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パネルセッション[E]

これからの働き方を変えていくために
~日本マイクロソフトが実践する生産性を高めた取組みとは~

佐藤千佳氏 photo
日本マイクロソフト株式会社 執行役 人事本部長
佐藤 千佳氏(さとう・ちか)
プロフィール:住友電気工業にてHRキャリアをスタートし、その後1996年にGEへ入社。コンシューマーファイナンス、コーポレート、ヘルスケア部門 において、採用、M&A後のインテグレーション、組織・リーダーシップ開発など多岐に渡るHR経験を積み、キャピタル部門においてHR本部長職。 2011年に日本マイクロソフトへ入社し、現職。

小室淑恵氏 photo
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室 淑恵氏(こむろ・よしえ)
プロフィール:900社以上へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」に定評がある。自身も2児の母として子育てをしながら効率の良い働き方を実践。『6時に帰るチーム術』など著書多数。消費増税集中点検会合他、複数公務に出席。2009年金沢工業大学客員教授に就任。2014年5月にベストマザー賞(経済部門)を受賞。

厚生労働省だけでなく、内閣府、経済産業省など、さまざまな省庁がこぞってワーク・ライフバランス(WLB)に取り組んでいる。少子高齢化、年金問題などの解決には、働き方の改革が避けられないからだ。企業側にもその緊迫感は伝わっているようで、株式会社ワーク・ライフバランスの小室氏は「900社以上コンサルティング実績のうち、そのほとんどは問い合わせからの依頼」と語る。本セッションでは、小室氏がWLBの最新動向を解説。また、日本マイクロソフトの佐藤氏が、在宅勤務の導入や多様な働き方を支える環境整備の実践例を紹介した。

【本講演協賛企業】
日本マイクロソフトでは、社員一人ひとりが最新のテクノロジを活用したスマートな働き方を実践し、社員同士のコミュニケーション、コラボレーションの活性化、そして社員の創造性や業務効率性が向上を実現しています。
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小室淑恵氏によるプレゼンテーション:
「働くほどに、子が産みやすくなる」施策への転換

日本では少子高齢化により労働力人口が減り、年金の収め手が激減。一方で、もらい手は激増する状況にある。このままではインフラが成り立たないと、行政では出生率の向上を推進しているが、現状のままでは逆効果だと小室氏は語る。

小室淑恵氏 講演photo「今の日本の現状では、出生率が上がっても、年金の払い手は減ります。その理由は、先進国の中で日本だけが出産・育児を機に約6割の女性が仕事を辞めるため。出生数を増やして、かつ女性が継続就業しなければ年金の払い手は増えないのです。いま重要なのは、女性が仕事を辞めることなく、出産後は復帰し、働きながら子育てができるための支援を行うことです」

しかし、女性の継続就業だけに目を向けていても、問題は解決しない。小室氏は【女性(24~34歳)の労働力率】と【合計特殊出生率】(一人の女性が生涯に産む子供の数)の国際比較グラフを示した。日本はこの両方の数値が低い。つまり、子供を産んでいなくて働いてもいない。一方、アメリカ、フランス、ノルウェーなどは、女性が働くほど子を産んでいる。なぜ、違いが生まれるのか。

「日本で行われた40年前の専業主婦家庭を優遇する政策が影響しています。以前は、女性は働くほど、産まなくなると考えられていたためです。一方、海外では女性が働くと産めないような社会環境が問題だとして、次の三点を整備しました。一つ目は、安心して預けられる保育所を増やしたこと。二つ目は、企業に両立支援制度を義務付けたこと。三つ目がもっとも重要で、男女ともに労働時間を規制し、夫婦で早く帰り家事や育児ができるようにしたことです。」つまり、男性を含めた働き方の見直しを行うかどうかが、男女で働きながら子どもを産める社会になれるかどうかの重要なポイントであるということだ。

