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ビジネスの現場で優秀な人材を社内講師として成功させるには、どうしたらいいのか?

  • 中村 文子氏(ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役/Bob Pike Group マスタートレーナー)
2016.12.21 掲載
ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社講演写真

研修の内製化が注目されているが、既に軌道に乗っている組織も見られる一方で、進められずにいる組織も少なくない。人材開発の世界的権威であるボブ・パイク氏が確立した参加者主体の研修手法を軸に、研修内製化コンサルティングや各種研修構築の提供を行い、自らも講師として多くの実績を持つダイナミックヒューマンキャピタルの中村文子氏が、研修を内製化するための見極めや成功させるポイント、取り組み方について解説した。

プロフィール
中村 文子氏( ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役/Bob Pike Group マスタートレーナー)
中村 文子 プロフィール写真

(なかむら あやこ)P&G、ヒルトンホテルで人材・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にATDカンファレンスで講師養成の世界的権威ボブ・パイク氏に出会う。クライアントは製薬、電機メーカー、金融、サービス業、大学・学校と多岐にわたり、研修・社内講師養成、研修内製化支援、ヒューマンスキル研修などの分野で活動中。


研修は内製化なのか、外部委託なのか?

大手を筆頭に多数の研修の内製化、社内講師のサポートの実績を持ち、きめ細かで幅広い対応を行っているダイナミックヒューマンキャピタルでは、顧客に接するとき「社内の研修を内製化するのがいいか、あるいは外部に委託するのがいいか」という問いを大切にしている。その判断のためにも、まずは「その研修が答えになるのかという視点を持つこと」の大切だと中村氏は言う。

「研修ありきという前提は忘れて、組織の抱えるビジネスの課題や解決したいテーマに対して、今すべき研修なのかをまず考えてみてください。解決したいことは、すぐ手をつけるべき問題なのか。喫緊ではないが改善の余地があり継続的な改善が必要なレベルなのか。長期的視野に立った時に後手にならないよう、今のうちに対策を打っておいた方がいい類のものなのか、と緊急度合いを把握する必要があります。次に、考えるべきは個人のスキルの問題なのか、部・課レベルのことなのか、会社全体に共通しているのか、と規模感やレベル感を見定めることです。これらを分析した上で、解決策として研修がいいのか、それ以外がよいのかと考えを進めます」

課題に対して、ただ「研修しよう」「良い研修だから全社的に横展開しよう」という発想は正しいとは限らない。制度や仕組みに課題がある場合もあれば、上司のマネジメント力が課題の場合もあるからだ。

「ある企業の例をお話します。課題は新入社員の離職率の高さで、新卒研修やフォローアップのアイデアについて相談を受けました。『本当に新卒の方々に研修をすることが答えでしょうか』というのが私の第一声でした。先輩や上司の受け入れ体制、仕組みに問題があるかもしれませんし、指導力に課題があるのかもしれません。人を育てる企業風土ができていないのかもしれない。そうであれば、組織開発プログラムやシステムの仕組みを変えるべきで、新入社員に対する研修の内製化は間違った方向へのリソース投資となってしまいます」

また「内製化できる内容なのか」という視点も重要だ。その際のポイントは三つある。「目指す人材像は明確か」「お手本は存在するか」「専門性の高い内容か、それは社内にある専門性か」だ。

「目指す人材像が明確化されていなければ、そもそも研修は作れません。例えば組織として求めるリーダー像などの共通認識を持つ必要があります。また、『あの人がリーダーシップ研修の講師をやるのなら、ぜひ出たい』と思われるお手本のような存在がいれば、その方が講師になるのがベストです。専門性については、それを持ち合わせている人が社内にいるのか、社外にリソースを求めるべきなのかがポイントになります」

次に「費用対効果はどうなのか」という視点も見過ごせない。プログラムを開発して講師を育成するには、時間も費用も要する。研修を行うことで長期的投資がどれほど回収できるのか、それと同時に「育てない」コストの見える化も活用できるデータとなる。これは育成を行わなかったことによってムダになるコストを指し、新入社員の早期離職を例に挙げると、採用にかかったコスト、教育のコスト、採用担当の人件費コストなどが該当する。

講演写真

内製化成功のためのポイント

「研修はイベントではなく、プロセスです。研修当日だけでなく、その前後を見据えた仕組み作りが、成功の秘訣の一つ目になります。研修に参加した人が研修で学んだことを実践することに一番影響するのは、誰による、いつのタイミングと思われますか。米国で出版された本のデータによると、一番は研修前の上司でした。研修に行く前に上司が何と声をかけるかで、同じ人でも自分の研修に対するモチベーションが変わってきます」

良くない上司の言葉は「来月研修に行ってほしいのだけれど、忙しいのに人事は何を考えているのか。休憩時間には戻ってね。とりあえず行かないと人事が怒るから」といった声掛けだ。良い例は、「来月ある研修に行ってもらうことにしました。○○さんには今度こういう役割を担ってもらおうと思っています。この新しいスキルを学んでおけばためになると思うよ」という言い方。前者では、研修に来る段階で集中力が下がってしまい、吸収もできなくなってしまう。

