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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 2015年-春-  > 大会場[E-5] ミドルのコミュニティが起こす組織変革~リフレクション・ラウンドテーブルのその後

ミドルのコミュニティが起こす組織変革
~リフレクション・ラウンドテーブルのその後

2015.6.23 掲載
重光直之氏 Photo

自発的な組織変革は理想的と言えるが、そのような活動のきっかけを、人事が提供することは大変難しい。ジェイフィールは、ミドルマネジャー同士のコミュニティ活動から、自発的な組織変革につなぐ研修事業を展開(「HRアワード2012」プロフェッショナル教育・研修部門 最優秀賞受賞)。カナダの経営学者であるヘンリー・ミンツバーグ教授が中心となり開発したプログラムを実践し、日本企業でも多くの成果が得られている。同社取締役の重光氏が、企業事例を盛り込みながら、その概要と効果について語った。

プロフィール
重光直之氏(株式会社ジェイフィール 取締役)
重光直之氏 プロフィール写真

(しげみつ なおゆき)株式会社ニイタカ、社団法人日本能率協会を経て、ジェイフィール設立に参画。ミンツバーグ教授と出会い、コーチング・アワセルブズを「リフレクション・ラウンドテーブル」として日本に導入。「日本の人事部」第1回HRアワード受賞。「ミンツバーグ教授のマネジャーの学校」,「ワクワクする職場をつくる」(ともに共著)


ヘンリー ミンツバーグ氏(カナダ・マギル大学 教授コーチング・アワセルブズ創設者)
ヘンリーミンツバーグ氏 プロフィール写真

(ヘンリー ミンツバーグ)現代経営学の巨匠で、ミドルマネジャーが組織を変革するミドルアウトとそれを支えるコミュニティシップを主張。自らもその実践の先頭に立ち、 IMPMプログラム(国際マネジメント実務修士課程)およびリフレクション・ラウンドテーブル(日本以外ではコーチング・アワセルブズという名称)を創設し世界中に広めている。


経験を互いに話しながら「内省と行動」を繰り返す

ジェイフィールは、人と組織の変革を支援するコンサルティング会社だ。組織改革、人材育成の専門家が集まり、「仕事が面白い」「職場が楽しい」「会社が好きだ」という人を増やすことをポリシーに活動する。企業の社員に、自分たちのあり方を見つめ、周囲と対話し、行動を起こしていくきっかけづくりをサポートしている。

同社はミドルマネジャーを対象とした研修プログラム「リフレクション・ラウンドテーブル」(以下RRT)を提供している。RRTはカナダの経営学者であるヘンリー・ミンツバーグ教授が中心となり開発したプログラムで、重光氏はその特徴を紹介した。

「毎週、同じ時間帯に開催(多くは朝に開催)、30週続けて行う、1回あたり75分、参加者は現役のマネジャー12名(最大)、ファシリテーターはいるが、講師はいない……。これは大変特徴的なプログラムです。あくまでも自ら集い、自らの経験から学ぶもので、組織横断的なコミュニティ形成によって、組織変革の取り組みを行います。もともと販売されるために生まれたプログラムではなく、現場の中でマネジャーたちが試行錯誤をする中で生まれたものです。自発的な内省と行動の繰り返しから、マネジャーと組織に行動変容をもたらします」

ヘンリー・ミンツバーグ教授は、このプログラムを第三世代の能力開発と定義している。第一世代は講義・ケーススタディ形式で、効率的に知識を学ぶもの。第二世代はアクションラーニング形式で実務に直結して学ぶ。第三世代は経験学習形式であり、経験から総合的に学ぶことを目的としている。自然な実体験から総合的な深い学びを獲得するもので、これによりメンバー相互の信頼関係も生まれる。

「このプログラムの学習サイクルは、内省と行動を繰り返します。理論は学びますが、それを自分の職場と結びつけ、毎週実践しながら結果についてセッションで内省と対話を行う。そしてまた、新たに考えたことを試し、セッションで語る。これを繰り返しながら習慣化します。この反復でマネジャーに変化をもたらします。通常、習慣を身につけるには、行動習慣で1ヵ月、身体習慣で3ヵ月、思考習慣は6ヵ月かかると言われます。30週はそれに近い期間となっています」

ここで、このプログラムを体験した3名のマネジャーが、感想を述べるビデオが流された。「ビデオでは三つのことが話されていました。一つ目は自分の中に変化が起きたこと。自身の固定観念に気付けたり、モノの見方に違いが生まれたという指摘です。二つ目はメンバーの反応に変化が生まれたこと。これは毎週のセッションで報告されていました。三つ目はこの場が自分たちの居場所となり、心強い存在になったこと。実際に場の変化を体験したからこそ、言える感想ばかりだったと思います」

重光直之氏 Photo

「危機感を高め、外圧で行う組織変革」とは根本的に違う

そもそも組織改革の狙いは何か。例として「新製品が生まれずに組織に停滞感がある」「主体性がなく、受身の姿勢がまん延している」「組織観の壁が強くて、組織の力が発揮できていない」「長時間労働の風土があり、女性が活躍しにくい」「人が育たず、優秀な若手が辞めていく」といったものが挙げられた。

ここで参加者に、以下の問題が出され、ディカッションが行われた。

  • あなたが考える組織変革とはどんなことですか(何をどう変えたいと思っていますか)
  • 組織変革のゴールは決まっていますか
  • 誰が推進役を担っているでしょうか

「RRTでも、この正解のないテーマについて話し合います。ある課題に対して、自分はどう思うのかを語り合うことで、互いを認め合う意識が生まれます。そして、この場が普段、成果を求められるような仕事の場とは違うことを認識していただきます」

