じています。そのことが社員の理解や認識を弱くしている。3社のお話をお聞きして、この問題に本気で取り組むことの大切さを感じました。これからは、人事の皆さんが自らの言葉で語っていくことが大事だと思います。本日はありがとうございました。

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