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特別講演[4]

「次世代グローバルリーダーは新興国で育てる
~育成のための6つのステップ~」

アルー株式会社 代表取締役社長
落合 文四郎氏(おちあい・ぶんしろう)
プロフィール:東京大学大学院理学系研究科卒、(株)ボストンコンサルティンググループ入社。 2003年10月、(株)エデュ・ファクトリー(現・アルー(株))を設立。現在、海外新規事業開発、中国事業(上海現地法人)、グローバル人材育成、従業員エンゲージメント向上支援の統括を行う。

グローバル人材育成のための6つのステップ

落合 文四郎氏/講演 photo本日は、グローバル人材およびリーダーの育成ポイントと、新興国での育成法をご説明したいと思います。最近はグローバル人材の意味合いが変わってきています。以前は海外専門要員という感覚でしたが、今では国内・海外にかかわらず全員が目指すべき姿です。また、欧米などの先進国よりも、BRICsを中心とした新興国の重要度が高まってきています。人材も以前は40代以上のマネジメント層が中心でしたが、最近は20~30代の若手中堅層も対象になっています。

グローバル人材の育成には、どのような体系が必要でしょうか。私たちがご提案するのは図の6ステップです。解説すると、ステップ2「コミュニケーションの基本習得」では、日本人らしい「あうん」の呼吸は海外では通じませんから、論理的な説明力の習得が必要になります。また、ステップ3「自文化理解」では、日本を紹介することはもちろんですが、話題となる事柄に自分なりの見解も求められます。例えば「福島は今どうなっているか」「タイ洪水での日本への影響は」といったことにも、答えを用意しておかなくてはなりません。

講演資料 ステップ4「異文化理解」と5「多様性の受容」では、海外の文化を肌感覚で理解できるか、目の前の出来事を咀嚼して取り込めるかが問われます。これは私の経験ですが、中国でレストランに入ったとき、食事をしている人たちは食べかすをテーブルの上にそのまま置いていました。私は、日本と感覚が違うので、正直「汚いな」と思ったのですが、実は私以外の人は皆そうしていたのです。このケースのように、多様性として受け入れる心構えが必要です。

30歳までに海外経験を積ませる

私たちはグローバル人材へのステップとして、0から5の基本ステップは30歳までに経験するべきだと考えています。そこで最初の施策として、0~3のグローバル基礎教育を入社1年目~5年目の若手社員全員に受けさせることをお奨めしています。方法はすべての階層別研修に、グローバルがテーマのコマを必ず入れること。これにより会社側のメッセージも伝わります。

では、グローバル基礎教育に盛り込むべき内容は何でしょうか。答えは二つ。一つ目はグローバルマインドの醸成です。グローバルな視野を持つと同時に、将来は自分も行くのだという意識を持たせることは重要です。二つ目はコミュニケーションスキルの向上。個別の論理的な発信力を育成し、国ごとの文化も「いい・悪い」ではなく「違い」であると捉えさせます。

ここで問題は英語の習得ですが、大事なことは具体的な目標設定です。ビジネスでは最低限意味が通じればいいので、私たちが考える目標はノンネイティブ英語の習得。英語が母国語でない人と話せるレベルです。言葉の習得には子どもが親から言葉を学ぶような「経験的学習」と、文法から考える「論理的学習」がありますが、これなら論理的学習で十分に学べます。

次はステップ4・5を学ぶための施策ですが、30歳までに全員2ヵ月以上の海外経験を積ませることです。対象は新入社員から中堅社員全員で、1~5年目までの階層別研修において、2ヵ月の海外派遣研修を実施します。やはり海外を理解するには実体験が不可欠です。

実例を紹介しましょう。ある大手化学メーカーでは2週間、新人70名をチーム分けしてインドと中国に派遣しました。新興国を中心に海外売上比率を40%から60%に引き上げるという目標があり、そのための人材育成です。ワークショップでは現地の会社を訪問したり、現地の大学生とディベートしたりと、そこでしかできない学習が行われました。参加した社員からは「海外での勤務は自分を成長させる」「現地と自分の違いを受け入れ、理解することが大切と感じた」といった声が聞かれています。

リーダー育成の鍵は「理念・ビジョン」、「強みを生かすマネジメント」

ここからはグローバルリーダーの育成について考えてみましょう。リーダーに求められる役割とは何でしょうか。実は役割で3タイプに分かれます。一つ目は通常の業務を行うグローバルマネジャー、二つ目は変革をもたらすグローバル変革リーダー。三つ目はビジネスを創造するグローバルアントレプレナーです。需要は順に6~8割:1~2割:1~2割で、グローバルマネジャーがもっとも多くなります。

落合 文四郎氏/講演 photoではリーダー育成にはどんな施策が必要でしょうか。リーダーはグローバルな経験を通じて育成するのが原則ですが、実際はそうはいかないことが多い。そこで、組織のビジョンと個の強みを統合できるマネジャーとして、現場で育成していきます。具体的には国内外の全管理職を対象にした研修の際、「会社の理念・ビジョン」、「強みを生かすマネジメント」の研修を盛り込みます。その後、研修した内容を実践させ、モニタリングを行います。「強みを生かすマネジメント」では、自己理解・他者理解に始まり、強みを活かすマネジメント、コーチング、チーム作りを学びます。

次に、新興国の管理職育成体系について。現地法人と本社、どちらが主導権を取るべきだと思われますか。私たちは本社主導で構築すべきと考えます。理由はグローバルで管理職の基準が揃うこと、そしてそのことで人材登用の地ならしができること。また、新興国側の予算不足や人材不足も補うことができます。

そして、研修後には国内外の全管理職に以下の二つを実践させます。一つ目はVSG会議です。これは年1回、チーム全員で自チームのビジョン(V)、戦略(S)、ゴール(G)を話し合います。二つ目は強みを生かすコーチングです。四半期に1回、チーム全員と1対1で、個人ゴールと強みを活かした達成方法を考えていきます。

グローバル人材の育成は、その体系を構築してから10年スパンの取り組みになりますが、私たちはこれからも、グローバル人材の育成に尽力したいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

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