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パネルセッション[D]

経営戦略におけるダイバーシティ・マネジメントの重要性
~女性活用推進とワーク・ライフ・バランス支援~

性別や年齢、国籍、ワークスタイルなどにこだわらず、多様な人材を活かして従業員の能力を最大限に発揮させる――。いま、「ダイバーシティ・マネジメント」が企業経営における重要な戦略の一つとして、大きな注目を集めている。今回のパネルセッションでは、その中でも特に「女性活躍推進」と「ワーク・ライフ・バランス支援」というテーマに焦点をあて、東芝、パシフィックコンサルタンツ、大日本印刷の担当者がそれぞれの取り組みを紹介。ワーク・ライフ・バランスに関する著書などでも知られる、東京大学大学院の佐藤博樹教授がファシリテーターを務めた。

【パネリスト】
岡崎仁美氏 photo
株式会社東芝 多様性推進部 きらめき企画担当 グループ長
西田 薫氏(にしだ・かおる)
1986年 株式会社東芝入社、事務機器設計部配属。
1989年 技術管理部に異動し、技術者教育の企画運営、技術者採用などの業務に従事。
2002年 東芝テック株式会社に転籍、製品開発におけるプロジェクトマネジメント手法の構築を手掛ける。
2009年 株式会社東芝多様性推進部に異動。ダイバーシティやワーク・スタイル・イノベーションを担当し、女性、外国人、障がい者等多様な人財の活躍推進やメリハリある効率的な働き方改革を展開している。

栗田卓也氏 photo
パシフィックコンサルタンツ株式会社 事務管理本部
労務・法務部担当課長(WLB推進事務局)
油谷 百百子氏(あぶらや・ももこ)
1996年パシフィックコンサルタンツ株式会社入社 総務部配属。
2000年人事部と総務部が統合し、事務管理部に名称変更。
2010年事務管理本部 労務・法務部に名称変更(総務部、人事部、労務・法務部の3部制)。
入社以来、本社で総務・人事・労務に携わる。2010年から通常業務と平行し、ワークライフバランス推進事務局として、ワークライフバランス推進の企画運営を行う。同年6月に東京都の推進する「働き方の改革・東京モデル」事業に選定され、組織の活性化のため尽力中。

渡辺茂晃氏 photo
大日本印刷株式会社 労務部
本田 有香氏(ほんだ・ゆか)
1998年 大日本印刷株式会社 入社 商業印刷営業部門配属。
2003年 労務部
一般職の人事制度企画および運用を担当。主として、ダイバーシティ推進の企画運営を行っている。
現在、短時間勤務制度を利用中。
(例)短時間勤務制度利用者とその上長への研修、メンター育成プログラム、次世代ワーキングスタイル実践プロジェクト、仕事と育児、介護の両立支援等

【ファシリテーター】
小島貴子氏 photo
東京大学大学院情報学環教授
佐藤博樹氏(さとう・ひろき)
1981年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。81年雇用職業総合研究所研究員、83年法政大学大原社会問題研究所助教授、88年法政大学経営学部助教授、91年同教授、96年東京大学社会科学研究所教授、2011年より現職。専門は人的資源管理。兼職として、内閣府男女共同参画会議議員、厚生労働省労働政策審議会分科会委員、内閣府ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員など。著書として、『男性の育児休業』(共著、中公新書)、『職場のワーク・ライフ・バランス』(共書、日経文庫)、『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(共編著、勁草書房)、『人材活用進化論』(日本経済新聞出版社)など。

多様な人たちが活躍できる組織・風土をつくることが重要

セッションはまず、佐藤教授による「ダイバーシティ・マネジメントとは何か」に関する講演から始まった。

パネルセッション photo 佐藤:ダイバーシティ・マネジメントには、誤解されがちな点があります。「外国人を採用しよう」「女性を増やそう」など、社員構成を多様化することばかりを考える企業が少なくないのです。しかし、属性に限らずに活躍できる組織・風土ができていれば、結果として日本人ばかりでもいい。問題は適材適所――つまり、適材をどこから選ぶのかということです。これまでは例えば男性や、フルタイムで働いて残業もできる人材の中から選んできましたが、それを変えなければなりません。つまり、適材の範囲を広げるということです。そうすると、多様な人たちが活躍できる組織・風土をつくることにつながるのです。

