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特別講演[C-4]

グローバルの成長チャンスを先導する若手社員の創り方

藤岡 長道氏
株式会社ワークハピネス 取締役
藤岡 長道氏(ふじおか・ながみち)
プロフィール:百年後の小学生にとって現在の企業の大人たちは何を残せるのかという疑問をもって、企業の組織風土改革をライフワークに決めた。新分野の開拓、危機に直面した組織の改革に燃える。野村総合研究所秘書室長、人材開発部長、野村證券企業調査部長、人材開発部シニアHRDアドバイザーを経て現職。2社の取締役も経験。

近年、日本の時価総額が大幅に低下

本日は、「グローバルの成長チャンスを先導する若手社員の創り方」というテーマでお話しいたします。私はこれまで野村総合研究所の秘書室長、人材開発部長、野村證券企業調査部長、人材開発部シニアHRDアドバイザーといった職務を経験してきました。投資、組織開発・人材開発、リスク管理、システム管理と、その内容はさまざまですが、私が仕事を通じて感じてきたのは、やはり「企業は人である」ということです。

では、最初に世界の時価総額の構成比をご覧ください。1995年当時、日本は世界の中で23.96%ものシェアを持っていました。ほかは欧州25.45%、米国41.54%、アジア3.82%。それが2011年になると、日本は7.51%に急落し、逆にアジアが10.49%と大きく増加。ほかは欧州25.14%、米国45.02%。要するに、今の日本は投資対象から外れ、「ジャパン・ナッシング」と呼びたいほどにその将来も期待されていないわけです。

続いて、世界の時価総額上位100社を見てみましょう。1位はアップルで5500億ドル。2位はエクソンモービルで4300億ドルです。エクソンモービルはさまざまな資源を持っていますから、この評価も納得かもしれませんが、アップルに資源はありませんね。これはまさしく企業は人であることの証左であり、人が生み出すブランド力、発想力、イノベーション・マインドといったものを期待されてついた金額です。対して日本企業は上位100社の内、4社しか入っていません。

真のグローバル人材は「希望のタネをまく」

世界レベルのスポーツであるメジャーリーグやサッカーでは、世界中から俊英が集められていますね。その結果、世界最高レベルのチームができる。私は以前、野村・リーマン統合時のグローバルトレーニングチームに手を挙げて、メンバーとして参加したことがありました。ここでは日本人はマイノリティーで2人だけ。男であることもマイノリティーで3人だけ。旧野村出身者もマイノリティーで3人だけのチームでした。集まったのは、国籍も住んでいる国も違うメンバーばかりでしたが、とても優秀なスタッフでした。

それと比べると日本の仕事では、みんな生まれも住まいも同じで、「ダイバーシティ」がないんですね。だから発想も広がらない。それに日本で人を指導する時は、弱み克服型で教えますが、グローバルトレーニングチームの考え方は強みを徹底して伸ばすということです。その点が違います。

藤岡氏/講演 photoこれまでいろいろな経験をしてきて思うのは、グローバル人材とは、世界を舞台に、国境や民族を超えて、明日の世代に向けて希望の種をまく人だということです。例えて言うなら、日本人のメジャーリーガーへの道を開いた野茂選手がそうですね。音楽家で言えば指揮者の小澤征爾さん、ファッションデザイナーなら森英恵さん。みんな最初から世界を視野に入れていた人たちです。

日本では、過去にこんな話もあります。東京が戦後の焼け野原だった頃、当時の日銀の一萬田総裁は「日本で乗用車生産は無理だ。トラックだけ作りなさい」と自動車メーカーに融資を一切しませんでした。すると、当時の名古屋支店長が「それはおかしい」と自分の裁量でトヨタに融資をし、その後、この支店長はクビになりました。この支店長はこれからの国家のことを考えた「真のバンカー」と言えるでしょう。

このような腹の据わった、明日を創れるような人材を、皆さんは創ろうとしているでしょうか。現在は経済も環境もあらゆる問題が国境を超えていきます。これからグローバルに活躍し、明日を創れる人材を創るのであれば、英語力は後回しにしてでも、このような腹の据わった本物の人材を創らなければなりません。

「志と戦略力、柔軟性」で人を創る

かつて日本は、企業同士の製品・サービスの戦いで勝っていました。ソニーにもホンダにも、ジャパニーズ・クオリティーがありました。しかし今は「本社対本社」で戦う時代になっています。要するに、開発と開発、営業と営業、広報と広報といったように部署ごとに戦っているのです。人事であれば制度づくりや研修の中身で「どちらが働く人にとって魅力的か」というような面で、グローバルに戦っているわけです。