「フランスやドイツでは週35時間労働、1日7時間の勤務です。また、EUで批准している法律では、前日帰宅した時間から11時間経たないと、翌日の業務を始められない決まりがあります。労働時間が短くなったことにより、男性の帰宅時間が速まり、夫婦で家事育児を行うことができる。すると妻が働けるようになり収入が増え、それまでは経済的な理由で子どもをあきらめていた家庭でも子どもを産めるとなって、出生率が回復していったのです。日本が成長戦略を描く上で、男性を含めた働き方の見直しは避けられません」

では、企業側の状況はどうか。以前は「ワーク・ライフバランス=福利厚生」と捉えられがちだったが、今では「経営戦略」としてトップ自らが旗を振りワーク・ライフバランスの実践に取り組む例が大半だという。変化のきっかけになったのはいわゆる2007年問題で団塊世代が一斉に定年退職したこと。人は減ったが業務は減らず、また働き方の見直しに取り組まなかった場合、特に中堅層の仕事量の激増を招き、うつ病の増加につながった。一方で大学生が企業を選ぶ際に重視するポイントは直近の数年間「仕事と生活の両立ができる企業」が1位だ。長時間勤務が恒常化してはあっという間に口コミが広がり「ブラック企業」扱いをされて優秀な人が集まらない組織になる。グローバル人材はなおさらだ。ワーク・ライフバランスがとれる組織を作ることは、優秀な人材を採用・定着させ、モチベーション高く成果を出してもらうための、経営戦略なのだ。

小室淑恵氏 講演photo今、多くの企業が抱える課題を整理すると(1)女性を採用・育成できない、(2)休業・時短を経て継続就業できない、(3)長時間残業の恒常化、(4)マネジメントの意識改革、の大きく4点。どの企業も(1)(2)に手を付けるが、それでも女性の退職が止まらない真の理由に(3)(4)がある。

「企業では“残業ありき”が働き方の常識。むしろ重要な会議ほど時間外に行われ、昇進ポストには残業・出張・転勤が多く、これに耐えられる人だけが昇進できるようなところがある。マネジメントの意識も同様に、長時間勤務できることを前提に部下を評価育成していないだろうか。今の成果主義の評価定義は『期間あたり生産性』。これは『時間あたり生産性』であるべき。ワーク・ライフバランスが実現できる組織になるためには、制度よりもむしろマネジメントの意識や長時間勤務の是正に取り組むことが重要です」

さらに企業が力を入れるべきは介護への対応だ。今の状況が進むと、育児で休む女性の数を男性が上回るようになると、小室氏は語る。「ある大手企業で昨年、介護休業を取った人の7割は男性。ある有名商社の調査では、社員の15%が主に介護を担っており、そのうち8割が男性。これは40代~50代の社員に男性が多いためです。今後は、介護をしながら働く人が、会社のメーンストリートを歩けるかが問われる時代になります」

佐藤千佳氏によるプレゼンテーション:
「全社一斉テレワーク」で制度定着を図る日本マイクロソフト

次に、日本マイクロソフトの佐藤氏が登壇。2007年から取り組んでいる、在宅勤務制度について紹介した。マイクロソフトでは多様な人材を確保し、長く働ける環境をつくることに注力。2012年3月と2013年5月には、全社員の体験を目的に、全社一斉でテレワークの日を設けた。

佐藤千佳氏 講演photo 「実施前は不安の声もありましたが、総合満足度は非常に高く、『とても満足』が89%。『社員同士のコミュニケーションも問題なし』が91%。『情報共有や共同作業も支障なくできた』が86%と好評でした。『自宅で誰にも邪魔されず仕事に集中できた』『直行直帰で顧客との時間がつくれた』『通勤時間を有効に使えた』など、時間活用の感想が多く聞かれています」

日本マイクロソフトはデジタルライフを提言し、ITを駆使した働き方を実践する。この在宅勤務も福利厚生ではなく、会社が認める働き方の一つとして推進。在宅勤務を希望する社員への適用は会社(マネジャー)が判断し、適用が認められた社員は自律性をもって、業務を遂行する。在宅勤務でもコミットメント達成の期待値が変わることはない。2012年からは週3日まで在宅を認め、承認は直属の上司が行う。