今日はその中でも、「女性活躍推進」と「ワーク・ライフ・バランス支援」を取り上げたいと思います。二つの指標の充実度から男女の雇用状況を見ると、「特定の女性しか活躍できない企業」「女性は補助的な仕事しかできない企業」「長年の勤続が女性には難しい企業」などに分類できることが分かります。二つの指標の両立と均等が大事ですが、まだまだアンバランスで女性の能力を活かしきれていない企業が多い。これは、データからも明らかです。では、二つの指標にどう向き合えばいいのでしょうか。パネリストの方々に各社の取り組みをご紹介いただきながら、会場の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

東芝が実践する、女性役職者候補の予備軍育成のための研修制度

最初に自社の取り組みについて語ったのは、東芝の西田 薫氏。同社では2004年に男女共同参画推進の専門組織を設置したのち、多様性に幅広く取り組むべく進化させた体制を整えている。今回は、「女性活躍推進」にポイントを絞って、取り組み事例を紹介した。

西田:弊社が女性活躍推進に関してまず行ったのは、新卒採用者数を増加させることです。女性の採用比率の目標は事務系で50%、技術系で25%と設定。2013年度は事務系が51%、技術系は20%でした。国内の理系大卒女性の割合は約13%と言われますから、技術系の20%という数字は健闘していると思います。二つ目は、育成です。初期には役職者候補者層向けの研修を2年間実施しましたが、現在は役職候補予備軍を育成することを目的に、5~10年のキャリア層全員を対象に実施。中期的視点でキャリアを主体的にデザインし、高い意欲を持ち続けるためのプログラムを盛り込んでいます。社員からは「働き方の視点がガラリと変わった」と高く支持されています。

また、「ワーク・スタイル・イノベーション」も推進しています。これは効率的でメリハリのある仕事をして自らを高め、さらに付加価値の高い仕事につなげるという正のスパイラルを創出するための活動です。育児や介護と仕事との「両立支援制度」も充実を図っています。女性従業員のアンケートを参考に着手し、現在では出産した女性従業員のほぼ100%が勤続している状況です。

西田薫氏 photoもちろん経営戦略としても、当社グループがグローバルトップとなるためにはダイバーシティが必要不可欠と捉え、さらに多様な創造力での相乗効果の発揮が重要になると考えています。このような取り組みは、社外からも高い評価をいただきました。3月には経産省「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞。日経の「働きやすい会社調査」ランキングでは直近3年は3位以上を獲得しています。また、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011」の大賞、APECの「女性イノベーター賞」を受賞するなど、女性従業員の活躍が拡大しています。

佐藤:政府も、女性管理職の割合を3割まで増やすよう企業に促しています。採用も大事ですが、その後、社員が管理職などにキャリアアップしていくには、勤続のための現状分析や課題検証も必要です。課題に対して、特に工夫されている点などはありますか。

西田:当初の課題は、なかなか女性が昇格しない状況を見てきた世代にとって、女性が管理職になることが目標になかったことでした。しかし、役職者候補者層向けに実施した研修によって「女性も管理職を目指していいんだよ」とメッセージを伝えることができたと思います。現在の問題意識は、実際にライフイベントに直面する時に仕事を続けることの不安や、バランスの取り方への悩みですね。それに対する考え方を現在行っている5~10年のキャリア層を対象とした研修では伝えています。

外部や周囲を巻き込み「働き方改革」を実現する、パシフィックコンサルタンツ

続いて、建設コンサルタント業のパシフィックコンサルタンツの油谷氏が、3年前にスタートした「働き方改革」のプロジェクトについて発表。中央官庁や地方自治体が主な取引先であるという事業の性格上、長時間残業が当たり前のような風土が根付いていた同社だっただけに、東京都の制度活用や業界を巻き込んだ運動など、その手法にはさまざまな工夫が見られる。

油谷:働き方の見直しプロジェクトのきっかけは、組合と共催でワーク・ライフ・バランスに関する講演会を行ったことでした。社内に広げたいと部門内で検討して、社長に提案。社長直轄プロジェクトとしてスタートできたことと、働き方改革の東京モデル事業に選んでいただいたことは、追い風になったと思います。具体的には、働き方に問題を感じているグループに立候補してもらい、グループプロジェクトとして外部コンサルタントに入っていただき、月1回働き方を見直す時間を持ったことは大きかったと思います。問題解決策の検討や意識の共有を図ることができました。

油谷百百子氏photoテレビ番組でも取り上げられたのですが、管理者層向けの研修は、「ワーク・ライフ・バランス講習会」などと名づけると優先度を下げてしまう人が出てくると考え、「内部統制研修」としました。他の研修も、同じように考えてネーミングしています。この研修でも、外部の弁護士にお話しいただいたことは効果的でした。「長時間残業をなくすのは管理職の仕事だ」とズバリ言われ、改めて当事者意識、問題意識に気付くことができたからです。

