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特別講演[1-A]

『採用と育成スキームの科学:13のポイント』
厳選採用に必須、主観採用からの脱出と人材育成への接続

小宮 健実氏
株式会社採用と育成研究社 代表
小宮 健実氏(こみや たけみ)
プロフィール:人材の採用と育成を支援する、採用と育成研究社代表。1993年日本IBMに入社し採用チームリーダーを務める。その後首都大学東京チーフ学修カウンセラー職を経て、2008年採用と育成研究社を設立。新卒採用、内定者フォロー、若手人材育成などに関する施策や、大学向けキャリア形成支援プログラムを多数手がけている。

『採用活動は育成活動そのもの』。
だからこそ、採用と育成をシームレスに考える。

小宮 健実氏 photoこれまでの採用市場を振り返ってみますと、多くの企業が“明確な基準”ではなく、“主観”による選考を行ってきました。そのため毎回、結果が異なったり、採用方針が変わったりということが起きてしまいます。また、採用と結果の因果関係を検証できないため、次年度への課題が見つからず、改善ができない。その結果、いつまでたっても採用に問題を抱えたまま、抜け出せないことになってしまうのです。

では、“主観的でない”採用を行うにはどうしたらいいのでしょうか。選考スキームが正しく構築されているかを確認するためには、Observable:観察対象が事実に基づいているか、Reliable:評価方法が信頼できるか、Specific:選考内容が明確化されているか、Measured:測定(数値化)できる形か――の4つの視点を持つことが大切です。

当社が提唱している採用選考構築スキームは、“科学的”な側面から『採用活動と育成活動のシームレスな連携』を具現化したもので、13の重要なポイントがあります。

まず「(1)求める人材像の作成」は、管理職・ハイパフォーマーへの調査分析形式やワークショップ形式などいくつかの作成手法がありますが、すべての選考活動、育成活動のゴールであり、重要なことは言うまでもありません。

小宮 健実氏/講演 photo次は“何を評価するのか”という「(2)評価要素の抽出」のステップですが、人材採用の最大の目的は、「成果を創出できる人材」を採用することであり、それには、応募者のどの要素に着目するのかが重要になってきます。それについて「成果創出モデル」で一般的に使われる要素を用いて説明します。

例えば、性格や価値観、適性などは後で変えづらいものですから、これらを評価する場合は採用時に確認しておくことが必要です。翻って、動機・意欲、興味などは、採用活動時にいかに高くても、採用後も高いまま維持されるかどうかはわかりません。そのため、選考時点においては、このような上がり下がりする要素=“平衡的要素”を重視し過ぎるのは得策ではない側面があります。

一方、知識、スキル、行動特性は、意識すれば比較的容易に変えられる後天的要素であり、時間とともに蓄積されていく拡張的要素です。それゆえ、人事が積極的に関与する価値があります。育成することで「求める人材像」へと変容していく人材を見極めるために、着目すべき要素なのです。

こう考えてみると、“採用”と“育成”が切っても切り離せないものであることもご理解いただけるでしょう。

採用成功のために、各選考プロセスの目的と意味を確認

RDI採用選考構築スキーム次は、評価要素抽出後の各ステップで注意すべき点についてお話しいたします。

評価要素抽出後は、要素の基準を決めること=「(3)各評価要素の基準化」が必要です。実は、このステップが多くの企業で最も脆弱になっています。このステップの最大ポイントは評価要素ごとに“基準を明確化”することです。

例えば「意欲」であれば、「意欲は高く感じるが、理由が抽象的なので、本人の言葉かどうか判断が難しい」「意欲が高く感じられ、理由も本人の具体的な生活状況から明快に説明されている」というように、きちんと文章で表現し、違いを明確にすることが大切です。

また、評価する際には、各要素に適した手法を使うこと=(4)評価手法の決定」が重要です。例えば「行動特性」であれば、構造化面接やアプリケーション評価、行動観察などの手法を使うことができます。

次の「(6)選考プロセス(フロー)の設計」では、選考フローと評価要素を関連付けた表を作成します。こうすることで各フローの意味が明確化します。無駄のない選考プロセスを踏めるだけでなく、正しい「(7)評価表の設計」にもつながっていきます。

具体的に選考が進んでいくと、“他社ではなく、自社に「決めさせる」動機づけ施策”が必要になります。動機づけには「自社を受けさせる」「自社に決めさせる」「自社に定着させる」の3種類がありますが、一般的に、現在行われている各種採用広報施策が効果を発揮しているのは「受けさせる」動機づけに対してです。選考プロセス開始後は、「決めさせる」動機づけに効力のある施策を考えいくこと=「(8)決めさせる動機づけ施策の設計」が求められます。

「(10)選考実施ガイドラインの構築」も重要です。“選考実施ガイドライン”とは、その年に行う選考活動についてまとめられた冊子のこと。これにより“全採用活動が明確化”されるだけでなく、“翌年の選考活動設計の際の検討資料”にすることができます。また、このガイドラインがあることで、しっかりとした「(12)調査分析」に繋げることができます。ただし、分析の際には、採用活動施策と採用結果の因果関係を把握するために、「単純集計」ではなく、「回帰分析」をすることが必要です。

「(11)評価者教育」も誤解の多いステップです。面接官に求められる立ち居振る舞いや、してはいけない質問などの内容のみになりがちですが、本来、面接官に“求める人材像”や、“自社ならではの評価項目、基準”に対する理解を深めてもらう場であることを理解しておく必要があります。

最後に「(13)内定者フォローの施策設計」についても触れておきますが、内定者フォローの目的は、採用した学生を「定着させること」と「育成すること」だと考えています。選考時に評価した行動特性に基づき、入社までに適切に育成することは、実はもっとも内定者を定着させることに効果的です。それはまた、内定者の社会人としてのキャリア形成の第一歩を支援することにつながっているのです。

以上が、選考活動における各プロセスの重要な視点ですが、ここで改めて、選考時に作成した“評価要素”と“評価基準”は、自社で活躍するための人材像につながっていることを確認しておきたいと思います。

「選考」とはすなわち、自社の育成ラインに乗せるために、最適な人材を選ぶ作業のこと。だからこそ、選考活動においては、“採用”と“育成”をシームレスに設計しなければならないのです。

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