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パネルセッション[F]

「グローバルに活躍できるリーダーをいかに育成していくのか」

【パネリスト】
アキレス 美知子氏 photo
株式会社資生堂 執行役員 広報、お客さま情報、環境、CSR、風土改革担当
アキレス 美知子氏(あきれす みちこ)
プロフィール:上智大学比較文化学部経営学科卒業。米国Fielding Graduate Institute組織マネジメント修士課程修了。富士ゼロックス総合教育研究所で異文化コミュニケーションのコンサルタントとしてキャリアを始める。30代後半から、グローバル企業で人事の様々なキャリアを重ねる。シティバンク人事部アシスタントヴァイスプレジデント、モルガンスタンレー証券人材開発ヴァイスプレジデント、メリルリンチ証券採用・人材開発ディレクター、住友スリーエム人事統轄部長、3M Asia Pacificの人財マネジメント統轄部長などを歴任。あおぞら銀行常務執行役員を経て、2011年4月より現職。また、グローバルリーダー育成と活躍を推進するNPO法人GEWELの理事も務めている。

松崎 毅氏 photo
キッコーマン株式会社 人事部長 キッコーマン・ビジネス・サービス株式会社 取締役人事部長
キッコーマン食品株式会社 人事部長
松崎 毅氏(まつざき つよし)
プロフィール:早稲田大学商学部卒。1981年4月キッコーマン株式会社入社。研修後、同年6月大阪支店販売課に配属。1984年2月京都営業所に異動し、通算10年間営業に従事する。1991年3月に人事部人事課採用担当に着任し、1992年10月から人事企画としてCDP(Career Development Program)制度や選抜研修などの構築を手がける。1997年から3年間の営業企画部宣伝課勤務を経て、2000年6月に人事部復帰。その後、勤労給与グループ長として労政統括、人事教育グループ長として採用、異動、研修などを統括する。2008年6月より人事部長に就任。2009年の持株会社制移行に伴い、現在3社の人事部長を兼務している。

フリービット株式会社 取締役(人事担当/長期戦略リサーチ担当)
酒井 穣氏(さかい じょう)
プロフィール:1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、オランダTilburg大学Tias Nimbas Business School経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事した後、オランダの精密機械メーカーに転職、2000年オランダに移住。2006年にウェブアプリ開発のベンチャー企業を創業、最高財務責任者(CFO)としての活動を開始。2009年、フリービットに参画するために帰国。東大LB、慶応MCC、中央MBAなどでゲスト講師担当。特定非営利活動法人NPOカタリバ理事。著書には、ベストセラーとなった『はじめての課長の教科書』のほか、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』『リーダーシップでいちばん大切なこと』『ご機嫌な職場』など多数。無料メルマガ「人材育成を考える」も配信中。

【ファシリテーター】
古森 剛氏 photo
マーサー ジャパン株式会社 代表取締役社長 シニアパートナー
古森 剛氏(こもり つよし)
プロフィール:1968年福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業、ペンシルバニア大学ウォートン校卒業(MBA、ファイナンス専攻)。日本生命保険相互会社を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。国内外の企業に対し、幅広い分野でのプロジェクトに多数従事。その後、マーサー ジャパンに入社。M&A、グローバル人事分野を中心に多数の案件を手がける。2007年3月に代表取締役社長就任。スコッチ文化研究所認定ウィスキー・エキスパート、NPO法人一空会空手道2段。

グローバルリーダーの要件とは何か

古森:近年、ビジネスのグローバル化が急速に進んでいます。そこで企業に求められるのは、“グローバルに活躍できるリーダー”の育成です。本日はグローバルリーダーを育成する方法やその課題について、パネリストの方々にうかがっていきたいと思います。ではまず、グローバルリーダーの定義についてお聞かせください。

井関 隆明氏/講演 photo酒井:現在は大変革期にあり、グレートリセットとも呼ばれています。これまでの価値観や仕事のやり方に、大きなリセットが起こりつつあるのです。しかし、そのような変革の中でも、グローバル化は進んでいます。決して逆流することはありません。グローバルと言うと日本ではない世界での活動を指すように思いがちですが、それだけではありません。日本にいて、ここがそのままグローバル化されるということでもあります。だから、グローバルリーダーといっても、まず日本国内で通用して、きちんと成果が出せることは重要な要件になります。