業界や発注者への働きかけとしては「Work Diet」というリーフレットを作って配布しました。そこから新聞に取り上げられたり、他社から問い合せを受けたりするようにもなりました。そこで「業界をあげて推進しましょう」という話も積極的にしています。この3年間の最大の成果は、コミュニケーションの活性化が効率性に繋がったこと。残業時間は大幅にとまではいきませんが減少傾向にあります。

佐藤:制度を作るだけではなく、それを持続的に続けることこそが重要だと思います。持続を意識した上での工夫などはありますか。

油谷:研修だけに頼っていてはダメですね。たとえば、当社では社内イントラのトップページ広告を2週間に1回更新し、「早く帰ろう」などといったメッセージを、毎回毛色を変えた言葉とデザインで発信し続けています。他には、退社時間宣言ボードなど推進グッズを配布したり、ワーク・ライフ・バランスの標語を集めて、カレンダーに載せて社内に配ったり。重要なのは、常に何か活動していることを見せることではないかと思います。

大日本印刷の“活用しやすさ”を考えた短時間勤務制度

最後に事例を発表したのは、1999年以来、大卒の女性採用割合が3割を超えている大日本印刷の本田氏。「従業員にとって使い勝手がよさそうだ」と佐藤氏も評する短時間勤務制度の利用者は、ここ5年で急速に増えてきたという。

本田 香氏photo 本田:弊社には、育児または介護の必要な従業員を対象とした短時間勤務制度があります。1日の所定労働時間を短縮できるほか、時間外労働や休日労働も免除可能です。職務内容に応じた3種類の短時間勤務制度があり、約8割がフレックスタイム制短時間勤務制度を利用しています。フレックス制短時間勤務とは、月間の所定労働時間を通常勤務者より短く設定した上で、労働時間を月間清算する勤務制度です。突発的な子どもの病気に対する看護や通院付き添いにも柔軟に対応できると好評です。また、労使で協議を重ね、半日単位の年休の取得可能回数を増やしたり、時間単位年休を導入したりした他、在宅勤務制度を導入しています。短時間勤務制度自体、社内ではまだ新しい働き方というイメージがありますので、制度利用者や対象者の上長へのヒアリング、アンケート、グループインタビューから制度内容に対する意見を集め、今後の制度運用の改善に資するよう努めているところです。

弊社では、数年前までは、「時間とアウトプットは必ずしも比例しない」という考え方から、短時間勤務制度利用者であっても通常勤務者と同様の目標設定、評価基準を適用していましたが、短時間勤務利用者の一部からは「短時間勤務制度を適用すると評価が上がりにくいのではないか?業務内容が限定的となるのではないか?」といった声がありました。そこで、2010年の目標管理制度から、短時間勤務制度利用者について、短縮時間によって一律に目標設定および評価基準を設けず、上長と本人で話し合いながら、業務遂行上の制約条件に応じて目標レベルを100%(通常勤務者と同じ)、90%、80%の3段階で設定するようにしました。

また、短時間勤務制度の利用者は全体の中では少数であり、管理職の戸惑いや運用方法にも多少の偏りがありました。ついては、公平な制度運用を目的として、昨年からは、利用者と管理職を対象としたセミナーもスタート。セミナーを通じて、制度利用者からは「他の人より短時間で退社するのに同僚に迷惑はかけられない」「短時間勤務であるのに高いレベルの仕事に就きたいとは上長に言いにくい」という声も一部には聞かれました。また、「短時間勤務制度利用者は特殊な存在だ」と考えている管理職が一部にいることも分かりました。さまざまな課題がありますが、根幹となる人事制度の整備・浸透に取り組みつつ、円滑な制度運用を目指し進めていきたいと思っています。

佐藤博樹氏 photo佐藤:フルタイムに早く無理なく戻れるような、子育てと仕事の両立を考えることも大事だと思います。そういった取り組みなどは行われていますか。

本田:女性だけが育児をするという思い込みがまだまだありますので、夫婦でどのような働き方を目指せばいいのかを支援したいと、夫婦で参加するセミナーを開いています。メンター制度によるケアも取り入れています。

佐藤:各企業の取り組み事例をうかがってきましたが、今日の話を参考にしながら、会場の皆さんには「1社だけ」「制度だけ」「本人だけ」ではなく、社会全体として「女性活躍推進」や「ワーク・ライフ・バランス支援」に取り組んでいってほしいと思います。本日は、ありがとうございました。

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