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特別講演[2-B]

新入社員をやる気にさせるコミュニケーション・組織づくり
~上司・先輩に恵まれることこそ、最高の職場~

山内 純子氏
ANAラーニング株式会社 取締役会長
山内 純子氏(やまうち じゅんこ)
プロフィール:1991年に客室乗務員初の管理職発令を受け、フライトの傍ら客室乗務員マネジメントに従事、2004年には執行役員客室本部長に就任。その後、取締役執行役員客室本部長、(株)ANA総合研究所取締役副社長を経て、2010年ANAラーニング(株)取締役会長就任と要職を担い続けている。

目指すものを明確に伝え、個人の目標を設定して評価

山内 純子氏 photo新入社員の定着率の悪さが社会問題となっている昨今、「いかに新入社員のやる気を高めるか」が重要な課題になっています。もちろん、採用活動でよい人材を採ることも大切ですが、どのような人を採用しても、その人を企業の財産=“人財”として活かすことができるかどうかは、全て“育成”にかかっているのです。

そこで本日は、ANAの客室乗務員の教育現場で培ったノウハウをベースに、新入社員のやる気を高め、人材が定着する組織を作る方法についてお話ししたいと思います。

初めに、新入社員をやる気にさせる大きな軸として、“目標を明確にする”ことが挙げられます。ここで大切なのは、単に目標を明確にするだけでなく、それを“丁寧に教え続けること”、また、指導する側が“ブレないこと”、“あきらめないこと”です。というのも、こうした指導を根気強く続けると、今度は新入社員一人ひとりのなかで、おのずと目標範囲が広がり、成長していくことができるからです。

例えば、客室乗務員の場合、目指すべきことは、お客様に高品質のサービスを提供することです。これを教え続けることで、新入社員は自分が担当する仕事だけでなく、お客様目線に立ち、お互いが補い合って業務を進めていくことが重要だとわかってきます。すると今度は、“お客様目線に立ち、お互いが補い合って業務を進めていく”ためには、“周りの状況を察し”、“コミュニケーションをはかること”が必要だと気づきます。このように、一歩ずつステップを踏んで成長した人材は、結果として日々の業務のなかで、マネジメント力を身につけ、さらに羽ばたくことにつながっていくのです。だからこそ、人材育成の現場においては、目標を示し、教え続けることが重要だとご理解いただけるのではないでしょうか。

ただし、ここで重要なのは、目標管理制度を導入し、運用することです。というのも、社員のやる気を保つには、誰もが納得できる評価制度の存在が必要不可欠だからです。

さて、ここでもう一つ重要なのは、新入社員に対して目標を達成することこそが、“自己成長”につながることであり、それが“自己実現”であるということを伝えていくことです。これを具体的に理解させるためには、仕事とは、周りの人々と対話をし、信頼関係を築くことで、一人ではできなかったことをやり遂げることができるものであることを教えることです。それには、実体験を積ませることで、達成感・充実感を味わわせることが効果的でしょう。

上司は精神的な支えに徹し、社員一人ひとりがお互いを尊重できる風土を作る

山内 純子氏 photo “新入社員をやる気にさせる”もう一つの軸は、「“人”を支える組織風土」です。これを実現するためには、管理職や上司がサポート役に徹することが求められます。

具体的には、第一線で働く社員に対して管理職・上司が「ビジョンを示すこと」、そして「精神的な支えとなること」が挙げられます。特に「精神的支え」について言えば、管理職・上司は新入社員をすぐに叱るのではなく、まずは受け入れることが重要です。というのも、叱られると思いながら仕事をしていては、業務に対して一歩踏み込むことができず、その結果、感動につながる品質・サービス・パフォーマンスを生み出すことができないからです。だからこそ、管理職・上司は、新入社員をまずは慰労し、話を聞いてあげることが大切なのです。

ただこの際、管理職の立場にいる人間は、新入社員との関係性を改めて考えること、コミュニケーションを取ることにおいては、受け身ではなく、積極的であることが必要です。こうしたことを実行するためには様々な方法が考えられますが、私は「逆さまのピラミッドの組織図」と「対話型の座席レイアウト」を提唱しています。

まず、「逆さまのピラミッド」の組織図ですが、これは第一線で頑張っている社員たちを逆三角の上辺に配置した組織図です。ピラミッドを逆さまにした理由は、第一線で働く社員に組織のサポート体制を見える形で示すことによって、社員が安心して、自信を持って働くことにつながるからです。

山内 純子氏/講演 photo次に「対話型の座席レイアウト」ですが、これは部屋に入ってすぐの位置に、管理職の席を配置することを意味しています。管理職と社員とのコミュニケーションといえば、何も指示を出したり、クレーム相談をしたりといったものだけではありません。「今日の業務はどうだった?」――そんな日常的な会話を繰り返すことで、コミュニケーションが深まり、新入社員のやる気を出させることができます。またこの時、誉めるべき点があれば、必ず“想いを形にして”誉めてあげることも忘れてはいけないポイントです。ANAを例に挙げれば、“GOOD JOB CARD”というものを使い、上司から部下だけでなく、社員同士がお互いを誉め合う際に、このカードを渡し合うようにしています。

上司や先輩が新入社員の心に寄り添い、丁寧に指導し、働きやすい職場環境を作っていくことで、結果として社員がお互いに尊重し合う風土が醸成され、それが社員のやる気へとつながるのです。

人をどう育てるか、これは永遠の課題です。しかし、どんな時代でも変わらないのは“人の心”。今、私たちを取り巻く環境は非常に厳しいものですが、こういう時代だからこそ、より一層、人の内面を大切にし、お互いに尊重し合うこと、そして焦らずに社員を育てていくことが求められていると言えるでしょう。

最後に、私が大切にしてきた言葉を二つご紹介します。

小さいことほど丁寧に
当たり前のことほど真剣に

職場風土が良くなければ、良い仕事はできない。
職場に笑顔がなければ、機内に笑顔は生まれない。

これらは、どの業界・どの企業でも共通していえることです。ご紹介したことによって、企業人事担当の皆様方に今一度、人材育成について考える機会をご提供できれば幸いです。

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