もう一つはやはり、語学力があるということですね。ビジネスでも自分の言葉で話せることは、相手と人間関係を築く上でとても重要です。また、何かあった時、自主的に海外に飛んでいくくらいの思い切った行動力も必要です。これらは、グローバルリーダーが持つべき最低限の要件だと思います。

松崎:キッコーマンでは、すでに海外展開を行っていましたが、グローバル人材の育成に 関しては、昨年から集中して始めたところです。私たちのグローバルリーダーの定義は、大きく言えば「国内外を問わずどこでも能力が発揮できる人材」です。海外だけでなく、国内でも力を発揮できる人材をグローバル人材と定義し、その要件を六つあげます。

一つ目はコミュニケーション能力。語学ができるだけでなく、はっきりとモノがいえ、相手に伝えられること。二つ目はリーダーシップ。いろいろな国籍の人をまとめていく力です。三つ目は異文化への適応力。四つ目は専門性。現地スタッフからリスペクトを受けるような能力のことです。そして五つ目はやはり体力ですね。食の会社ですから、何でも食べられるといったことも大事になります。最後は楽天性です。やはり仕事は厳しいですから、その中で明るく前向きに考えられる人であることはとても重要です。

アキレス 美知子氏 photoアキレス:資生堂では今年4月に新たな経営理念を策定、それを世界共通の理念としました。その中にバリューとして「多様性こそ強さ」があります。実際、当社の全従業員4万4000人のうち、4割以上は海外の人材で、売上の43%は海外です。そのため、社員のグローバル化は重要な課題となっています。ただし、資生堂としてのグローバル人材の定義は現在再構築中ですので、ここでは私のこれまでの経験を元にお話したいと思います。

私が考えるグローバルリーダーの特徴は次の七つです。一つ目は戦略的思考。「先を見る」「深く見る」「客観的に見る」ことができる人です。二つ目はコミュニケーション力。三つ目は異文化適応力。四つ目はリスクとバランス。どのリスクを取るか、どれを取らないかの判断力が問われます。五つ目は実現力と結果責任。話だけでなく、きちんとプロジェクトを実現していく力があるということです。六つ目はバーチャルチーム。文化や習慣が違い、距離が離れているメンバーでもうまくリードし、チーム力を高めることができる力です。七つ目は現実的楽観主義。グローバルな展開では厳しい場面が多くありますが、そんな時でもユーモアを忘れないことが、チームメンバーのモチベーション維持に役立ちます。現実を直視しながらも、前向きに行動していけます。

具体的な人材育成の施策とは

古森:それぞれ異なる経緯からグローバルリーダーを育成されていますが、その要件には共通する部分もありますね。それでは、具体的な育成の施策についてお聞かせいただけますか。

松崎 毅氏 photo松崎:まず、施策の前にお話したいのが、これらの施策のベースとしてあるのが「企業の理念やビジョンをきちんと伝える」ということです。これを世界中の社員に浸透させることが重要だということをまずお伝えしたい。

施策についてですが、まず採用では、現在、総合職コースの社員には、管理職も含めて、全員がグローバル社員であると伝えています。これも一つの意識改革です。そして、外国籍社員を増やすアクションを始めました。育成では、社員が若いうちに海外に行くチャンスを多く作りたいと思っています。一度は海外に行って修羅場を体験してもらいたい。また、人材の異動をスムーズに行うために、ポストのポジショニングを行い、人材マップを作ろうとしているところです。外国人採用では、日本人と同じように世界中の会社の幹部候補生として、配置・育成していくことを考えています。

酒井:フリービットも、理念を伝えることを重視している点は同じです。理念はそのまま行動に表われます。普段から、自分が仕事でどんな判断をするのかについて、現地スタッフが見ているという意識を持っておくべきです。育成については、自然とグローバル化を目指せるような環境づくりを行いたいと思っています。当社では5年以内に中国に本社機能を移す構想がありますので、社員も今から本気でグローバル化を考えないと間に合わないのです。

