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組織の問題を「人」「関係性」に働きかけて解決
いま日本企業に必要な“組織開発”とは

  • 谷本 美穂氏(GEジャパン株式会社 人事部長)
  • 曽山 哲人氏(株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄)
  • 中村 和彦氏(南山大学 人文学部心理人間学科 教授、人間関係研究センター センター長、 人間文化研究科 教育ファシリテーション専攻)
2017.07.10 掲載
講演写真

近年、さまざまな人事課題を解決するための手法として「組織開発」が注目されている。組織のパフォーマンス向上は重要課題の一つだが、組織内に多くの問題を抱えていると言われる日本企業では、「組織開発」をどのように進めていけばいいのか――。組織開発の最先端を知るGEジャパンの谷本氏、サイバーエージェントの曽山氏、南山大学の中村氏が、組織開発の現状と課題について語り合った。

プロフィール
谷本 美穂氏( GEジャパン株式会社 人事部長)
谷本 美穂 プロフィール写真

(たにもと みほ)慶應大学卒業。2000年GEに入社。人事リーダーシップ・プログラムに選抜され国内並びに米国の金融部門で業務ローテーションを行う。その後、米国金融部門の人事担当、日本GE本社部門の採用リーダーや組織開発マネージャーを歴任。2011~2014年の間は米国のGEグローバル本社にて次世代グローバルリーダー開発担当マネジャー。帰国後は日本地区の組織開発・人材育成リーダーを経て、2016年2月よりGEジャパン人事部長を務める。


曽山 哲人氏( 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄)
曽山 哲人 プロフィール写真

(そやま てつひと)1974年生まれ。上智大学卒業。1999年サイバーエージェントに入社し、2005年の人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年に取締役就任。2014年から執行役員に就任し、2016年に取締役に再任。著書に『クリエイティブ人事』『最強のNo.2』など。


中村 和彦氏( 南山大学 人文学部心理人間学科 教授、人間関係研究センター センター長、 人間文化研究科 教育ファシリテーション専攻)
中村 和彦 プロフィール写真

(なかむら かずひこ)1964年岐阜県生まれ。名古屋大学大学院教育研究科教育心理学専攻後期博士課程満期退学。専攻は組織開発、人間関係トレーニング(ラボラトリー方式の体験学習)、グループ・ダイナミックス。アメリカのNTL Institute組織開発サーティフィケート・プログラム修了。組織開発コンサルティングを通して、さまざまな現場の支援に携わるとともに、実践と研究のリンクを目指したアクションリサーチに取り組む。著書に『入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる』(光文社新書)、主な論文に「組織開発(OD)とは何か?」「対話型組織開発の特徴およびフューチャーサーチとAIの異同」(『人間関係研究』に掲載)などがある。


谷本氏によるプレゼンテーション:GEにおける組織開発

まず、谷本氏が登壇。社員数33万3000人、世界180ヵ国でビジネスを展開しているGEでは、どのように組織開発を行っているのかを語った。その基本となるのは、ビジネスの目標および組織の『求められる行動(バリュー)』を定義することだ。

「GEバリューと呼ばれる行動指針があり、それが企業文化や人材育成・評価の軸になってきました。この行動指針は、リーダーであるほど求められます。成果と成長にフォーカスし、やる気にさせる仕組みをつくる。最終的な目標は組織活性化です」

そのベースとなる仕組みが“People Review”。社員それぞれの1年間の行動や成果を見たうえで行われる、タレントレビューである。

「アクションプランをつくり、それを1年かけて実行。周囲はその成長を見守ります。これは一種の組織診断にもなっていて、現在のチームがどれくらい活性化されているのか、この組織に必要な行動とは何なのかがわかります」

いまGEは大きな変革期にある。事業改革を行って“Digital Industrial Company”を目指し、ハードとソフトを融合させて、デジタル領域でのビジネスを拡大する渦中にあるのだ。それに対応するため、企業文化を変える三つの施策を実行中だという。

「まず、行動指針であるGEバリューの内容を改め、GE Beliefsを制定しました。これをきっかけに、社員同士の対話を意識して行っています。二つ目はファストワークス。新しい働き方を考えるための『気付き研修』です。失敗を恐れるのではなく、仮説を検証しながら、失敗に学ぶ姿勢をつくっていきます。人事主導ではなく社員主導で、社員の中にトレーナーを養成し、その人を中心に展開しています。三つ目は、新たな目標管理制度。対話を増やしたプロセスが追加されました。フィードバックが年2回になり、タイムリーに自分の成果に関する対話が行われています。社員の成長を考えながら、どうしたらもっとよくなるかを上司と部下で話し合いを行います。今、社内では評価などすべてにおいて、常にオープンに語り合えるカルチャーをつくることを目指しているところです」