では在宅勤務は社員にどこまで定着したのか。ここで佐藤氏は2013年8月に行ったアンケート調査の結果を示した。「日中の在宅勤務経験者は4割(男性37%、女性47%)。利用理由は育児、介護など家庭の理由が29%、自宅で集中作業などの仕事上の理由が31%、その両方が35%。社員の半数が、オフィスの自席以外で日常的に仕事をするようになっています。また、社員の9割は、フレキシブルな働き方は「不可欠/あるほうがよい」と答えています」

ビジネス面での成果はどうか。2010年と2012年の調査で比較すると、効率では、残業時間は横ばいのまま、一人当たり売上高は17.4%アップ。協調性では、社員意識調査でチーム効率性がプラス7%、協調性がプラス5%と向上。次に男女別の退職率では、2010年に女性が男性の1.8倍あったのに対し、2012年はその格差がなくなり、女性の退職率が下がった。日本マイクロソフトの在宅勤務制度は、社員にとっても企業にとっても、非常に成功した例といえる。

では、多様な働き方を実現するには何が必要か。日本マイクロソフトは以下の3点を重視する。働き方の多様性を認め合う「価値観・企業文化」、活用する「制度」、そしてそれを支える「ICT(情報通信技術)の活用」だ。

ここで日本マイクロソフト・輪島氏から、マイクロソフトの在宅勤務を支えるICT環境が紹介された。「私たちが在宅勤務を経験し、重要と感じたことは、離れた場所にいてもチームのメンバーとつながっている感覚がもてることです。当社では自社開発したLync(リンク)で、場所を問わないコミュニケーション環境を実現しています」

デモ画面では、チームのメンバーの様子が「在席」「会議中」「不在」で色分けされ表示。色表示はスケジュール管理ソフトのアウトルックと連動し、自動で切り替わる。相手の状況がわかれば、電話、チャット、メールと最適なメッセージ方法を選ぶことができる。また、リンクでは資料共有が画面上ででき、ペン入力によるホワイトボード機能もある。録画機能による動画共有、グループでのビデオ会議も可能だ。

次に社内で広く使われている、企業向けソーシャルネットワーク「Yammer」を輪島氏が紹介。これは安全で活発な社内コミュニケーションを可能にする。「テキスト、ファイル、写真など自由に投稿、互いにコメントできます。チームでニュースを回覧し、浮かんだアイデアを書き込んで共有することも可能。臨場感あふれるカジュアルな情報交換ができるので在宅勤務をしていてもチームとの一体感を感じることができます。さらに万全のセキュリティ対策も実現されているので安心して情報交換ができます」

講演の最後には、来場からの質疑応答が行われた。

Q:私の会社では「辞めて専業主婦になりたい」「管理職はなりたくない」という女性が多い。女性の意識の改革はどう推進すればよいですか。

小室:仕事も責任もきついので、「今の管理職の形態」ならば、なりたくないということですね。私も女性の管理職講座を開いていますが、そこでは「新しい管理職像」を一緒に考えます。今後はコーチング型のように、メンバーに活躍を仕向けられる管理職が求められる。これは女性に向いたマネジメント法です。

Q:テレワークでも長時間労働になることはあると思います。長時間労働を止める方法、またその意識を変える方法を教えてください。

パネルセッションの様子佐藤:当社では、在宅勤務の導入で労働時間が増えることはありませんでした。長時間労働をなくすには、長く働くことで評価される見方をなくし、新たな評価基準を導入する必要があると思います。

小室:働き方見直しのステップは、「現在の働き方の確認→業務課題の抽出→会議で働き方の見直し→施策の実施」で、このサイクルを回すことが重要です。職場で話し合い、同意の上で導入すること。また、時短の具体策としては朝・夜メールの方法があります。その日の仕事予定を15~30分単位で切り出し、朝、上司や同僚に一斉メール。夜はそこに仕事の結果を書き加え、再度メールで報告します。これをやると時間の自律性や仕事の優先順位付けのスキルが磨けます。

会場で熱心に耳を傾ける来場者の様子からも、WLBへの高い関心が感じられたセッションとなった。

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