そこで、人の配置では現在のグローバルリーダーの近くに、次期リーダー候補を配置したり、社員個人のネットワークに海外の人がどれくらい入っているかをモニタリングしたりするなど、あらゆる手段を使ってグローバル化を促進させています。実は、来年入社する内定者が自費で中国に行き、市場をレポートしたというトピックスがあったのですが、そのレポートを社内報に載せ、社員のグローバル化への意識を高めるといったことも行いました。

パネルセッション photoアキレス:私が考える育成ポイントは七つあります。一つ目はトップを巻き込むこと。グローバル人材育成に対してトップの腰が引けていては説得力がありません。社員も本気になりません。二つ目は最適な推進者、上司を選ぶこと。海外勤務経験がある上司の下につけるなど、理解と経験のある人を周囲に置かないと人材の強みをうまく活かせないし、定着しないのです。三つ目は素養を見抜き、採用すること。ここで大事な素養は「好奇心」「行動力」「向上心」の3Kですね。候補者の個性や経験は違っても、この素養は将来グローバルに活躍する人材に共通していると思います。

四つ目は早期に海外赴任を経験すること。アタマが柔らかい若いうちに2-5年行って、失敗も含めて様々な経験することです。できれば数年後、再度マネジャーとして赴任し、現地のチームをリードする役割を担うのが理想です。五つ目は外国人をチームに入れること。コミュニケーションをとるには、英語を話す必要がありますので、社員の英語が上達する、異文化の理解が進むなど、内なるグローバル化が進みます。六つ目は冒頭でふれたグローバルリーダーのスキルを身に付けること。いろいろなスキルはありますが、基本はいかに相手と信頼関係がつくれるかです。七つ目は人事の施策として、昇進の基準に加えること。例えば、以前いた会社では部長以上の昇進条件に「海外勤務経験2ヵ国以上」という条件が入っていました。そして国を超えた育成プログラムを戦略的に実施していくことが重要です。

本気になることが、言葉を乗り越える道

古森 剛氏 photo古森:皆さんからお話をうかがっていると、人材のグローバル化を進めるには、人事がリーダーシップを取るしかないと思わされます。最後に、海外で活躍するにはどうしても言葉の問題を解決しなければなりません。この点はどのようにお考えですか。

松崎:語学は確かに大事なものですが、環境さえ整えば多くの人はある程度克服できるのではないかと考えています。それよりも海外のビジネスを行う上で優先順位が高いのは、やはり仕事ができる人を選ぶということです。決して語学を軽視するものではありませんが、まずは国内の仕事で成果をあげた人を優先していくことでグローバル化に臨んでいきたいと思います。

アキレス:私が以前いた会社では、管理職昇進の要件の中でTOEICの点数はあいまいになっていました。そこで、専門家の調査結果を元に、「半年後は550点、1年後は600点を昇進要件にします」と決めたのです。反対意見もありましたが、なんとか導入し3年経過してみると、全対象者のTOEICの平均点は100点以上も上がっていました。これは、管理職昇進の要件というきっかけをつくり、早いうちに勉強することを奨励した結果です。ある程度のポジションになってからではやはり大変です。最初に苦労した方が、後で苦労するよりも絶対に楽だと思いますね。何より、英語ができると本人のキャリアの選択肢が広がります。

酒井:私はオランダに移住し、現地の会社に9年ほど勤めた経験がありますが、そのとき感じたのは「あ・うんの呼吸で通じるなんてありえない」ということでした。最初はあまり言葉が話せなくて、同僚から子ども扱いされたのです。やはり仕事の現場で、自由に自分の意思を伝えられるのは大事なことです。また、語学の学習は長期的な自分への投資という側面もあります。そのような長期的な計画を、日々の生活に組み込めない人は、長期スパンの仕事もできないのではないでしょうか。その点で、語学ができる人と、仕事ができる人とは、ベーシックな部分で共通しているように感じます。

古森:皆さんのお話をうかがっていると、グローバル人材の育成に正解はないと思い知らされます。その中で企業の人事部には、先導役としての役割が期待されているのは間違いありません。今日のお話が参加された人事の皆さんの参考になることを期待します。パネリストの皆さん、本日はどうもありがとうございました。

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