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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 日本の人事部「HRカンファレンス2017-春-」  > 特別講演 [A-1] 人事がシステム活用に成功して成果を出すために、知っておくべきこと

人事がシステム活用に成功して成果を出すために、知っておくべきこと

  • 大島 由起子氏(インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
2017.06.21 掲載
インフォテクノスコンサルティング株式会社講演写真

タレントマネジメントシステムは、2011年ごろから本格的に日本の市場に登場した。6年余りが経過したことになるが、導入企業からは「期待したような効果が出せていない」という声も聞かれる。この状況に対してインフォテクノスコンサルティングの大島由起子氏は、「人事がシステムを活用して成果を出すには、事前に知っておくべきことがある」という。システム導入で失敗する原因とは何なのか、また、導入に成功した企業にはどんな共通点があるのか。大島氏が解説した。

プロフィール
大島 由起子氏( インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
大島 由起子 プロフィール写真

(おおしま ゆきこ)株式会社リクルート、Hewlett-Packard Australia LtdのAsia Pacific Contract Centreを経て、2004年より現職。企業の人材マネジメントにおけるIT活用推進の支援を行う。著書:『破壊と創造の人事』(楠田祐・共著) ディスカヴァー・トゥエンティワン


タレントマネジメントの導入で起きがちな失敗

インフォテクノスコンサルティングは2000年に設立され、今年で17期目を迎える。もともとは受託開発で業務システムをつくっており、2003年に人事パッケージソリューション「Rosic(ロシック)人材マネジメントシステム」をリリースした。導入実績は、大手企業から中小企業までさまざまな業種にわたり、現在140社を超える企業で活用されている。

冒頭に大島氏は、システムがあるにもかかわらず、さまざまな資料づくりに時間を取られている人事が多いと語った。

「システムの活用は、勤怠管理をして給与を出すまでで終わり。あとはエクセルやアクセスなどを駆使して、自ら手作業で資料をつくっているという人事の方に大勢お会いしてきました。彼らは資料作成に時間を取られるために、その先の『考える』仕事に多くの時間を割くことがなかなかできていません。時間の使い方として、本当にもったいないと思います」

そもそも、人事がシステム活用に成功して成果を出すとはどういうことか。大島氏は人事に求められる役割として「短・中・長期のビジネス目標を達成するための、人材・組織の側面での支援」を挙げる。それをシステムで支援・実現していくことが、人事がシステム導入に求めるべき成果だ。

「人事の使命は、自社の課題を発見し、解決策を立案・実行し、人材マネジメント活動の質を上げていくこと。そのためにどのようなシステムが必要なのか、という発想でシステム選びをするべきです。その名前が『タレントマネジメントシステム』であっても、『HR Tech』であっても構いません。貴社の人事戦略実現のために本当に武器になりうるものなのか、ということが重要なのです」

講演写真

ここで大島氏は、顧客から聞いた「タレントマネジメントシステム」における失敗例を紹介した。

「一つ目は、どうしても思うように管理できないデータ項目があったという事例です。そのため、結局エクセルでの管理に戻ってしまった。二つ目は、システムが提供するプロセス管理が自社の運用に合わなかったという事例です。独自の運用や変更に、システムが対応できなかった、ということです」

他にも「思うような分析やレポート出力ができなかった」「従業員サービスにはなったが、人事部がプロフェッショナルとして経営に貢献するという効果は得られなかった」「他システムとのデータの連携や入力が困難で、データを最新状態にアップデートし続けられなかった」といった失敗事例が紹介された。

では、こうした失敗に陥らないためにはどうしたらいいのか。大島氏は、押さえておくべきポイントを三点挙げた。一点目は、「人材・タレントマネジメントとシステムの相性を知る」だ。

「まず、システムが支援する『人材・タレントマネジメント』は、独自性と変化を伴う戦略分野であるということを認識する必要があります。自社とまったく同じ人材や組織をもっている会社はありません。独自性が大前提です。また、市場が変化すれば、人材マネジメントも変化していきます。そして、人材・組織を活用して、会社の競争優位性をいかに高めていくか、という戦略を担う分野だということです」

なぜ人事はエクセルから離れられないのか

一方、それを支援する側の、パッケージシステムとはどういうものなのか。「そもそもパッケージとはベストプラクティスの集合体」と大島氏は言う。そのため、給与の支給のような、一定のルールにそったプロセスの支援には大きな力を発揮する。しかし、「独自性」と「変化」に対応することは、決して得意な分野ではない。

「本質的にはパッケージシステムと戦略は相性がよくない、ということです。もちろん、パッケージシステムで、戦略をまったくサポートできないということではありません。ユーザーとしてその本質を理解したうえで、どのようにうまく活用するか、という発想からスタートすべきだということです。パッケージベンダーの『できる』をそのまま鵜呑みにせず、できることとできないことを、しっかりと把握する必要があります」