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曽山氏によるプレゼンテーション:成果が出るチームをつくるポイントとは

続いて曽山氏が登壇。まず曽山氏は、組織開発において大事なことは「成果が出るチームをつくることにつきる」と語った。では、成果が出るチームをつくるポイントとは何なのか。

「三つのポイントがあります。一つ目は『事業が先、組織が後』。成果を出すには、まず事業目標が先にあって、その目標のためにどんな人やチームが必要なのかと考えなければなりません。そのため、人事は事業のことを理解しておく必要があります。二つ目は『共通言語を増やす』。強いチームを見ていると、成果が出るための言語が統一されています。一方、成果が出ていないチームは皆が勝手なことを言い出し、共通言語が少ない状態になります。三つ目は『セリフを目標にする』こと。これは私の経験に基づいていて、社員や経営陣が発するほめゼリフを目標とすることで、業績を伸ばそうということです。例えば、社員なら『うちの会社は新規事業を提案できる風土がある』、経営陣なら『うちの会社は社員が皆、主体的に動いてくれる』といった内容を、目標にします」

次に曽山氏は同社で行っている具体的な組織開発の施策をいくつか紹介した。その一つはプロレポ(プロジエクトレポート)という部署単位での社内報の発行だ。

「目的は組織の目標を全員で共有化することです。半期に1回、部署全員で組織の目標を考え、それを冊子やポスターにして発行します。役員会ですべての部署のものを審査し、優勝すると賞金があり、全社社内報の特集記事で紹介されます」

懇親会支援という施策もある。部署としての飲み会であれば、毎月一人5000円が補助されるというものだ。

「2000年から3年間は退職率が30%だったので、そのときに始めました。この施策のよさは『せっかくあるのだから行こうよ』となるところ。ボディブローのように企業カルチャーに効いている感があります」

最後に曽山氏は、強い組織をつくるための三つの習慣をあげた。

「一つ目は、『何ができればOKなのか』といった成果の定義を決めること。最初に良い組織の状態を決めておかないと、組織開発は進みません。二つ目は、人事が経営と現場の通訳になること。人事が通訳となって、言行一致ができているかを確認します。三つ目は、人事制度の運用に時間をかけること。私は、制度は企画が2割で運用が8割と思っています。どれだけうまく人に使ってもらえるかがカギです」

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ディスカッション:数値管理の手前で考えていく組織開発

中村:私は組織開発について、「チームをどう強くするか」「部署と部署の連携をどう強めるか」「組織全体の風土をどう変えていくか」といった方法論についての知識や手法、マインドがセットになったようなものではないかと考えています。

組織開発は英語で“organizational development”。Developmentには開発、発達、成長、進展という意味があり、組織をどう発達させるかという目的があります。だから組織開発を行うことは、職場や組織の体質改善に近くて、外科手術よりも漢方薬や生活改善に近い。自らが気づき、自ら発達・成長させていくものです。

組織開発の必要条件は四つあります。一つ目は「関係性」。個人だけでなく、職場や組織のレベルの関係性にも働きかけます。二つ目は「価値観」。人間尊重や民主的な価値観に基づく実践で、対話が重視されます。三つ目は「プロセス」。ハードな側面だけでなく、ソフトな側面(人間的側面)に働きかけます。四つ目は「当事者性」。当事者が現状に気づき、自ら変革に取り組みます。一方で実際の組織開発では、関係性だけに働きかけることはありません。制度というハードと関係性というソフトの両面に働きかけることが多いです。

ではまず曽山さんにお聞きします。サイバーエージェントでは組織開発に関して課題があるとき、制度と風土の両面をどのように関連付けて働きかけていますか。

講演写真

曽山:「現在の経営課題は何か」という議論がすごく大事だと思います。例えば、経営目標と会社の現状をみると、何かギャップがある。このギャップにおける人事的課題や組織的課題は何かを考える。例えば先ほどの懇親会支援は「社員同士の仲がよくないと事業は進まないよね」ということで始めた制度です。この手段が間違っていても、課題さえ見えていれば手段は増やせます。当社では課題なしに制度を入れることはありません。