「トレーナーの研修前もポイントになります。しっかりとニーズ分析をしてから、それに合った研修を作ることが大事です。また、研修後の上司も重要。研修前と同じように、例えば『役に立たないと思うよ』といった否定的なことを言われると、せっかくの学びも実践できません」

そして成功の秘訣の二つ目は、教え方を学べる仕組みを作ることだ。専門分野に長けていたり、リーダーシップに優れた人でも、教えることがうまいとは限らない。教え方をスキルとして学べる仕組み化が必要となる。この際参考になるのが学習の五段階と中村氏は語る。

「『意識していないし、できない』というところから学習はスタートします。自動車の運転を例にとると、経験がない人は運転の難しさを意識していないし、当然できません。次の段階が『意識しているのに、できない』です。こう運転しなくてはと理解していても、体がついていかない状態です。三つ目は『意識して、できる』。一通り運転ができるようになった段階です。四つ目は『意識しなくても、できる』。運転歴が長くなると、操作手順を頭に浮かべなくても無意識に車が運転できるようになります。五つ目は『意識しなくてもできることを、意識レベルに落とし込む』です。意識しなくてもできるようになった操作手順を、改めて意識レベルに落とし込んで、誰かに説明できる状態です。これは非常に難しいもので、講師として、いざ業務ノウハウやコツを教えようと思っても、そこで相手に伝わるように教えることは容易ではありません」

ダイナミックヒューマンキャピタルでは「講師は何ができなくてはいけないか」という講師の規準チェックリストを作成している。「準備」「効果的なオープニング」「学びに対する参加者の責任感を高める」「学習内容のリビジット(復習)」「モチベーションを得られる環境の創出」「ビジュアルの効果的な使用」などの項目ごとにチェックポイントがまとめられている。このようなリストを作るなどして、講師に求めるスキルや研修内容を明確にした上で、内製化することを中村氏は勧めている。

そして成功の秘訣の三つ目は『Whatだけでなく、Howをデザインする』だ。

「研修を計画する時には、何を教えるかと同時にどうやって学んでもらうかも考えるべきです。人は新しいことを学ぶとき、どのように学びたいか、どういう方法で学ぶと身に付きやすいかについて、個性や好みがあります。そうした個人の違いを考慮せず、講師が良いと思う方法で画一的に教えようとしても、効果的な学びの実現は難しいのです。自分が学びたいことは他の人も学びたいだろう、自分が学びやすい方法は他の人にも学びやすいだろうという前提で研修をデザインすると、吸収が速い人、落ちこぼれる人が出てしまうため、バランスの取れた教え方が講師には求められる。このように、社内講師になる人には、教える人のためのノウハウを学ぶ機会を提供することが、研修内製化の成功には大きなカギを握る。

講演写真

研修の内製化を進める七つのステップ

研修の内製化にあたっては、七つのステップがあるという。

「ステップ1は『分析』です。研修は果たして答えになり得るのかという分析です。2は『ゴール設定』。何を目指して研修を行い、内製化に着手するのかを決めます。3は『計画』。具体的に何をどう行っていくかを決めます。講師の人選はどういう基準で、任期は何年か、推薦か自選か、研修参加者はどう募るか、自由参加か必修か、などです。4は『作成』。研修の中身、プログラムを作ります。どう学んでもらうと効果的なのかを考え、それに合わせて研修のデザインを決めていきます。5は『講師育成』。講師となる人に教えるためのスキルを学んでもらいます。そして6は『研修実施』。7は『検証』。研修後にはPDCAのサイクルを回していきます」

この七つのステップにおいて、ダイナミックヒューマンキャピタルが提供する研修内製化支援には大きく三つの種類がある。コンテンツそのものを作る「コンテンツ開発」では、例えば、階層別研修やプレゼンテーション研修などを中身作りからサポートしている。「インストラクショナルデザイン作成・支援」では、社内にある英知を研修プログラムとしてデザインし、効果を出すための手法や時間配分などインストラクショナルデザインを作成することで、企業内にあるノウハウの継承を手伝う。「社内講師育成」では、デリバリーやファシリテーションなど教えるスキルを指導している。他にも、講師スキル基本講座、トレーナー養成ワークショップなど、公開講座を揃えている。

「講師に挑戦する方には、せっかくの機会ですから、教える楽しさや喜びを感じてほしいと思っています。そのためにも、効果的な研修の組み立て方やファシリテーションのスキルは重要です」

講演写真
本講演企業

講師養成において世界的に最も認められているボブ・パイク・グループの公認パートナー。講師、インストラクター養成プログラム、研修内製化支援を提供し、「退屈な講義」を脱却させ、参加者が積極的に参画し、成果につながる研修の実現を支援しています。 また、階層別研修やビジネスコミュニケーションスキル研修などヒューマンスキルについての研修も、「参加者主体」の手法で提供しています。

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