二つ目に人事が押さえておくべきポイントとして、システムが生み出すべき価値を理解し、それを追求することを挙げた。

「3000人規模の企業の執行役員の方の事例です。その方は自分の後継者データを、何週間もかけて自らエクセルで作成し、時間をかけてメンテナンスしていらっしゃいました。本来そのレベルにいる方に期待されているのは、資料を作成することではなく、頭を使って新しい価値を生み出すことのはずです。まずは、手作業をできるだけ削減できること。同時に、考えるべき人の思考に寄り添った、柔軟な情報の提供ができること。人材システム導入には、このふたつを同時に実現することを求めるべきです」

三つ目のポイントは、流行のキーワードに飛びつかないこと、だ。あくまでもシステムは、人材・タレントマネジメントの成功、ひいてはビジネスの成功のために導入するはず。「タレントマネジメントシステム」と呼ばれるシステムを入れたから、自社にとって必要なタレントマネジメントが実現するわけではない。何のためにシステムを入れるのか、キーワードやわかりやすい言葉に惑わされずに突き詰めて考えることが重要だと、大島氏は語った。

人材データは様々な「履歴」が見られないと意味がない

続いて大島氏は、日本企業における人材データ管理に求められる要件について語った。特徴の一つは、個別・非同期に起きる、さまざまな種類の履歴データを管理しなければならない点だ。

「私はお客様から『現状だけ見ることができればいい』と言われたことは一度もありません。その社員が入社から今まで、どんな仕事を担当し、どんな成果をあげたかが知りたいと言われます。また、所属や等級、業務など、『期間』で管理したい要素が多いのも、人材データの特徴です。必要なデータを、必要なかたちで履歴管理ができることが、すべての大前提です」

その上、そうした履歴情報は「基準日」できれいに「輪切り」にできる必要がある。

「意図をもった日付で、輪切りにした状態のデータを取り出し、それを時系列で見たい、とよく言われます。エクセルでの資料作りが多くなる理由のひとつは、システムがこうした履歴管理、基準日管理に対応しきれていないからです」

そして、扱いたいデータの種類の幅はどんどん広くなり、変化していく。

「最近、顧客の皆さんからは、『現場のデータをきちんと把握したい』と言われます。異動した組織名だけでは不十分で、そこでどんなプロジェクトを担当したのか、どんな顧客を担当したのか、といった詳細情報を知ったうえで、育成や配置を行いたいからです。システムがこうした拡張要望にこたえ続けられることも、重要なポイントになります」

講演写真

本当に使えるデータは、なかなか見つからないからこそ価値がある

次に大島氏は、最近よく聞かれる「HR Tech」「人事のAI」といったIT化の流れが、人事にどんな影響をもたらすかについて語った。

「ポジティブな面としては、人事も、勘や経験だけでなく、データや事実をベースに仕事をする時代だという認識が一般的になってきたということです。これまでなかなか人事のシステム投資に首を縦に振らなかった経営陣に対して、『人事にシステムをいれるべき』と言いやすい環境になってきた。システム化の追い風が吹いていると思います」

しかし、ここで大島氏は「ただし、はやり言葉の域を出ていないものも少なくないという点には注意すべきです」と言う。そもそもHR Techとは何なのか、何をもって「AI」なのか、まだまだ定義があいまいなのが現状だ。

「AIとうたっているシステムの紹介文を見ると、『退職を未然に防ぐ』『メンタル不全を未然に防ぐ』『モチベーションを上げる』『最適な人材配置・育成を実現する』といった言葉が並んでいます。しかし、システムを入れたからと言って、自然に退職が防げるわけはありません。最後に退職を防ぐのは『人』の活動です。”AI”がより正確なリストを出してくるとしたら、人事は、そのリストに対して質の高い対応ができるように、さらに人のことを知り、対策を立てられるだけの経験や知見を重ねていく必要があります。つまり、これまで以上に、自らがデータ活用に長けていく必要がある、ということなのです」

ここで大島氏は、システム導入に成功している企業の共通点を述べた。それは、「経営が求める人事課題を解決することをタスクとして明確に意識し、それに向けて行動している」「省力化(システム化)すべきことと、工数を割く(頭に汗をかく)べきことの整理ができている」「現在ある情報を整理し、その最大限の活用をしている」「仮説を立て、実際に動き、自社にとっての正解に近づいていく」の四点だ。

「私から見ても、本当によくシステムを活用されている企業があるのですが、5、6年にわたってじっくり使ってきた結果、担当の方がおっしゃった言葉が印象的でした。『ここまでやってきて、ようやく自社に必要なデータと活用方法が確立してきました』と。自社で本当に使えるデータ、活用方法を見つけることはそれほど簡単なことではありません。しかし、難しいからこそ、そこにたどり着いたときには、競争優位を生み出す大きな原動力になる。人材システムが一瞬にして成果を出す、ということはなかなかあり得ません。しかし、使い続けることで確実に経営に貢献する成果を生むことはできます。私たちは、そのお手伝いをしたいと考えています。本日はありがとうございました」

講演写真
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日本の人事部「HRカンファレンス2017-春-」レポート
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