中村:次に谷本さんにお聞きします。先ほどのお話を聞いて、GEは評価制度と共に、リーダーが育成されること、人がやる気になることを大事にされていると感じました。この点は関連付けて行われているのでしょうか。

谷本:ビジネスで成し遂げたいことがあり、それにはこんな働き方とカルチャーが必要、という一貫したストーリーがあることは大事だと考えています。当社の評価制度も、その流れの中で見直しました。

中村:お二人の話を聞いていて、人間的な側面での課題が語られることが多いと感じました。一般の企業での課題は数字の話ばかりになりがちですが、曽山さんが人の気持ちや関係性を重視される理由は何なのでしょうか。

曽山:本当に業績を上げたいときに社員のモチベーションが低ければ、それは大きな問題です。当然、人事として手を打つことになります。ポジティブさは業績に影響しますし、数字に直結するものだと思います。

中村:結果として成果につながることは誰でも意識すると思いますが、その前に人間のモチベーションや人間的側面の大事さを考慮される、ということですね。社内に対しても、その点が大事だと発信されているのでしょうか。

曽山:会社は人で構成されていますし、生産性も人によって左右されます。そこに手間をかけることは合理的な考えだと考えています。

中村:この点について、谷本さんはどう思われますか。

谷本:私も人のやる気に勝る生産性はないと思います。自分の目標に向かって打ち込めていて、自分の貢献が誰かに感謝されていると、社員はもっと仕事がしたいと思いますし、このときのパワーは実に大事だと思います。では、それをどうやって企業カルチャーにするか。私は、単純なことですが、皆でよりオープンに本年で語り合うカルチャーをつくることが大事だと思っています。デジタル化を推進していますが、やっていることは対話の回数と質を変えていることです。本物の信頼のある関係性をつくる、大事なことを腹落ちさせる、お客さんにとっての成果に速くつなげるためにお互いがいいことも悪いこともいつも本音で話し合う、といったことです。

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ディスカッション:組織開発の手法は「外」ではなく「内」にある

中村:世の中には、成果さえ出していれば人の関係性は考える必要がない、という人もいると思います。そういう人には、どのように人の関係性の大切さを伝えればいいでしょうか。

曽山:以前、退職者が多かった時代に参考にしたのは、退職者へのインタビューでした。特にその人がなぜ辞めるかという理由が、経営課題に絡んでいるケースは問題だと思います。私は、退職はその人の最後の抵抗だと思っています。何か残したいと思っているのか、それとも信頼関係は崩れているのか、といったことは話しているとわかります。そこで「もし会社に残って、何かを変えられるとしたら、何を変えたいと思うか。アドバイスをもらいたい」とお願いすると、よいヒントがもらえることが多いですね。そして、それを話すときにどんな感情が出ているか、ということに人事がきちんと向き合うことが大事だと思っています。

谷本:私は違う考えや文化に触れる機会をたくさんつくることも、自分たちをより深く知るきっかけになるのではないかと思います。今回デジタル領域の推進で、今まで交流のなかった、いわゆるシリコンバレー系の企業と関わる機会がありました。そこでリーダーシップ研修の一環として、こちらから訪問したり、役員会に来て話をしてもらったり、積極的に交流しました。最近は、GEでももっと若い人を育てて魅力的な会社にならないといけないという声があり、シニアリーダーの前で若手の人に話してもらったりしています。他を知ることで自分たちを振り返り、より自身の理解を深めることができるのです。

曽山:社員がその会社を自慢してくれるかどうかは、重要なことだと思います。人がどんな言葉で自慢してくれているか。人事がこれを箇条書きにできなかったら、社員の声を聞けていないのかもしれません。人が会社を自慢するときは、人の話か組織の話か、どちらかです。組織のことを自慢してくれるときには、それが組織開発のヒントになると思います。

中村:昔は「ビジネスに感情を持ち込むな」と言われていました。しかし、人は感情を持っているし、ポジティブな感情によって成果が上がります。そして、お二人のお話を聞いて、カタカナで表されるような組織開発の手法の名前が出てこなかったことから、組織開発の手法は外ではなく、内にあるのだと実感しました。現場で課題を解決したいというマインドを持ち、現場でどうすればいいかと、手段を探求していく。その姿勢こそが大事なのだと思います。本日はありがとうございました。

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