では、具体的にRRTを通じて、どのような組織変化の動きが起きたのか。あるメーカーでは開発プロセスの抜本的な改革が、取締役会に提言された。また、シニアの再活性化に関する社長提言がなされるなど、トップへの提言活動につながるケースも多い。また、業務プロセスやオフィスレイアウトといった組織内のコミュニケーション改革や、組織横断的な勉強会の自主開催、朝礼、部会・課会の相互見学と進め方の改革など、自組織における改革活動につながる例もある。RRTを行うと、社内で何らかの改革が自然に生まれていく。

通常、組織変革では、外部から危機感を高めて内部を動かすという手法が取られる。以下の『企業変革力』を著したジョン・コッター教授が語る八つの段階がその手法だ。
「1.危機意識を高める」→「2.変革推進のための連帯チームを築く」→
「3.ビジョンと戦略を生み出す」→「4.変革のためのビジョンを周知徹底する」→
「5.従業員の自発を促す」→「6.短期的成果を実現する」→
「7.成果を活かして、さらなる変革を推進する」→「8.新しい方法を企業文化に定着させる」

しかし、重光氏はRRTを実践してみて、「このステップと違うアプローチがあるのではないかと気付いた」と語る。「私たちがRRTを経験して感じることは、組織変革で行われる危機感を高めて、外の力で動かすといったやり方ではないのでは、ということです。そうではなく、社員の皆さんが元々持っている力を引き出し、それを自然な形で引っ張り上げていく形になっているのではないか。これは大事なことなのだろうと思います。そのことをRRTでは皆さんにも投げかけてみたいと思っています」

本音で話せる「安心・安全で前向きな場」だからこそ貴重

次に重光氏はRRTの中で実際に聞かれた参加者の感想を紹介した。

「気兼ねなく話し合うことは普段あまりない。こんな機会は必要だと思う。みんな同じ悩みを抱えていてホッとした」

「同じ悩みだけど、やり方は違っていた。メンバーのやり方はとても参考になった。このメンバーなら、何かやれそうだと思う」

「組織課題を討議すると驚くほど活発に意見が出てきた」

「あっという間に、結論が導き出された」

「本当にやるべき課題が見えてきた」

「これらの言葉から、この場がマネジャー同士の安心・安全で前向きな場になっていることがわかります。真に聴き、評価することなく、人として受け入れることは、ある意味で治療的でもあるようです。そして、駆け引きのない、信頼できる相手であるという認識が醸成されることの価値の高さが感じられます」

ここで重光氏は問いかける。「皆さんは普段どれだけ本音で議論しているでしょうか。本音と建前の間で迷ってはいないでしょうか」。組織変革を行うには土台が必要になる。ミンツバーグ氏は、ここで土台となる安心・安全で前向きな場のことを「コミュニティ」と呼ぶ。「ミンツバーグ氏は『コミュニティとは、仕事や同僚、そして自分たちの居場所であり、やる気が湧いてくるところである』と語っています。まさに、マネジャー同士の対話の場がコミュニティと言えると思います」

重光氏は、組織変革が具体的に企業の業績につながるというデータを紹介した。ある会社の事業部門別の「RRTの受講率」と「利益指標」の関係グラフだ。受講率が高いほど、利益率も高くなっている。「私たちは『組織の力=個人の力×つながり力』と定義しています。組織変革は、ビジネスにつながるだけでなく、ナレッジの共有や業務改善への取り組み、他部署との連携など、さまざまな好影響をもたらします。ここで利益率が低かった事業部でも、研修の卒業生が立ち上がり、若手リーダー層を対象に月1回の勉強会をスタートさせました。このような自発的な動きこそが、組織変革の原動力なのです」

重光直之氏 Photo

自発的行動であるから「ゴールの姿は自分たちで描く」

次に組織変革における3ステップが紹介された。ステップ1は「関係革新」。ここでは、存在そのものを受け入れ、自分をさらけ出す。本音を語り、仲間がいて楽しいと感じる。まさにコミュニティを実感する段階だ。ステップ2は「仕事革新」。仕事の意味ややりがいを問い、自分の存在や働きがいを問う。仕事の面白さについて考える段階。そしてステップ3は「未来革新」で、自分の原体験から導く、人の幸せの実現を願う。理想を描く段階だ。

そして、コミュニティから組織変革を実践する五つのポイントが紹介された。
「(1)誰もが持つ改善と成長への欲求を土台とする」「(2)メンバーに安心・安全な場を提供する」「(3)感情を大切にし、マインドと行動を共に変えていく」「(4)実践と内省を繰り返し反復する」「(5)ゴールの姿は自分たちで描く」
「(1)は危機感からスタートするのではないということです。人が本来持っている前向きな力を土台にするのです。(2)は本当にどう思っているのかを語れる場をつくること。(3)は不安や恐れ、怒りなどいろんな感情を出して行動を変えていきます。(4)は実践しながら同時に内省することが大事。(5)は自分たちのやりがいにつながります」

ミンツバーグ氏は「マネジメントは自分にとって自然なプロセス」と語る。この五つの実践ポイントは、参加者が自らのごく自然な思いを素直に出すことにつながっている。重光氏は、このような形が新しい組織変革の手法となると主張する。

「具体的には、組織内の変革は部長クラスの判断で実現可能です。部長が参加すれば変革までスムーズに実現できます。また、組織に縦・横・斜めの関係の土台を作り、組織横断的な取り組みを行うこともポイントです。ここでは期を超えて卒業生が連携して活動することがカギになります。また、RRT終了時に自分たちで組織課題を設定して、社長提言、全社プロジェクトなどストレートな活動につなぐ手法もあります」

いかに本音を語り合い、いかに一つの方向にまとまり、いかに実践されるのか。重光氏の話は、組織変革の真の姿が浮き彫りとなった講演となった。

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