しかし、人事は非常に重要な部署にも関わらず、本社同士の戦いの中ではもっとも遅れている部署かもしれません。もっと危機感を持たないと、日本は負けてしまいます。先日アメリカの友人に「日本企業の何がほしいか」と聞いたのですが、「工場だけほしい」という答えが返ってきました。本社のマネジメント機能は、自分たちのほうが優秀だと思っているのです。

それでは、グローバル社員を創る条件とは何でしょうか。その答えは三つあります。一つ目は「高い志」で、上司が高いゴールを示すことで生まれます。二つ目は「高い戦略力」で、責任ある役割を与えることで生まれます。三つ目は「高い柔軟性」で、深い自己理解を促すことから生まれます。これら3点を30代まで、できれば25歳~35歳の間に確立させたいものです。

一つ目の「高い志」は、どうしたら作れるのでしょうか。それは「この仕事を通じて何を達成するのか」を考えて、ゴールから逆算してみることです。達成するゴールは事業観、世界観、歴史観、人間観、倫理観などから考え、そして上司が「おまえならできる」と盛り上げることが重要です。ここで危険なのは、直属の上司では日々のマネジメントに追われ、志が目の前の数字や目標を達成することになりやすいことです。そのため、直属の上司よりも一段上の上司が盛り上げるのがベストでしょう。そこで盛り上げながら、「根拠のない自信」を与えるのです。これがないとジャンプできません。制度を回すだけでは、「根拠のある自信」しか生まれてきません。

藤岡氏/講演 photo二つ目の「高い戦略力」とは何か。ここでは仮説構築力、論理的展開を考える力が問われます。クリティカルシンキング、システムシンキング、そして判断力です。また、実行力も問われます。経営資源の設計、調達、利用、そして実務能力、タイムマネジメント、リスクマネジメントがその要素となります。

最後の「高い柔軟性」とは何か。これには、三つのケースがあります。一つは相手に対する柔軟性、もう一つは状況に対する柔軟性、最後は自分自身に対する柔軟性です。相手に対する柔軟性という点では、自己理解&他者理解が重要です。そして、Mutual Respect(相互尊敬)も大事。これはコミュニケーションスタイルをコントロールすることであり、これができなければ同じタイプの人としか合わせられません。状況対する柔軟性では、リフレーミング(フレームを変える)、創造的行動、前例にとらわれない、過去の成功パターンを否定できる、といった点が問われます。最後の状況に対する柔軟性は、自ら成長・変化を続ける(居着かない)力です。

「心に火をつけて」部下の志を喚起する

それでは、グローバル人材を鍛える方法とは何でしょうか。その一つは、異動を過去の事例を踏襲しただけの予定調和にはせず、例え予想外であったとしてもその人にとって必要な様々な体験をさせることです。そのうえで高密度に、スパイラル上に体験を集積させていき、能力が突出したグローバル人材を創ることが大事です。予定調和の異動によっては、世界で勝ち抜くのが困難な、平均的なグローバル人材を創ることになってしまいます。

そして鍛える上で効果があるのは、早い段階で多様な文化の中で働くことです。マルチカルチャーの中で、自分を磨き、もまれ、その中で、あの人は何が「快」で何が「痛み」か、といったことがわかってくると、接し方も違ってきます。実は私が55歳を過ぎてひたすら勉強したものは、心理学でした。ファイナンスをいくら究めても、組織は幸せになれません。それは手段なのだと、ある時から気付きました。学生の頃、勉強やスポーツができた人はそれなりの型を持っています。しかし、社会人になってその手法が通じないと挫折してしまう。もっとフレキシブルに対応できるよう、意識を強く持つことも必要です。

最後に、グローバル人材育成で、今日からできることを三つご紹介しましょう。一つ目は部下の志を喚起すること。この会社で何をしたいのか、何を成し遂げたいのかを確認します。ノーベル賞をいくつも出しているイギリスの有名な研究所の話ですが、そこでは壁にこんな言葉が貼ってあるそうです。「普通の教師はしゃべる。よい教師は教える。偉大な教師は心に火をつける」。それほどまでに喚起は大切な作業だということです。二つ目は自分自身の志を高めること。三つ目は半年前の自分と現在の自分を比べて、何が成長していたかを確認することです。そして半年後の成長目標も設定します。皆さんも、ぜひ実践してみてください。本日は、どうもありがとうございました。

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